「BASE」のサービスが7周年を迎えたことを記念し、2019年12月5日(木)にBASE株式会社が主催するショップオーナー様向けのカンファレンス「BASE OWNERS DAY 2019」を開催しました。
セッション会場で行われたオープニングセッションでは、BASE株式会社代表・鶴岡とBASEオフィシャルメッセンジャー&オーナーである小嶋陽菜さんによるスペシャルトークが繰り広げられました。今回は特別に、スペシャルトークの一部をご紹介します。
「小嶋陽菜の頭の中」
まずはじめに「小嶋陽菜の頭の中」と題し、<Her lip to>立ち上げまでの経緯やブランドコンセプト、ブランドに対する想い、実際の運営についてお話しいただきました。
鶴岡(以下、鶴) <Her lip to>はどういうブランドですか?
小嶋(以下、小) <Her lip to>は、わたしが「いまほしい服」をそのまま形にしているブランド。
クローゼットを開けたときに少しでも気分が高揚するような服が作れたら素敵だなと思い、自分が心を動かされた風景や音楽、映像などから着想を得て、トレンド感を押し出すのではなく、その時々の自分の気持ちに沿うような服を作ってます。
鶴 長い間アイドルとして活躍されていた小嶋さんが、ブランドをはじめようと思ったきっかけは何だったんですか?
小 AKB48を卒業した後、その経験を活かし、今度は私自身がメディアとなり発信する側になりたいと思っていました。当初はアパレルブランドを作るつもりではなく、ファンの方に向けてライフスタイルや好きなものを発信するキュレーションサイトのようなものを立ち上げるイメージでした。そのなかで自分で作った服を数点販売できたらと思って製作をはじめたことがきっかけで、ブランドをスタートすることになりました。
鶴 <Her lip to>のブランドコンセプトや商品製作をする上で、インスピレーションを受けているものはありますか?
小 立ち上げ当初から「いま自分がほしい服」というコンセプトはありましたが、細かいテーマは決めておらず、自分が感動した情景や、旅先で抱いた開放的な気持ち、私が思う女性らしさなどをどうすれば服に落とし込むことができるかを試行錯誤していました。ふだんの生活で見るものや感じることすべてが商品を製作するうえでのインスピレーションの元になっているので、生活や環境に慣れて飽きないように適度に新しいことにチャレンジするようにしています。
鶴 商品をつくるさいには、お客様の声も参考にしていますか?
小 お客様の声にも耳を傾け、どんなものがほしいと思われているかということは考えます。でも、それ以上に「自分がほんとうに着たいものを作る」というポリシーを大切にしています。私は何でもリサーチすることが好きなので、調べれば何がトレンドなのか、何がSNS受けするのかはある程度はわかってしまいます。それだけに、それに影響されそうにもなりますが、せっかく私がやるからには「トレンドよりも好きなもの」を作った方がよいかなと。ファンの方もそこに共感してくれているのかな、と思います。
鶴 コンセプトが絶対にブレないのが、小嶋さんの強みですよね! 今後もっと大きいブランドにしていきたいという思いはありますか?
小 もともとアパレルブランドをやりたかったのではなく、自分の好きなものを共有できるコミュニティがほしかったので、つねにファンの方と近い距離感でありたいな、と思っています。自分の声が届かなくなってしまう規模感になってしまうと意味がないので、サイズよりは「コミュニティ」を大切にしたいですね。
鶴 現在、実店舗を持たずにネットでのみ販売していますが、ネットで販売する上で気をつけていることはありますか?
小 自分が着たいと思えるような、こだわった商品作りをするために、できるだけ資金を商品作りに当てたいと思っています。そのため、リアル店舗ではなくウェブ販売のみを行い、その分のコストで商品の品質を上げています。
そしてネットショッピングは、届くまでがピーク。期待して待っていても、実際に届いてみたら「こんなの頼んだっけ?」という気持ちになった経験が私にもあるので、手元に届いた瞬間もわくわくできて、幸せな気持ちになれるようなものを作っていきたいと思っています。
鶴 小嶋さんのお話を聞いていると、商品やブランドの世界観への強いこだわりを感じますが、そのこだわりをどうやってお客様に伝えていますか?
小 とくに、商品名やカラー名にこだわっています。立ち上げ当初は、「ピンク」「ブラック」といったふつうのカラー名でしたが、たとえば「ホワイト」は「フローラルホワイト」にするなど、カラー名からでも世界観を感じることができるようにしました。あとは、写真や動画でその服の持つ世界観を表現するようにしています。
鶴 「BASE」でネット販売を行いながら、不定期でポップアップも開催されていますが、実店舗に出してみよう、と思ったきっかけは何ですか?
小 以前、新宿の伊勢丹でポップアップストアを出店させていただく機会がありました。そのときに、「実際に触ってみて買うことを決めた」「自分の体に合わないかもしれないという不安が解消された」といったお客様の声を直接いただき、アパレルブランドにおけるリアル店舗の重要性を実感しました。オンラインが中心だからこそ、リアル店舗が重要な橋渡し役になってくれる。 手にとってブランドの世界観を感じていただき、私たちもお客様の反応を直接見ることができるので、今後も定期的に開催していきたいな、と思っています。
「ブランドとSNSの関係」
次に「ブランドとSNSの関係」と題し、ふだんどのようにSNS運用を行なっているのか、どのように各SNSを使い分けているのかなど、ネットショップを運営するオーナーズが参考にできるようなノウハウについてお訊きしました。
鶴 ブランドでは、どんなSNSを利用していますか?
小 Instagramのみです。もともと私個人のアカウントのフォロワーが多かったので、TwitterなどほかのSNSアカウントは作りませんでした。
鶴 やっぱりインスタなんですね! インスタを運用する上で気をつけていることはありますか?
小 ブランドアカウントは個人アカウントよりもフォローしてもらうハードルが高いので、フォローしたいと思ってもらえるようにトップページにこだわっています。
鶴 そういったSNS運用のスキルは、どうやって身につけたんですか?
小 SNSを使っているうちに、自然に身につきました。Twitterでいろいろ検索してみたり、海外のアカウントを見たりもします。このアカウント素敵だな、これ日本で流行りそうだな、と情報を収集してつねにいろんな方向にアンテナを張るようにしています。
今後の展開について
鶴 ブランドが大きくなってくるにつれて変化することもあると思いますが、小嶋さんの今後に対する考えを聞かせてください!
小 ブランドがスタートしたころと今を比べて、ブランドの規模は変わりましたが、それによって作りたいものが変わることはないですね。「コミュニティを作りたい」「自分がほしいものを作りたい」という根本の思いは、ずっと変わらないと思います。今後どんな形でこのブランドがコミュニティとして変化していくのか、自分でも楽しみです。
鶴 小嶋さんのすごいところは、<Her lip to>を作った当時と情熱が変わっていないところ。時間が経ってもブランドの規模が大きくなっても、この情熱を維持できている。誰にさせられているわけでなく、自分がやりたくてやっているということの現れであるように見えました。
小 自分が楽しみながらやることが、何よりも大切で。かんたんにショップを運営できる時代だからこそ、どうにかなるという気持ちで気楽に楽しめたらいいな、と思っています。自分が好きじゃないと突き詰められないと思うし、嫌いなことを努力するのって大変だと思うんです。一方でずっと好きでいられるように、たまには嫌だなと思うこともやってみることで、今の環境にあらためて感謝できたり、好きなことをより好きになれたり。「当たり前」にならないように気をつけています。
ーー約1時間行われたオープニングセッションでは、終始小嶋さんのブランドへの熱い想いやこだわりが感じることができました。小嶋さん曰く、オーナー自身が「楽しむ」ことこそ、ブランド運営をおこなう上で何よりも大切なこと。軸となるブランドコンセプトや世界観を大切にしながら、自分らしく楽しくショップ運営を行なっていくことが、長く愛されるブランド作りに繋がるのかもしれません。