知識も経験もないところからECで自分のお店を立ち上げるとき、「失敗しないかな?」と考えて尻込みしてしまう人はすくなくないでしょう。
しかし、はじめてのことは、誰だって不安なもの。
自分にできる方法を見つける努力を続けることが、ECの成功につながります。
それを体現したのが、水着やルームウェアを中心としたECアパレルブランド<andante>の代表を務める吉澤有紀さん。
吉澤さんは、OLをしながら未経験のECアパレルに参入し、オリジナルブランドを立ち上げ、現在では多くの従業員を抱えるまでにブランドを成長させてきました。
業界未経験からでもECアパレルを成功させるために、実際にご自身が経験されたこと、そこで見つけたことを、吉澤さんにお訊きしました。
<andante>
水着やルームウェア、アクセサリーなどを取り扱う通販アパレルショップ。トレンドに合わせたかわいい商品をプチプライスでラインナップ。「歩行の速さで」を意味するブランド名<andante(アンダンテ)>には、「お客様が自分らしく、ハッピー(心地よく)になれる洋服を作りたい」という気持ちが込められている。
ショップ名:<andante>(https://andanteshop.thebase.in/)
運営会社 :<株式会社クラージュアイ>
創業 :2016年
従業員数 :7〜14人(季節によって変動)
目次
友人の成功に感化され、働きながら「自分にもできること」を探す
–<andante>をはじめたきっかけを教えてください。
もともと新卒でメンズスーツの販売員を経験したあと、教育関係の会社で一般職として働いていました。
そのころ、同じように別の会社で一般職として働いていた友人が突然起業したんです。
業績をどんどん伸ばしながら事業を成長させ、なおかつ、まわりに感謝されている友人の姿を見ていたら「なにもない自分」がちっぽけに思えてきて……。
「私にもなにかできることはないのかな?」と思うようになり、自分にできることを模索しているなかで、趣味ではじめたフリマアプリでの販売が<andante>につながっていったんです。
–今でこそ多くの人が使っているフリマアプリが、大きなきっかけだったんですね。
OLをしながら2014年の春ごろから、使わなくなった私物をフリマサイトで売っていました。
その後、商品を仕入れて販売をするようになり2016年にBASEへ移行。その後、OLとの両立も難しくなったため独立し、2017年には事業拡大にともない法人化しました。
2万円分の仕入れ販売がはじめの一歩
—未経験からECをはじめる場合、どうやって商品を用意したらいいのかわからない人は多そうです。吉澤さんはどうされましたか?
はじめは使わなくなった私物を販売していましたが、売るものがなくなった2014年6月からは、仕入れ販売をはじめました。
これから夏が来る時期だったので、時期的に売れそうな「水着」を仕入れたんです。
とくにリサーチはせず、仕入れサイトで「かわいいな」と思った水着を2万円分仕入れたら、それがちょうど流行りのデザインだったらしく、一瞬で完売して。
完売するたびに5万、10万……と仕入額を増やしていったら、翌月には1回に20万円分を仕入れるまでになりました。
–はじめてだと、仕入れ先を見つけるのも苦労しそうですが、どうやって見つけましたか?
ネット検索です。ただ、いい仕入先は見極めが必要なので、口コミを確認したりすることで慎重に選んだほうがいいと思います。
私は、仕入れサイトを通じて中国製の商品を仕入れることからスタートしましたが、最初は品質がバラバラで……。
複数の取引先とやりとりをするなかで、不良品のクレームを出すこともありました。今は、それでもついてきてくれる工場にお任せしています。
お客様のニーズに応える、オリジナル商品へのチャレンジ
—仕入れ商品のほかにも、「オリジナル商品」も販売されていますよね。どういった経緯があったのでしょうか?
そうですね、仕入れ商品を販売していたとき、お客様とのコメントのやりとりや人気商品の動向を通じて、いろいろなニーズを感じていたんです。
それに応えるために、いちばん売れた水着の仕様を参考にしながら、貯金を使い果たす形で、オリジナルの水着を300ロット作りました。
そもそも、オリジナル商品は最低ロット数が決まっていて、売れなかったら在庫リスクになるので、売れる見込みのある商品だけを作る必要があるんです。
ただ、そのはじめて作ったオリジナル商品がすべて不良品で。中国で作ったので返品できなくて……。
–つまり300ロットの在庫を抱えてしまったんですね。。。そんな苦しい状況をどう打開されたんですか?
あきらめたらゴミになってしまうと思い、一つひとつ手直しすることで売り切りました。
その後も同じ工場と直接取引していますが「これを売ったらクレームになるから、改善してほしい」と何度も伝えることで、不良品が届くことはなくなりましたね。
また、当時は「とりあえずやっちゃおう!」とサンプルも作らずにやっていましたが、今は失敗しないように、かならずサンプルを作ってチェックするようにしています。
–大きな失敗を経て、今はどんな工場と取引されていますか?
大手がベトナムに移行しているうわさを聞いて、2017年には中国での生産のほかに、ベトナムでの生産もはじめました。
ベトナム人は縫製がていねいだし、納期を守ってくれるし、真面目で気遣いができるので、取引しやすくて。
当時はなにもあてがないまま、スーツケース片手にベトナムへ向かいましたが、友人のツテで通訳してくれる人を見つけたり、自社工場を持つ水着屋3社と交渉したりすることで、信頼できる取引先を見つけられました。
–すごい行動力ですね! これまでさまざまな商品を仕入れたり、オリジナル商品を作って販売されていると思いますが、販売商品はどんなところをポイントに決めていますか?
フリマサイトで販売しているときに養った、「売れる商品の感覚」を頼りにしていますね。
みんなが気になるポイントは同じで、たとえばコメントで「水着にはワイヤーが入っていますか?」と何度も質問されると、それがお客様のニーズだとわかるんですよ。
また<andante>のお客様が好きそうな商品を選ぶようにしています。
そのために、<Instagram>のアンケート機能で「どっちの色が好きですか?」と質問したりして、お客様のニーズを確認することもあります。
「自分のブランド」に成長させるため、フリマサイトから「BASE」へ
—フリマからはじめて、2016年に「BASE」で販売をはじめたそうですが、なぜ移行したのですか?
自分のサイトを持つことで、まわりに「通販サイトを運営している」と自信を持って言えるようになるためです。
フリマサイトを中心に販売していたとき、月の売上が350万円になったこともあり、仕事としても成り立っていました。
ただ、自分のサイトがないので、あくまでも趣味の範囲で売っている感覚が強く、「仕事として成り立っている」とは思えなくて。
だから、自分のショップを作りたかったんですよね。そのときに「BASE」の存在を知り、2016年3月から使いはじめました。
–「BASE」で自分のお店を持つようになって、大変ではなかったですか?
いえ、基本の流れは一緒だったので、戸惑うことはなく、むしろお客様とのやりとりがとてもラクになりました。
特に「BASE」だと、購入された後は発送通知などのメールが自動化されているので、それまでと比べてやりとりの時間を減らすことができました。
ECサイトの専門知識がない私でも、かんたんにはじめることができましたね。
–フリマサイトでの経験があったからこそ、スムーズに移行できたとも言えそうですね。
はい、その経験は非常にプラスになりました。ただ、ビジネスとして成長させていくには、「BASE」で自分のお店を持つことは必要不可欠だと思います。
フリマサイトは、基本的に「売れたら終わり」なので、リピーターがほとんどつきませんが、「BASE」で自分のお店を持てば、継続的にお客様を育てていけるからです。
たとえるなら、「BASE」は「自分の庭をつくって、整え、成長させていく場所」なんです。
お客様に響くイメージをつくり、人とのつながりで拡散していく
–サイトには、モデルを起用した商品写真が並んでいますよね。どんなところにこだわって写真を撮影していますか?
買う側としてもウキウキするような、かわいい写真を意識しています。
はじめは、モデルやカメラマン、スタジオなどがセットになった格安の撮影パックを利用していましたが、今は私のイメージする世界観を表現できる方にお願いしています。
また、「このモデルさんがいい」というお客様からの反応やニーズに合わせて、起用するモデルさんの登場回数を調整することもありますね。
–自分の世界観に、お客様の反応も参考にしながらイメージをつくり上げていくんですね。
あと、色や質感も重要です。どんなにいい商品でも、写真と色味や質感が違えば、お客様の満足度が低くなる。
そのことはフリマサイトで販売していたとき、お客様から「写真と商品が違う」と言われたことで実感したのです。
だから、「実際の商品とのイメージが変わらない写真」を掲載するように心がけていますね。
–PRはどのようにしておこなってきたのでしょうか?
「BASE」をはじめたばかりの2016年ごろ、モデルさんの紹介で、ある美容院に行ったんです。
そこのオーナーさんの紹介で知り合ったブロガーさんにお願いしていました。
すると、そのブロガーさんが友達のブロガーさんを紹介してくれて、つながりがどんどん増えていき売上にもつながりました。
じつは、最初の3ヶ月間はまったく売れていなかったのですが、彼女たちがブログで<andante>の商品を紹介してくれたおかげで、売上が一気に数百倍になりました。
–数百倍ってすごいですね! 今はどうしていますか?
その人たちが今はインスタグラマーやYouTuberになったこともあり、最近は<Instagram>と<YouTube>でのPRやコラボがメインです。
その他にもPRをお願いするモデルさんは、自分で探して見つけることもあります。
例えば雑誌に商品提供したとき、撮影現場に撮影に同行させてもらい、そこで知り合いになることもあります。
ただ、<Instagram>のPRも、昔は誰もやっていなかったけれど、最近はいろんな会社さんが活用しているため、効果が低下してきたように感じています。
そのため、PRを依頼する人が「誰にどんな影響を与える人か」を見極めることも大切だと思います。
スタッフの得意分野を見極めて任せることで、ブランドの成長に集中する
—お店が成長し売上が拡大してくると、1人で回すことも難しくなってきますが、円滑な運営のためにどんな工夫をしていますか?
スタッフを雇うことで、私は「次の事業に充てる資金」を生み出すことに注力しています。
常勤のスタッフは必要最低限の5~7人で運営し、それぞれの得意分野を見極めて、在庫管理やリサーチなどを任せていますね。
一方、私はYouTuberさんとのブランドづくりを進めるなどの「お金が生まれる部分」を考えています。そうやってスタッフや関係者の仕事をつくることで、会社の大きな動きをコントロールしていくんです。
–なるほど。繁忙期の夏のあいだは、スタッフさんも忙しくなりそうですね。
常勤スタッフだけでは手が回らないので、短期スタッフを雇っているんですよ。
夏が終わったあとの秋冬の閑散期は売上が落ち着くので、そのあいだは常勤スタッフに出勤日数を調整してもらっています。
ただ、年間を通してフルで働きたいスタッフが辞めてしまえば、繁忙期の夏に仕切れるスタッフがいなくなる。
そうならないように、最近ではルームウェアなどの商品を増やすことで、季節ごとに変動があった売上を安定させて、スタッフの安定した雇用につなげています。
成功の秘訣は、お客様が示してくれた道筋に寄り添うこと
—OLからECサイトをはじめて、成功したコツは何だと思いますか?
「やってみたい!」と思い浮かんだら、すぐ行動に移したことだと思います。そういう性格だったからこそ、どんどん前に進むことができました。
それに、多少のリスクがあっても、利点のほうが大きいと思ったら、自信を持って行動するタイプなんです。
たとえ失敗しても、それが「こうすると失敗するんだ」と今後の糧になって、成功できそうな別の方法を探そうと思えます。
–すぐに行動することがポイントなんですね。これからECサイトをはじめる人に、アドバイスをお願いします。
一度うまくいかないことがあってもすぐにあきらめずに、「改善するためにはどうしたらいいんだろう?」と考えて、毎日すこしずつでもいいから前に進もうとする気持ちが大事です。
そうすれば、成功する道筋がかならず見えてきます。
また、「売れる」という感覚だけで商品を仕入れて売るのではなく、「自分の興味が持てる商品」を楽しんで販売する気持ちも大切だと思いますよ。
–その2つの気持ちがないと続けられませんよね。今後はどのような展開を考えていますか?
水着とルームウェア、アクセサリーのブランドを分けて、それぞれを成長させていきたいです。
そうすれば、お客様が「どんな商品を扱うブランドなのか」がわかりやすくなったりして、ブランドが成長しやすくなると思うので。
<andante>では、お客様の声を反映した商品をラインナップしています。
お客様が「こういう商品がほしい」と道筋を示してくださり、それに寄り添うことでブランドを成長させることができました。
だから、これからも「お客様と同じ目線でいること」を意識していきたいと思っています。
あとがき
吉澤さんのご経験から、ECアパレル参入の1つの成功モデルを見ることができました。
多少のリスクはあっても、まずは行動。絶えず改善を繰り返し、お客様の満足を第一に考えていく。そして「オリジナルブランドをつくり、拡大させていく場」として、「BASE」を活用する。
吉澤さんが示してくださった成功への秘訣をたずさえて、ぜひ「BASE」でECアパレルにチャレンジしてみてください。