大阪の歴史を、もっと身近に、より深く。<大阪歴史博物館>ミュージアムショップ

博物館や美術館、画廊を鑑賞、観覧したあとに思わず寄りたくなる、ミュージアムショップやグッズショップ。
じつは、現地だけではなく、ネットショップでも購入することができるんです。

BASE Uでは、「ネットショップで触れる 文化の秋」と題して、BASEでネットショップを運営いただいている博物館や美術館、画廊にインタビューをおこないました。

今回、インタビューしたのは、<大阪歴史博物館>の 企画広報課・船越 幹央さん、俵 和馬さん、安岡 早穂さん。


<大阪歴史博物館>館内でのお三方

インタビューに応じてくださった船越さん、俵さん、安岡さんは、<大阪歴史博物館>で学芸員をされています。
学芸員のお仕事といえば、資料の収集や研究のほか、展示の企画ですが、じつはそれだけではないんです。

学芸員と<大阪歴史博物館>ミュージアムグッズのユニークな関わりについて、お話をうかがいました。

【プロフィール】

船越 幹央さん(写真向かって左)
1964年、京都市生まれ。
大学院で日本文化史を学んだのち、1993年、大阪市立博物館(大阪歴史博物館の前身)の学芸員となる。2001年、大阪歴史博物館の開館にともない、同館学芸員に。
現在、企画広報課長。
専門は、日本近代史・文化史で、都市における市民の生活・文化などを研究している。

俵 和馬さん(写真向かって右)
1991年、兵庫県生まれ。
大学・大学院で民俗学を専攻。2016年より生駒ふるさとミュージアム学芸員、2019年から大阪歴史博物館学芸員に。
専門は民俗学、とくに環境民俗学。生業、動物民俗、民間信仰などから人と自然の関係性について研究している。

安岡 早穂さん(写真中央)
1993年、高知県生まれ。
京都の大学・大学院にて文化史・考古学を勉強。2017年より大阪歴史博物館学芸員に。
研究の専門は考古学、前近代の漁撈具(ぎょろうぐ)。食文化にも興味がある。ミュージアム、アーティストなどのグッズ好き。

展示・SNSで、歴史に親しんでもらえるコンテンツを

ーーまず、日ごろの業務について教えてください。

船越さん:わたしたちが所属している企画広報課では、学芸員の仕事である、展示
や研究、資料収集・保管、教育普及などと並行して、広報活動をおこなっています。
そのほかでは、おもにSNSやYoutube、またミュージアムグッズを通した情報発信を担当しています。

ーー学芸員の方が広報もされているとは、意外でした。

船越さん:小さな博物館などでは、学芸員の方が兼任されていることが多いんですが、わりとめずらしいケースだと思います。

とはいいつつ、まだまだ試行錯誤しているところです。
とくにYouTubeは、力を入れていきたいんですが、なかなか両立はむずかしいですね。

動画の企画・編集も学芸員でおこなっているため、展示にあわせて事前に紹介動画などを公開できればいいんですが、どうしても展示準備に追われて、時間の足りない部分があります。

わたしも実際に担当したことがあるんですが、動画の公開が展示が終了する3日前にしか公開できなかったことがありました(笑)。
視聴いただいた方からは、「まだ3日もあるじゃないか」と、あたたかいコメントもいただきながら、なんとかやっていますね。

 

 


常設展では、古代~近代にいたるまでの大阪の歴史・文化を知ることができる

親しみやすい、身近なものを入口に、大阪の歴史を知る

ーー拝見した動画では、資料の説明を聞きながら、展示を見ることができます。
よりくわしく、歴史について知ることができて、とてもおもしろかったです。 歴史にあまり興味がない方・くわしくない方でも、見ごたえがあるコンテンツだと思いました。

展示についても、聞かせてください。
過去の展示である、大阪にゆかりのある和菓子をテーマにした「和菓子、いとおかし ―大阪と菓子のこれまでと今―」など、親しみやすいテーマの展示が多いと感じました。

俵さん:和菓子の展示は、わたしが担当しました。
SNSやYouTubeを入口に、いわゆる「歴史ファン」でない方にも興味を持っていただけるようなテーマ選びは、つねにではないですが、織り交ぜるようにしています。

この企画で扱った「和菓子」の成り立ちには、地域や歴史と密接な関わりがあります。
今回は、江戸時代からの伝統を受け継ぐ、大阪の和菓子店・鶴屋八幡さんに特別にご協力いただき、和菓子に関する資料を展示しました。

和菓子の魅力はもちろんのこと、そこから地元である大阪の和菓子文化や、茶の湯についても学んでいただける展示を意識しましたね。

コロナ禍をきっかけに、ミュージアムグッズ製作に挑戦

ーー身近なテーマから、大阪や歴史の興味や知識へと広がっていく楽しみは、多角的な資料を展示できる博物館ならではですね。

和菓子の展示に関してつくられたミュージアムグッズも、好評だったとのことですが、どのように製作されたのですか?

俵さん:ミュージアムショップで取り扱っている、オリジナルグッズの企画・デザインは、わたしたち3名が中心になっておこないました

企画段階で、どの資料を使うか、どんな形でグッズにするか、を展示担当なども交えて、話し合って決めています。
実際のデザインに落とし込む部分は、おもに安岡がおこなっています。

ーーてっきりデザイン会社やデザイナーに依頼されていると思っていました……!
安岡さんは、もともとデザインの仕事をされていたんですか?

安岡さん:いえ、まったくです(笑)。たまたまパソコンやイラストレーターなどのツールが使えたので、現在まで担当しています。


中国、朝鮮、そして日本で作られた古鏡や、「アニメ―ション」の源流ともいえる江戸時代の錦影絵をモチーフにした、マスキングテープ

船越さん:わたしたちがミュージアムグッズの製作に携わりはじめたのは、じつはコロナ禍で、博物館が休館になったタイミングからなんです。

当時、展示の準備やお客様を迎えることができない状態でした。

そこで、空いてしまった時間を使って「なにかできることはないか」と有志が集まって、いくつかプロジェクトを立ち上げました。
先ほど申し上げたYouTubeなどの動画の整備や、謎解きゲームなどのイベント企画など、休館中の情報発信や開館の準備を進めていました。

そのなかのプロジェクトから立ち上がったのが、<大阪歴史博物館>のオリジナルグッズ製作を進める、わたしたちのチームです。
このチームで、現在に至るまで、グッズ製作に携わっています。


<大阪歴史博物館>館内のミュージアムショップ

ーー休館は痛手ですが、だからこそはじめられたグッズ製作だったんですね。はじめてみていかがだったでしょうか?

安岡さん:学芸員の立場から、資料やモチーフの意見を出すことは過去にもありましたが、ここまでグッズ製作に関わったことはなかったので、新鮮な経験ですね。

和菓子のグッズでは、鶴屋八幡さんからお借りした資料から、図柄を抜き出してデザインしています。もともとの資料が持つ、かわいらしさを生かせるようにデザインしました。

グッズとして形になる過程も、そのグッズがお客様によろこんでいただけることも、展示の企画とはまた違ったやりがいがありますね

俵さん:ネットショップを通じて、博物館に来館されたことのない方や、若い方にもご購入いただいています。
ミュージアムグッズも、歴史に興味を持つ入口として、楽しんでいただけているようです。

グッズから、<大阪歴史博物館>の魅力を再発見

ーーグッズの企画や製作は、ふだんされている学芸員のお仕事とは違った目線で、資料に触れることになりますね。

俵さん:そうですね。
最近だと、開館20周年の記念グッズを作ったとき、新たな発見がありましたね。


オリジナルグッズのなかでも定番のポストカードとクリアファイル

20周年ということで、<大阪歴史博物館>をぎゅっと凝縮したようなラインナップにしたいと考えていたので、館蔵品をあらためて見返しました。
見返してみると、かなり古いものから近現代にいたるまで、多種多様なジャンルの資料があります。

たとえば、今回クリアファイルとしてグッズ化したマッチラベルは、昭和初期に広告としてマッチ箱に貼られていたラベルです。


レトロな雰囲気がかわいい、マッチラベルの並んだクリアファイル

これ単体での展示はむずかしいですが、クリアファイルであれば、並べて形にできる。

「ミュージアムグッズ」という視点によって、展示とは違った、資料の「見せ方」を発見することができました

ーー展示とは違った見せ方ができるミュージアムグッズによって、さらに深く資料や歴史を楽しめそうですね。
最後に、今後の予定を教えてください。

船越さん:現在製作しているのは、缶バッジです。
次回の企画展のテーマは、「お皿」です。
形状の似た缶バッジに、模様をプリントして、展示されているお皿の持つ雰囲気を、缶バッジとして楽しんでいただこうと考えています。

また、<大阪歴史博物館>がネットショップを利用する博物館として、1つの事例になればいいな、と思っています。

まだまだ、博物館の業界自体、ネットの活用が遅れており、ネットショップを導入されていない博物館が多いです。

ところが、わたしたちもやってみてわかったんですが、ネットショップの開設や運用は、手探りではあるものの、できています。
人手が足りず困っている小さな博物館なんかは、ぜひ使ってみてほしいですね。
そうした想いもあるので、これからもネットショップを活用できたら、と考えています。

インタビューを終えて

ミュージアムグッズを通じて、<大阪歴史博物館>の魅力を発信されている、船越さん、俵さん、安岡さん。

その背景には、コロナ禍での休館という逆境のなかでの「グッズ製作」という、大きな挑戦がありました。
ミュージアムグッズという視点によって、また違った魅力を持つ資料は、グッズとしてはもちろんのこと、展示にも還元されていくことでしょう。

ミュージアムグッズ・企画展とともに、これからの<大阪歴史博物館>が楽しみです。

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