ネットショップの運営はやること、考えることがたくさんありますよね。
商品を企画して、材料を仕入れて、制作して、掲載して、集客して、売れたら梱包して、発送してーーどれ一つとっても、悩みは尽きないと思います。「BASE」では、これらをサポートし、より注力すべきことに集中していただくために、拡張機能の開発に努めてきました。
この記事では、これらの悩みのなかでも多くのネットショップの課題となる「集客」について触れる前に、まずは「マーケティング」に関して説明します。
というのも、「集客」について考えると「どのように届けるか」という「how」の部分に終始しがちで、もっとも重要な「誰に」「何を」といった議論がおこなわれていないことが多いからです。
マーケティングを制する者が、集客を制します。この記事を通して、まずはマーケティングを理解していきましょう。
目次
マーケティングとは何か
マーケティングの定義は、時代の流れや人によっても異なるため、一言では説明しきれない面があります。そこで、まずはマーケティングの神様と呼ばれる、フィリップ・コトラー氏が説く、マーケティングの定義を紹介します。
「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること」
出典:『コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版』著者:フィリップ・コトラー ・翻訳:恩藏 直人<ピアソンエデュケーション>
つまり、ターゲットを絞り、そのターゲットが求める価値を作り、届けること。これがコトラー氏が考えるマーケティング、と言えます。
マーケティングの基本
マーケティングの定義がわかったところで、実際にマーケティング「ターゲットを絞り、そのターゲットが求める価値を作り、届けること」をおこなうさいには、以下の3つを考えることからスタートします。
1.誰に
2.何を
3.どのように届けるか
5W1H(when, where, who, what, why, how)で言うところの、who, what, howの部分ですね。
1.誰に(=セグメンテーションとターゲティング)
マーケティングをおこなうにあたって、誰に商品の魅力を伝えていくべきなのか、対象となる顧客を決めなければなりません。顧客は、それぞれに異なるニーズを持っており、対象と異なれば、商品の魅力を感じてもらえません。
顧客を絞り込み、顧客が求めているニーズを明確にすることで、やるべきことが明確になります。対象とする顧客を決めるためには、「セグメンテーション(顧客グループ分け)」と「ターゲティング(顧客グループ絞り込み)」をおこないます。
・セグメンテーション(顧客グループ分け)
セグメンテーションとは、市場(=顧客)を細分化することにより、市場の構造を把握することです。細分化するための評価軸には、年齢や性別、趣味趣向、過去の行動データなど、さまざまなものが考えられます。
細分化の仕方によって、その後のやるべきことが大きく変わってきますので、セグメンテーションは、マーケティングにおいてとても大切なプロセスです。
・ターゲティング(顧客グループ絞り込み)
市場(=顧客)を細分化することができたら、次に、細分化された市場のどこを対象(ターゲット)としていくのかを決める、「ターゲティング」をおこないます。ターゲティングは、
市場のニーズを、「自身の課題」として切実に感じられること
ショップの強みを生かせること
競合ショップと比べて、はっきりとした優位性を保てること
などを考慮することがポイントです。
例として、プレミアムアイスクリームブランド<ハーゲンダッツ>を挙げてみます。
<ハーゲンダッツ>の登場以前、日本のアイスクリーム市場は「子供」をメインターゲットにしていました。アイスクリームとは、子供がお小遣いで気軽に買えて、大衆受けする味という考え方が基本だったのです。
そこで、<ハーゲンダッツ>はセグメンテーションをおこない、高品質で高級なアイスクリームに適したターゲットを「大人」に定めて、他社との明確な差別化を図りました。
・セグメンテーション
子供以外に、年齢、性別、所得、家族構成などで消費者をセグメント。
・ターゲティング
複数のセグメントのうち、金銭的に余裕があって、高くても上質なものを食べて癒やされたい大人をターゲットに設定。
ぜひ、ご自身のショップに関しても「セグメンテーション」と「ターゲティング」をおこなってみましょう。
2.何を(=ベネフィットと差別化)
対象とする顧客が決まったら、顧客のニーズに対して何(どのような価値)を提供するのかを決めます。ここで着目するのは、「ベネフィット(顧客が得る利益)」と「差別化」です。
・ベネフィット(顧客が得る利益)
ベネフィットとは、商品が持つ「価値」です。
顧客に対して、ベネフィットをどのように訴求するかは、顧客のニーズと考え合わせて決めなければなりません。
・差別化
多くの場合、市場には競合ショップがいます。競合ショップと同じ価値を提供するなら、顧客は価格が安い方を選ぶでしょう。
したがって、価格競争にならないようにするためには、あなたのショップが提供する商品が競合ショップとどのように違うのかを、顧客に訴えなければなりません。
この「差別化」の要因として、価格ももちろんふくまれますが、そのほかに、機能やサービスを高める、顧客との接点を深めるなど、さまざまな観点が考えられます。
あなたのショップの強みを最大限に生かせるよう、差別化を進めるのがポイントです。
3.どのように届けるか(=4Pと4C)
顧客のニーズと提供する価値について絞り込めたら、実際にそれを顧客に対してどのように届けるかを考えなければなりません。その考え方の1つが、「4P」です。
4Pは、
・Product:商品・サービスなど
・Price:価格や価格体系
・Place:販路
・Promotion:広告などをふくめた販売方法
のことを指します。
そしてもう1つの考え方に、「4C」もあります。
4Cは、
・Customer Value:顧客価値
・Cost:コスト
・Convinience:利便性
・Communication:顧客とのコミュニケーション
を指します。
「4P」と「4C」、両者を比べてみると、似ているようでいて、異なる点が見えてきます。
それは
4P:売る側の視点(ショップ視点)
4C:買う側の視点(『4P』を顧客の視点からとらえ直したもの)
つまり、売る側と買う側では、重視しているポイントが違う、ということを認識する必要があります。
よって、「4P」と「4C」は、セットで意識することによって見えてくるものがある、という視点です。。
たとえば、顧客は缶コーヒーを買うとき、缶そのものがほしいわけではなく、コーヒーの味や自動販売機で買える手軽さにお金を払っています。顧客が、何に価値を見出し、お金を払うのかを分析する手法が「4P」「4C」というわけです。
「集客」は、マーケティングの一側面に過ぎない
今回は、マーケティングの基本、そして「4P」と「4C」という視点について紹介しましたが、マーケティングにおいて「集客」に当てはまるのは、売る側視点の「4P」ではPromotion、買う側視点の「4C」ではCommunication、とあくまでもそれぞれの側面の一つにしか過ぎないことがわかると思います。
マーケティングを理解すると、たとえばショップの売上が上がらない要因として集客数が足りないから、集客数を伸ばすためのプロモーションを考えよう、という短略的な思考にはなりません。
そもそも、顧客が商品に対して、どんなベネフィットを見出し、お金を払うのか、そのためのベネフィットや差別化要因を作り出せているのか、という視点で、考えることができるようになります。これを明確化したうえで、「集客」について考えることが、ショップ運営の第一歩となります。