さまざまなショップオーナーの魅力に迫る、インタビュー連載企画「Why 〇〇?」。
そのブランドが持つ唯一無二の世界観は、どのようにして生まれたのか?ーーそんな「Why」を、BASEのInstagramアカウント@baseecと連動しながら深堀りしていくシリーズ。
今回は、<青果ミコト屋>が2021年にオープンした横浜市青葉区の青果店「micotoya house」にて、店主の鈴木鉄平(すずきてっぺい)さんにお話を伺いました。
忙しく働いてお金を稼いだ会社員時代、海外でのバックパッカー生活を経て、「旅する八百屋」と
して全国の産地を巡りながら青果店<青果ミコト屋>を営む鈴木さん。
ひと目では青果店であるとわからないような、趣(おもむき)のあるれんが作りの建物に構える「micotoya house」。一歩扉をくぐれば、大地の豊かさが凝縮されたような、ほのかに甘く香ばしい香りに、うっすらと感じる安らぎ。
店頭に並ぶ野菜そのものや、野菜を届ける八百屋というライフワークに込めた、鈴木さんの志を紐解いていきます。
目次
不揃いだけど最高。野菜本来の魅力を食卓へ届ける「八百屋」へ
もともと僕は農家になりたくて、農薬はもちろん肥料すらも使わない、いわゆる自然栽培の農家さんで研修していました。
きっかけになったのは、つくった野菜を売りに行った先で、規格外や不揃いを理由に、自然栽培の野菜が買ってもらえなかったり安く買い叩かれたりしたこと。
肥料や農薬を使って、できるだけ均一に育てることはもちろん可能です。
僕が扱っていた野菜にはオーガニックで自然な姿だからこその個性がありました。
しかし、できるだけ効率よく売れるものを求める市場ではそういう野菜の価値が下がってしまうという、流通の課題を認識したんです。
そのときに思いました。自然に育てられた本当にいい野菜の素晴らしさを伝える役目、そういう八百屋が必要だと。
だから今、僕は八百屋なんです。
はじめはバンで全国を旅して野菜を売り歩く『旅する八百屋』というコンセプトでやっていました。
その後、地元に根を下ろしたいと考え、3年前に地元の横浜・青葉台で開店したのが「micotoya house」です。
胸を張ってセレクトする野菜の決め手は、農家さんの人柄
以前は、農薬も肥料も使わない、自然栽培によって成長した野菜にこだわってセレクトしていました。
それが現在は一転して、栽培方法にこだわりすぎることをやめました。農家の数だけ栽培方法があるということを知ったからです。
日本中を旅している間に、魅力的で信頼のおける農家さんにたくさん出会いました。
どの土地でも自然栽培でいい野菜が育つわけではありませんし、自然災害などの影響で、どうしても農薬や肥料に頼らないといけない場合があります。
自分の畑を知り尽くした農家さんが、日々工夫と知恵を凝らして野菜を育てているんですね。
それでも不作のときはあり、その度に危機に晒されているのは農家さん自身なんですよ。
今年は調子が悪くて自然栽培ができなかったという農家さんに、こちらが栽培方法を理由にNOを突きつけるって、すごくアンフェアな関係だなと。
僕らが毎日食べるもののために、彼ら生産者が背負ってくれているリスクを、僕も八百屋として一緒に背負いたいという思いもありますね。
もともと僕は、マニュアル化されたチェーン店のメニューより、人情を感じる、昔ながらの町中華のごはんを食べる方が好き、みたいなタイプで(笑)。
野菜を選ぶときも同じです。僕が全国をまわって実際に会って話して「この人魅力的だな」「好きだな」と思った農家さんと、信頼関係を築いてお取引しています。取引先、というより「友達」みたいな感覚かな。
<青果ミコト屋>で扱っている野菜は、どれも僕の友達の自慢の作品なんです。
だから、間違いない。自然栽培という手段にこだわらなくても、胸を張って販売できます。
仕入れた野菜一つひとつの生産の裏側にあるストーリーを、僕やうちのスタッフがお客さんに伝えると、お客さんも面白がって買ってくれます。
そういう野菜って、スーパーで安いから適当に買った野菜に比べると、冷蔵庫でダメにしちゃうことも少ないんじゃないかな。
「自然栽培」や「オーガニック」って言葉とか、質のいい野菜を選ぶべきというところにばかり目がいくと、敷居が高いイメージを持たれてしまい、本来の魅力が伝わらないなと感じています。
けれど、本来は野菜って素朴なものなので。
シンプルで本当にいいものを毎日食べるって当たり前だよね、と、できるだけ多くの人に思ってほしい。
そのためにも、できるだけ敷居を下げつつ、うちの野菜をいいなと思ってくれる人に届きやすい仕組みも考えたいです。
「野菜を届けること」も「環境負荷の削減」も、二兎を追う
その点、ネットショップという仕組みは便利ですよね。
もちろん、オンラインでの販売って、環境負荷など色々コストがかかるものです。僕の信条としては抵抗感もゼロではありませんでした。
しかしそれ以上に、うちの野菜を買いたいと思ってくれる人が色々な地域にいるならば、その人たちに届けたいという思いが強くあります。
恩恵には預かりつつも、やはり環境負荷を減らすような工夫はできるだけしていきたい。
梱包材をプラスチックフリーにするというのは、こだわってやっています。
むしろ過剰包装より、簡単な方がいいと思ってくれる消費者もいると思うんです。
BASEには運用を楽にできる仕組みが整っているし、BASEを使うお客さんは「BASEを使っているお店で買い物をする」ことに慣れているのがありがたいです。
うちなりのこだわりでカスタムしたいと思ったら、プロに頼らなくても自分でできるところも気に入っています。
売り上げも、天気や季節の影響を受ける店舗に比べると、年間を通して安定している印象ですね。
「気持ちいい」消費を、これからも
今の<青果ミコト屋>の思いや魅力は、お客様に結構伝わっていると思います。今後も継続していきたい。
同時に、お店で使っている電力消費とかにも目を向けて、もっと削減できたらより気持ちいいだろうとか、考えてますね。
ネットショップを活用する立場としても、EC業界全体をよりエコフレンドリーにするようなアクションが取れたらいいですね。中古段ボールを再活用しようとか、過剰包装を減らすムーブメントとか。
少しでもそういう風潮を作って、むしろ過剰包装が気になるくらいになったらいいですよね。
エシカルな消費活動って、その選択によって「世界がちょっとよくなる」から「気持ちいい」。
誰もが毎日色々なものを消費して生きているから、そこに責任を持って意志をこめられたら、きっともっと気持ちいいはず。
これからも、できることを増やしていけたらうれしいですね。
<青果ミコト屋>
オーナー:鈴木鉄平さん
Shop:https://store.micotoya.com
Instagram:https://www.instagram.com/micotoya