400年続く日本の伝統工芸「印傳」の魅力を、ネットショップで世界へ。前川印傳の3代目が思い描く、継承と発展

2024.03.12(更新:2024.04.09)

さまざまなショップオーナーの魅力に迫る、インタビュー連載企画「Why 〇〇?」
BASEのInstagramアカウント@baseecと連動し、そのブランドが持つ唯一無二の世界観は、どのようにして生まれたのか?ーーそんな「Why」を深堀りしていくシリーズ。

今回は、浅草にある、伝統工芸のお店前川印傳(まえかわいんでん)をご紹介。
インタビューは、3代目として印傳の魅力を世界へ発信している、前川来人(まえかわらいと)さんにご登場いただきました。

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印傳(いんでん)とは、鹿革に漆模様を施す伝統工芸のこと。
鹿革は、柔らかな感触が特徴の人肌にもっとも近いとされ、その軽さ・丈夫さもあいまって、古くは奈良時代から生活道具や武具として重宝されてきた。

鹿革に、漆(うるし)でさまざまな模様を描く印傳の歴史は、400年余り。
そんな印傳の長い歴史の一端を担う、<前川印傳>の来人さん。
伝統工芸を継承するだけではなく、商品も、届け方もアップデートしていく。その若き挑戦の背景にある、想いとは?

父の背中を追って、家業に就いて気づいた。「仕事は、おもしろい」

じつは、<前川印傳>を継ごうと思ったのは、大学生になってからです。幼少のころから、職人の仕事には慣れ親しんでいましたが、継ぐ気はなかったんです。
とはいえ、これといって夢や希望もとくになし。やりたいこともないような状態でした。

自分に合う仕事って、なんだろう? そんなとき目に留まったのが、<前川印傳>2代目の父である父親の働く姿です。仕事に向かう父は、いつも楽しそうで、前向きで。
父が楽しそうに仕事をしている理由を知りたい。そして、自分もそんな風に働けたら。
そう思ったのが、<前川印傳>で働きはじめたきっかけです。

最初は手伝いとして、接客を中心に働いていました。
実店舗の場所が浅草ということもあって、外国からのお客様も多いんです。
海外の方への接客の中で、自分の英語力を生かすことができた。はじめて、仕事で自分の得意を生かすことができた瞬間でした。
「仕事っておもしろいかも」、そう思いましたね。

また、海外の方の反応をとおして、<前川印傳>の魅力にあらためて気づかされました。

日本での印傳の認識は、伝統的に「和装に合わせるもの」というのもあって、落ち着いた色味の商品が多いのが一般的です。
日本のお客様には「色合いが暗い」という感想を抱かれる方もいらっしゃいますが、海外の方からの反応は、正反対のものでした。
当社の印傳をはじめて見た海外のお客様は、「ビューティフォー!(美しい!)」と言って目を輝かせてくださいます。海外の方からすると、新鮮なんでしょうね。
リアクションも大きく、非常に喜んでお選びいただけるので、接客でも自信を持っておすすめすることができています。

浅草も襲った、コロナ禍。復活の覚悟の裏に「父の言葉」

海外の方をはじめ、<前川印傳>にご興味を持っていただいたお客様への接客に、やりがいを感じていた矢先、新型コロナウィルスがまん延しはじめました。

実店舗に来店される外国からのお客様も激減し、いままでの売り方ができなくなりました。
わたしやほかの従業員にも、「これからどうなるんだろう」と不安が広がっていました。

そんななかで救われたのが、父の言葉でした。
父は変わらぬ明るさで、「なんとかなる」と、力強く。
この先どうなるかわからないけど、どんな状況になっても「なんとかなる」。
父の言葉といつもの明るさのおかげで、前向きに考えられるようになりました。

コロナ禍では、物理的に実店舗を開けられませんでした。
それなら「普段できないことをやってみよう」と、ネットショップを中心とした、Webサイトの整備に着手することにしたんです。
もともと、BASEでネットショップは開いていました。ただ、作ったのはいいものの、とくに積極的には活用していませんでした。
でも、いざ商品の説明文を書いて写真を登録してみると、操作はかんたん。
販売を開始してみたら、なんとすぐに売れたんです。
実店舗ではなくても、商品を求めてくれる方は必ずいる。ご来店いただく以外の、新しい商品の届け方を見つけられて、とてもうれしかったことを憶えています。
そこで、ネットショップと同時に、<前川印傳>を紹介するWebサイトも、友人の力を借りて制作しました。
<前川印傳>の説明や、職人の想い、商品に使っている和柄の意味など、日ごろの接客の中でお客様にお伝えしている内容を盛り込みました。

コロナ禍が落ち着いた今でも、ネットショップは続けています。お店に来ていただいた方にも、ご案内しています。
ネットに慣れていない従業員も、問題なく使えていますね。
コロナ禍をきっかけに、ネットショップというもう一つの販路が、確立されつつあります。

伝統を、ただ継承するのではない。「お客様の声」からつねに新しい風を

印傳は、先ほど言ったとおり、「色合いが暗い」という印象がやはり強い。
その固定観念を払う意味でも、当社では、華やかな色合いが楽しめるデザインのカバンやお財布などを製作しています。
色が明るく鮮やかで、洋服にも合わせられる、そして若い方にも持ってもらえるような、新しい印傳のかたちを目指しています。

この方針の根幹は、「お客さまの声を聞く」ということ。
これは、<前川印傳>の初代から受け継がれた姿勢です。なので、いまでも職人がお店に立ち、お客様の声に耳を傾けています。

ご来店いただいた方の店頭での反応や、オーダーメイドで承った要望など、お客様の声を商品に反映させる。
だからこその商品との向き合い方、商品開発ができる。
お客様の声から、新商品が生まれたり、定番商品を改良するアイデアとして取り入れたりもしています。
初代から大切にしてきた、お客様と商品への真摯な姿勢を、<前川印傳>は受け継いでいます。

こうした新たな試みは、商品開発だけに限ったものではありません。
コロナ禍をきっかけに見出した、ネットショップという新しいお客様への届け方も、拡充していきたいと考えています。
やはり、海外のお客様にも届けたいですね。
海外の方に、旅行をきっかけに<前川印傳>を知っていただき、帰国後もオンラインで商品を買うことができる。新たなリピーターやファンを創出する機会になる、と考えています。

400年続いてきた印傳を受け継ぎながら、新たな販路であるネットショップでたくさんのお客様に届けていく。そして、伝統を継承しながら、発展させていきたいです。

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