特定商取引法に基づく表記とは?条文をもとに分かりやすく解説!ネットショップ運営にも必須

2020.09.15(更新:2022.01.12)

ネットショップには、「特定商取引法に基づく表記」をすることが義務付けられています。これに違反した場合、罰則の対象になる可能性があるので、注意が必要です。

この記事では、そんな「特定商取引法に基づく表記」についてくわしく解説します。後半では表記のサンプルも掲載しているので、ネットショップを作成するうえでの参考にしてください。

※この記事では法律に関して細かく解説しています。BASEの登録画面に沿った解説はこちらの記事をご確認ください。

 

特定商取引法とは?

まずは「特定商取引法」について理解しましょう。

「特定商取引法」とは、訪問販売や通信販売などを利用する消費者を守るための法律です。

悪質な販売行為によって消費者が被害を受けないように、対象の事業者が守るべきルールや、クーリング・オフなどの規定を定めています。

そして、ネットショップなどの通信販売をおこなう事業者も、この法律の対象となっているのです。

特定商取引法では、ネットショップ上に氏名や住所、電話番号などの「特定商取引法に基づく表記」をすることが義務付けられています。

 

特定商取引法の対象になる取引

では、特定商取引法の対象になる「商取引」は、何が該当するのでしょうか? 

対象になっているのは、以下の7つの取引です。ネットショップはもちろんのこと、ほかにも対象となる商取引があります。

<対象になる商取引>
・訪問販売
・通信販売
・電話勧誘販売
・連鎖販売取引
・特定継続的役務提供
・業務提供誘引販売取引
・訪問購入

ネットショップは「通信販売」に当てはまり、特定商取引法の規制対象となっている

ネットショップが該当するのが通信販売です。

通信販売とは、インターネット通販だけでなく、新聞や雑誌などのカタログ通販、テレビショッピングなどもふくまれています。

販売業者が、インターネットや郵便、電話などの通信を利用して注文を受ける販売方式です。

ネットオークションサイトやフリマアプリなどでの販売も、「業として営む」とみなされる場合には、通信販売に該当し、特定商取引法の対象になることがあるので、注意が必要です。

「業として営む」というのは、営利の意志があるとみなされる場合で、たとえば転売目的で商品を仕入れて販売する場合などが該当します。(この定義についても下記の通信販売についてのページに記載があります)

 

通信販売に対する特定商取引法の規制

ネットショップが当てはまる「通信販売」においては下記6つの行政規制の対象になっています。(つまり、この項目を守りなさいということです)

違反した場合は、国や都道府県の行政処分や罰則の対象となります。

・広告の表示
・誇大広告等の禁止
・未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止
・前払式通信販売の承諾等の通知(法第13条)
・契約解除に伴う債務不履行の禁止(法第14条)
・顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止(法第14条)

特に関係があるのが「広告の表示」

通信販売は遠隔での商取引のため、購入者保護のために、広告には誤解や認識の齟齬を生じさせないようにいくつかの決まり事を定めています。

たとえば「送料を含めた販売価格表示」や「商品の引き渡し時期」など、14項目に渡ります。

・販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
・代金(対価)の支払い時期、方法
・商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
・商品若しくは特定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(その特約がある場合はその内容)
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
・事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
・申込みの有効期限があるときには、その期限
・販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
・商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
・いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
・商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件
・商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
・請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
・電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス

引用:特定商取引法ガイド

そしてその中には事業者の氏名、住所、電話番号等も表示するように定められており、特商法に基づく表記では、事業者名などの記載が必須となっています。

くわしくはこちらのページに記載がありますので、ご確認ください。

民事ルールもある

上で紹介した内容は、行政処分の対象となる内容ですが、それとは別に消費者と事業者間のトラブル防止を目的とした民事ルールもあるので知っておきましょう。

契約の申込みの撤回または契約の解除

こちらに関しては以下のようなルールがあります。

「消費者が商品を受け取って8日間以内であれば、消費者は事業者に対して契約申し込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができる」※ただし、事業者が広告であらかじめ、契約申込みの撤回や解除につき、特約を表示していた場合は、特約によります。

通信販売に関してはクーリングオフ(一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度)はありませんが、上記のようなルールがあるため、返品特約を記載しておく必要があります。

事業者の行為の差止請求

事業者が誇大広告などを行った場合に、消費者団体が事業者に対して行為の停止や予防など必要な措置をとれるように定めたもの。

 

「BASE」では特定商取引法に基づく表記は必須入力項目としています

一般的に「特商法に基づく表記」は、サイトのフッターメニューなどの、わかりやすい位置にリンクを設置します。

「BASE」でもこの項目は必須入力項目となっていて、ショップ上のフッターなどにリンクが設置されます。

くわしい表記の仕方などは、このページの後半にサンプルを記載しているので、参照してみてください。

特定商取引法に基づく表記を記載しなかったらどうなるの?

ネットショップに「特定商取引法に基づく表記」をしなかった場合、罰則の対象となることがあります。

たとえば「業務改善の指示」「業務停止命令」「業務禁止命令」などの、行政処分の対象になる可能性もあります。

これは、株式会社や有限会社など「法人」のネットショップに限ったことではありません。

個人事業主としてネットショップを運営している場合でも、または副業で運営している場合でも、表記することが義務付けられています。

つまり、規模に関係なく、ネットショップを運営する場合には、かならず「特定商取引法に基づく表記」をする必要があるのです。

 

ネットショップ運営に必要な項目

ではネットショップを運営する場合に、「特定商取引法に基づく表記」として、どのような項目を記載する必要があるのでしょうか? 5つの項目について、くわしく解説します。

なお、記載内容については下記の「BASE」のマニュアルにもくわしく記載していますので、「BASE」に登録のさいは、合わせてご確認ください。

▶︎特商法の設定マニュアル(個人)
▶︎特商法の設定マニュアル(法人)

1. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号

事業者名、住所、電話番号を表示する必要があります。事業者名は、個人であれば本人確認書類等に記載されている正式な氏名、法人であれば登記簿に登録している法人名を記載してください。

※個人の場合、開業届に記載しただけの「屋号」や、ショップ名などは認められていません。

<記入サンプル>
事業者名称:○○○○
住所:東京都△△区◇◇1-1-1 □□ビル1-101
電話番号:03-××××-×××

個人情報を入力するのに抵抗がある方

今回ご説明している特商法の表記というのは、ショップを訪れるすべての人に開示される情報となります。

そのため、公に住所がバレてしまうのでは?と不安な方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方におすすめしたいのが、事業者の所在地、及び事業者の連絡先の非公開設定です。

くわしくはこちら

※区分「個人」のショップオーナー様のみご利用いただけます。

 2. 販売価格、送料

商品の販売価格や送料などの料金について、くわしく記載する必要があります。税抜価格だけでなく、消費税をふくむ合計金額がわかるように記載しましょう。

ただし、ネットショップでは商品ごとに価格が異なるため、「特定商取引法に基づく表記」の専用ページではなく、商品購入のページに各商品の価格と送料がはっきり記載されていれば、問題ありません。

送料について

送料についても、具体的に記載する必要があります。「送料実費」などのあいまいな表現ではなく、送料の具体的な金額がわかるように記載してください。

送料が確認できるページへのリンクを貼って誘導する、という方法でも大丈夫です。また、販売価格や送料のほかにも、手数料など、消費者が負担する料金があれば、すべて具体的に記載してください。

<記入サンプル>
販売価格:各商品のページに記載されている価格(表示価格/消費税込)とします。
送料:全国一律300円(税込)

3. 代金の支払い方法

代金の支払い方法については、「利用可能なすべての支払い方法」を記載することが必要です。

利用できる支払い方法を省略して、おもな支払い方法だけを記載することは禁止されています。代金引換やクレジット決済、銀行振込など、利用可能な決済方法についてはすべて記載しておきましょう。

<記入サンプル>
支払方法
クレジットカード決済、コンビニ決済、銀行振込決済、キャリア決済、PayPal決済による決済がご利用いただけます。

 4. 支払い時期、商品の引渡時期

商品代金の「支払い」と、「商品の引渡」の時期、つまりそれぞれがどのようなタイミングになるのかを、明確に表示する必要があります。

前払いやクレジットカード払いの場合は、消費者が支払いをおこなった時期を基準にして、商品の引渡までにどの程度の期間があるのかを、明確に記載しましょう。

「支払い確認後、○○日以内に発送します」など、具体的に表示します。

<記入サンプル>
クレジットカード:ご注文時にお支払いが確定いたします。
配送のご依頼を受けてから5日以内に発送いたします。
ご注文から5日を過ぎても商品が到着しない場合は、お電話にてご連絡ください。

5. 返品特約・瑕疵担保責任

申込のキャンセルや、商品の返品・返金などに関する規定についても、表示しておく必要があります。

ただし、「どんな場合でも返品・キャンセルは受け付けません」と記載しても、効力はありません。法律上「瑕疵担保責任」というものがあり、欠陥のある商品については、返品・返金などの対応をする必要があるのです。

<記入サンプル>
商品に欠陥がある場合を除き、基本的には返品には応じていません。
サイズや色に間違いがございましたら、お電話にてご連絡ください。

なお、商品に欠陥がなくても、一定期間なら返品に応じる場合など、「瑕疵担保責任よりも広い範囲で応じる規定」を設ける場合には、そのことを記載しておきましょう。

返品に関するこのような特別な規定のことを、「返品特約」と呼びます。

返品特約を設ける場合には、「商品に欠陥がない場合でも、商品の到着から7日間に限り、返品に応じます」などと記載します。

 

 

特定商取引法の対象となっているその他の商取引について

さいごに通信販売以外の商取引についてもご紹介しておきます。

訪問販売とは?

訪問販売とは、販売員が自宅に訪問して商品などを販売することです。

路上などで人を呼び止めておこなうキャッチセールスや、電話やハガキなどで消費者を特定の場所に呼び出して販売活動をするアポイントメントセールスも、このタイプに該当します。

訪問販売について見る

電話勧誘販売とは?

電話勧誘販売とは、消費者に電話をかけることによって勧誘し、商品やサービスを販売する取引です。

電話でそのまま申し込むことをせず、後日郵送や電話で申し込んだとしても、このタイプの取引に該当します。

電話勧誘販売について見る

連鎖販売取引とは?

連鎖販売取引とは、マルチ商法とも呼ばれています。

消費者を販売員として勧誘し、その人につぎの消費者を販売員として勧誘させる、という販売方式です。

連鎖販売取引について見る

特定継続的役務提供とは?

特定継続的役務提供とは、習いごとやエステなど、モノと違って形に見えないサービスのことです。

継続的にサービス提供をする事業で、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の、7つのサービスがふくまれています。

特定継続役務提供について見る

業務提供誘引販売取引とは?

業務提供誘引販売取引とは、内職商法やサイドビジネス商法とも呼ばれます。

「副業を紹介する」「収入になる」などのトークで勧誘し、そのために必要であるとして、商品や教材を販売する商法です。

業務提供誘引販売取引を見る

訪問購入とは?

訪問購入とは、自宅に訪問して商品の買取などをおこなうことです。貴金属などの買取をおこなうサービスや、家具・家電などの不用品買取をおこなうサービスが該当します。

訪問購入について見る

 

特定商取引法違反に基づく処分件数はどのくらい?

さてここまで解説してきた特定商取引法ですが、いったいどのくらいの数の事業者が処分の対象になっているのでしょうか?

実はこの数字は消費者庁のホームページで公開されています。>こちら

最新のデータである2019年では、合計176件が処分されており、記載のある1997年以降で最多となっています。

法改正について

特定商取引法は、少しずつアップデートされています。こちらのページに法改正についての記載がありますので、最新の情報もチェックしておきましょう。

直近では、令和2年に法改正が行われています。

 

 さいごに

ネットショップは、かんたんにショップを開くことができる一方、立派な商取引にほかなりません。

そのため、個人であっても特定商取引法などの法律を遵守し、トラブルのない運営をしていくことが必要です。とはいえ、難しく考えすぎる必要はありません。下記のマニュアルに沿って、一つひとつ記載してみましょう。

▶︎特商法の設定マニュアル(個人)
▶︎特商法の設定マニュアル(法人)

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