【飲食店の新たな挑戦 vol.3】「飲食店の新しい価値提供を」家族ファーストの店主がIターン先で営む<カレー屋ヒゲめがね>の奮闘

更新日 : 2020/10/22
投稿日 : 2020/09/25

2020年9月現在、Go Toトラベルキャンペーンで除外されていた東京都が10月1日から追加に向けた検討開始が発表されるなど、経済回復に向けたニュースもちらほら出てきていますが、まだまだ予断を許さぬ状況が続いています。

飲食店は、イートインでは間引きや消毒・検温対応、それにより落ちる売上を支えるためにテイクアウトやデリバリー、物販をはじめられたり、検討されていることかと思います。

「飲食店の新たな挑戦 vol.3」では、元<ハウス食品>勤務のスパイスマスターが脱サラし、長野県佐久穂町にさまざまなご縁がつながりIターン、新型コロナウイルス感染拡大の最中、はじめての飲食店経営に挑み、奮闘する<カレー屋ヒゲめがね>の豊田さんにお話をうかがいました。

<カレー屋ヒゲめがね>のショップURL:https://higemecurry.thebase.in/ 

一年間の育休が大きな転機に。「家族との時間をきちんと確保する生き方をする」ために選んだ、新しい道

ーーなぜ飲食店をはじめようと思われたのでしょうか? そのきっかけは?

もともとは<ハウス食品>で、サラリーマンとして働いてきました。朝から夜遅くまで働く日々をずっと送ってきて。結婚し、子育てしていく中で「昨日できなかったことが、今日できるようになる」という子供の目覚ましい成長を見て、もっと子供に向き合う時間を取りたい、という想いが高まっていきました。そこで、三人目の子供が生まれたときに、思い切って一年間の育休を取ることにしたんです。そして、この期間だからこそできることはないかといろいろ検討した結果、ご縁あって2018年の夏休みに1ヶ月間、長野県佐久市に短期移住することにしたのです。自然が豊か、食べ物がおいしい、なにより人がいい。最高の日々でした。
職場復帰をしたあともそれが忘れられず、子供を通わせてあげたい、と思えるすばらしい小学校が2019年春にできたこともあり、佐久市に思い切って移住することを決めました。

しかし、思った以上に遠距離通勤はしんどいものがありました。ただ、転職をするにも佐久市に自分が心からやりたいと思える仕事がない。だったら自分でなにかやるか!と思い立ち、<ハウス食品>で培ったスパイスマスターとしてのスパイスの知見をフル活用したカレーを作ろう、と思ったのが飲食店をはじめるにいたる、第一歩でした。

ーー脱サラして、未経験の飲食店経営をIターン先の長野県で行う……不安はなかったですか?

不安がなかったといえば、嘘になります。自分が作るカレーが、受け入れられるかどうかもわからないわけですし。なので、短期移住期間に知り合い、懇意にしていただいていた方が運営されているドーナツカフェで間借りカレーのイベントを数回開催させていただいたんです。そこでみなさんの反応などを直に聞き、「これは受け入れてもらえる!」という手応えをつかむことができたのは、大きかったですね。

また、不思議なことに、カレーへの思いをいざ口に出してみると、さまざまなご縁がつながっていきました。こだわりの有機野菜を作られている農家の方から、おいしい野菜を材料として提供していただけるようになったり、神奈川県日吉にある、日本一おいしいと思っているカレー屋さん<HI HOW ARE YOU>で修行させていただいたり、佐久市の隣町、佐久穂町にて「住居兼居ぬき店舗物件」との偶然の出会いがあったり。
さまざまな人との素敵なご縁が、後押ししてくれました。

Campfireでクラウドファウンディング。支援総額が目標金額の489%達成!

Campfireでの支援金を使って作った「看板」

ーーなぜ、Campfireで支援を募ろうと思われたのですか?

さきほどお伝えしたように、ずっと<ハウス食品>でサラリーマンをしてきた僕が、Iターン先の長野県佐久穂町で飲食店経営をはじめるというのは、今まででいちばんのチャレンジであり、人生の転換期だと思ったんです。なので、ここに至った背景や想いなどをすべて棚卸しして、記録しようと考えました。

また、お世話になった友人・知人に報告しようにも、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、直接会えないこともありました。SNSで発信することももちろんできますが、お店の一つのマーケティング施策にもなることから、実施に踏み切りました。

ーー目標金額の489%達成は、とてつもない数字ですね! なぜ、ここまで達成できたと思われますか?

<ハウス食品>時代に新規事業開発を担当していたことから、2年ほど外部とのコミュニケーションを積極的に取る活動をしてきました。そこで知り合った仲間からの、支援の輪が広がっていったのだと思います。
この結果を受けて、よりがんばらなくちゃ!と、やる気が高まりましたね。

今までの飲食店にない、新しい価値提供をしたい

ーー2020年6月から開店した店舗は、どのように運営されてますか?

火・水・金・土の週4のランチ営業で、うち金曜日はテイクアウトのみ営業しています。最初のころはすべてイートイン営業だったのですが、仕込みがあることから、気付いたら夜遅くまで働いていたりと、目的だった「家族との時間をきちんと確保する生き方をする」ことが果たせなくなっていました。この生き方をするための手段として、飲食店経営をすることにしていたのに、できていないことがもどかしくて。
そこでどうすべきかをあらためて考え、オペレーションコストが低い、テイクアウトを週1で盛り込むことにしました。

ーー目的を達成するためとはいえ、ほかの飲食店にはなかなかないスタイルかと思います。なぜ、踏み切れたのでしょうか。
「飲食店はブラック」という固定概念があると思います。その概念をぶち壊したいですし、どうせやるなら、新しい価値提供をしたい、と思いました。なるべくミニマムで最低限のお金を稼ぎつつ、自然豊かな環境で家族との時間を大事にする、という新たな飲食店経営のスタイルの事例を作ることができれば、世の中にとっても価値提供になるのかもな、と。

ーー「新しい価値提供をしたい」という想いを持ったのは、なぜですか?

京都にある、<百食屋>をご存知ですか? このお店のことを知って、衝撃を受けたのです。「働くメンバーが仕事もプライベートも大切にできると、また一層美味しい料理と良いサービスを届けられるという考えに、強く共感しました。
私がお店を営んでいる佐久穂町は、人口1万人で、少子高齢化が非常に進んでいます。
また、人生100年時代、この新型コロナウイルスをきっかけに、より地方移住という選択肢を取る方が今後少しずつ増えてくるかもしれません。そのなかで、先行事例を作ることができると、新しい希望を与えられるのではないか、と思いました。

店舗営業は一人で切り盛りすることが前提。その中でテイクアウトのオペレーションに「BASE」は不可欠だった

カレー屋ヒゲめがね>の「BASE」のネットショップ

ーーテイクアウトはオペレーションコストが低いということでしたが、それ以外の実施理由はありますか?

店舗を2020年6月中旬にオープンしたのですが、Campfireでの支援やSNSでの発信が功を奏して、お店の外に列ができるようになりました。ただ、それにともない、「食べたい時に食べられない」という声も日に日に増えていきました。また、時期的に新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、店内飲食を控えたい、という方もいらっしゃいました。「テイクアウトをやってほしい」という直接的な声をいただいたこともあり、まずは試験的にテイクアウトの日を作ってみたんです。

ーーテイクアウトを、電話注文で受けることは考えられなかったのですか?

もちろん、第一候補は電話注文でした。地方ということもあり、スマホを持っていなかったり、おじいちゃん・おばあちゃんからは「電話対応してよ」という声があったのも事実です。ただ、電話で対応すると、メニューの説明やら何やらで、一つの注文を受けるのに5分から10分ほどかかってしまいます。店舗は自分一人で切り盛りしているので、オペレーションコストが高いものはやめるべき、と判断しました。また、そのときにちょうど「BASE」が「テイクアウト App」をリリースされた、というのも追い風でした。

ーーもともと「BASE」はご存知だったのですか?

「BASE」は間借りカレーのイベントをやらせていただいたドーナツカフェが使っていらっしゃっていて、話を聞いたら「ほんとうにかんたんに作れる!」ということで、それが強く印象に残っていて。
実際に使ってみたら、驚くくらいかんたんで。これなら自分でもできそう、と思えましたね。

ーー「BASE」の「テイクアウト App」を使ってみた印象はいかがですか?

とても使いやすいですね。
在庫設定や販売期間を区切ることができるため、自分がテイクアウトのために準備すべき量やリードタイムが、かんたんにわかります。そして、事前決済なので、取りっぱぐれがないところもいいですね。
テイクアウトをきっかけに、「職場のみんなで食べたい」ということで10食以上の注文が入ったり、「子供に家で食べさせてあげたい」といった、イートインでは満たすことができないニーズを拾うことができるようになりました。
また、テイクアウトで持ち帰ったカレーを家ですこしアレンジして、食卓のお皿に盛り付け、それがSNSで投稿されて広がる、といった、思いもしなかった動きも起きておもしろいですね。

これからの飲食店のあり方

ーーウィズコロナ、アフターコロナ時代の飲食店は、どうなっていくと思われますか?
飲食店は、空間に魅力を感じないと人々は来ないと思うんです。空間とは、そこにいる人、お客さん、店舗、料理などをすべてふくめた雰囲気で。とくに地方となると、近隣の方だけの支持では成り立ちません。佐久穂町の場合、おとなりの佐久市や軽井沢町など、広域商圏の方にも魅力を感じていただく必要があります。つまり、空間をみがきこむことを第一におこなうとともに、それを発信していくことが大事になってくるのではないでしょうか。

ーー現在は、具体的にはどのような発信をされてますか?

InstagramやFacebookのフォロワー限定メニューを開発し、それを発信するなどして、フォロワーを増やす努力もおこなっています。
また、コメントに対してかならず返信するなどして、気にしてくださった方との関係づくりも意識してます。
おかげさまで、今では「Instagramを見て来ました」という方々もじょじょに増えてきましたね。

ーーこれから飲食店をチャレンジしていきたい方々に向けて、一言お願いします。

飲食店、めちゃめちゃ楽しいですよ。一人で好き勝手できるので、自分で決断してアクションできます。お客さんの反応をダイレクトに見れますし。それを踏まえて、考えて、改善して、の繰り返しです。
ミニマムな経営をできる仲間を、いっしょに作っていけたらいいな、と思っています!

編集後記

一年間の育休中の短期移住からはじまった、素敵な連鎖。
豊田様は物腰もとてもやわらかく、いい意味で力が抜けていて、このお人柄と静かな覚悟が伝わる語り口が、その連鎖を呼び込んだのだろうなあ、と感じました。

まさに、飲食店経営の新しいあり方であり、新型コロナウイルスが一つのきっかけとなって、家族と過ごす時間が増え、豊田様と同じような考えを持たれる方も増えていくのではないでしょうか。そういった方々の羅針盤となるような、勇気をもらえるお話になったのではないか、と感じております。

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物販はもちろんのこと、今回ご紹介させていただいたようにテイクアウトのオペレーション簡略化が可能な「テイクアウト App」もご利用いただけますので、新しいチャレンジを考えられている飲食店オーナーの皆様も、この機会にぜひご検討ください。

豊田様の、ほんとうに素敵な家族写真

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