【ネットからリアルへvol.12】明治20年創業、老舗和菓子屋<五穀祭菓をかの>。20歳で店を継いだ6代目女将が切り開く、新しい道とは

2021.10.28(更新:2021.11.12)

「ネットからリアルへ」では、「BASE」の常設店舗「SHIBUYA BASE」や「BASE Lab.」の出店オーナーズにその魅力をおうかがいし、ネットショップがリアルの場へと挑戦する意義をお伝えしていきます。

第12回は、<SHIBUYA BASE>に出店した<五穀祭菓をかの>のオーナー・榊(さかき)さんにお話をうかがいました。

<五穀祭菓をかの>は、明治20年から134年続く埼玉県の老舗和菓子屋。

「健康=美味しくない」を変えるべく、お客様の健康を考え、体に良い新鮮な材料でまた食べたいと思っていただけるような美味しい和菓子を作っています。最近では「溶けないアイス葛きゃんでぃ」が中山道の新名物第1位に選ばれ、テレビでも紹介されるなど人気を集めています。

Shop:https://wokano.official.ec/
Instagram:https://www.instagram.com/wagashi_wokano/
Twitter:https://twitter.com/wagashi_wokano

オーナー・榊さん
インスタ:https://www.instagram.com/moemi_nu/
Twitter:https://twitter.com/moemi_nu

 

洋菓子を手に取る感覚で、当たり前に和菓子を手にとってもらえるようにしたい


ーーブランドのコンセプトを教えてください。

「食べた方にホッとした気持ちになっていただきたい」「洋菓子を手に取る感覚で、当たり前に和菓子を手にとってもらえるようにしたい」という思いのもと、明治20年から続く、代々受け継がれてきた味と技で、新しい和菓子づくりに取り組んでいます。

「老若男女すべての方が、<をかの>の和菓子でほっと幸せなひとときを感じられる」そんな和菓子をお届けするため、職人が一つひとつ手間暇をかけ、心を込めてていねいにお作りしています。

 

ーーブランドを立ち上げたきっかけや、経緯について教えてください。

<五穀祭菓をかの>は、埼玉県桶川市の駅前通り商店街にある、明治20年から続く創業134年の老舗和菓子屋です。

私はここで生まれ育ち、20歳のときに店を継ぐことを決め、<五穀祭菓をかの>の6代目女将となりました。

 

お店の従業員やお客様のために、20歳でお店を継ぐ決断

ーーお店を継いだ経緯について、教えてください。

もともと、誰かのためになるような仕事をしたい、という思いがありました。その当時は高校生で、人の役に立つ身近な仕事といえば、教師しか思いつかず、大学で教育学部に進みましたが、「なんか違うな」と思っていました。

進路をどうするか迷っていたころに母が入院し、父と母が「お店をどうしようか」という話をしているのを聞いていました。当時、実店舗が3箇所、従業員が20名ほどいたので、「もしも自分が継がなかったらお店が潰れてしまうな」と、お店がなくなったときのことをはじめて考えました。

わたしが先頭に立ってやっていけるのかなと、いう不安はありましたが、あるとき、地元を歩いていたら、偶然同級生のお母さんに会って、「お店は継いだの?」と訊かれたんです。

自分ではすっかり忘れていたんですが、小学生のころに書いた将来の夢の作文に「お店を継いで、親に楽をさせてあげたい」と書いていたようで、その同級生のお母さんに「みんなそのときの話をしてるんだよ、継ぐのを待ってるんだよ」と言われて。「そうか、自分はお店をやりたかったのかな」と気づきました。

「誰かのためになる」の「誰」が具体的に決まっていたわけではなかったので、「私がお店を継ぐことが、お店の従業員やお客様のためになるのかな」と思い、継ぐことを決意しました。

ただ、一度就職して社会に出て常識や上下関係を学びたかったので、大学を中退し、当時アルバイトをしていたアパレルの会社に入社して2年ほど働き、20歳でお店を継ぎました。

 

ーー20歳でお店を継がれたんですね! お店は、うまく引き継ぐことができたのですか?

継いだ当時は、会社の業績はあまりよくなくて。負債が何千万円もあり、直近の10年間は、ずっと赤字が続いているような状態でした。

ただ、決算書の読み方もわからなかったので、悪いとはいっても、どこがどう悪いのかもわからず、少しずつ勉強して、ここ2年くらいでやっとちゃんとわかるようになってきました。

当時は、会社のホームページもなくて。お客様といえば、店舗に来てくださる地元の年配の方たちだけで、近隣のエリアの高齢化もあいまって、新規のお客様も全然いないような状態でした。

そこで、なにか目玉商品が必要だと思い、「溶けないアイス 葛きゃんでぃ」を開発し、シャッター街となってしまったあまり人がいない地元のお祭りでためしに販売してみたところ、2日間で1,000本ほど売れたので、ちゃんと商品化して販売することにしたんです。

 

テレビで紹介されて「溶けないアイス 葛きゃんでぃ」が大人気に

ーーネットショップで人気が出たのには、なにかきっかけがあったのですか?

「溶けないアイス 葛きゃんでぃ」を開発して1年後に、たまたまテレビの取材が来て、番組で紹介していただいたのですが、そのときはまだ、知り合いに頼んでWordPress(Web作成サービス)で作ってもらったホームページしかなかったので、テレビ番組放送後にアクセスが集中しすぎて、ホームページが落ちてしまって。電話もパンク状態で、注文を受けることができなかったんです。

そのホームページでは、注文が入るとメールが届いて、そのメールで注文内容を確認して、手作業でお支払い額を計算し、お客様にメールして、銀行振り込みでのお支払いを待ってから発送する、という流れだったので、かなり大変でした。

その5年後に、また偶然にもテレビ取材があったのですが、今度は放送の1ヶ月ほど前に「BASE」でショップを作成し、テレビ番組放送までに実際にフルーツ大福を販売してみて、使い方に慣れてから放送日を迎えました。

放送された後は、1日に2,500件ほど注文が入ったのですが、そのときはまだWordPressのホームページもあったので、どちらからも注文が来てしまって。WordPressでは、メールを確認して計算してメールして、という作業が必要だったのに比べて、「BASE」だと、かなりかんたんに作業ができて、感動して、そこからは「BASE」に一本化することにしました。

ーー数あるプラットフォームのなかで、なぜ「BASE」を選んだのですか?

もともと知っていて、知名度があるサービスだと思っていたのと、無料のデザインテンプレートが充実しているので、使いはじめました。

私が継ぐ前に、<楽天>を使っていたようなのですが、手数料が高くて大失敗した、ということで、最初に「BASE」を使うと言ったときに、従業員たちには反対されましたが、「初期費用が0円なので、失敗しても大丈夫」というのと、「注文が来てから商品を作ればいいので、ロスも出ない」ということで説得して、ネットショップをはじめられることになりました。

 

ーーネットショップの運営は、一人でおこなっているのですか?

ネットショップについては、今はわたしともう一人のスタッフで運営しています。

商品を作るところまでは、他のスタッフに作業してもらって、その後の宣伝や梱包、配送などの業務は、すべて2人でおこなっています。

突然バズって注文が殺到することがないように、フルーツ大福は決まった日だけに予約を取るなど、発送を分散させるようにしています。

今後はもっとネット販売に力を入れていきたいため、今はチーム化することが最大の課題です。今回<渋谷モディ>で参加したポップアップなどを見て、希望がある会社だな、と思ってもらえるのではないか、と期待しています。こういうイベントをきっかけで、お店のことを知ってもらって、「老舗なのにベンチャーっぽい!」みたいな感じで、入社してくれる方がいるといいな、と。

 

ーー榊さんは、TwitterやInstagramなど、SNSでの活動を活発におこなっている印象ですが、とくにこだわっていることなどありますか?

Twitterは、つい3ヶ月前くらいからちゃんと使いはじめました。

使いはじめは、もともとよく使っていたInstagramのアカウントとのつながりや、クラブハウスでのつながりで、900人くらいフォロワーがいました。その後、地道に発信を続けているなかで、いつの間にかどんどん増えて、今ではありがたいことに、7,000人を超える方にフォローしていただいています。

 

人生が変わった「SHIBUYA BASE」での初ポップアップ

ーー「SHIBUYA BASE」に出店しよう、と思ったきっかけはなんですか?

もともと、ポップアップを開催したいとは思っていましたが、「まだ実力が……」「失敗したら……」と考えていて、なかなか一歩を踏み出せないでいました。そんなときに、<渋谷モディ>に「SHIBUYA BASE」がリニューアルオープンした、という話を知って、やりたいと思っているタイミングで知ったこともあり、「これは運命だ!」と思い、思い切って申し込みました。

 

ーー出店してみて、いかがでしたか?

「東京でもお店を出してください」と言ってくださるお客様や、知り合いで応援してくださる方が多く、出店していた7日間で、350人ほどが来店してくださいました。

売上目標を高く設定していたので、最初は思ったように売上が伸びず苦戦していましたが、徹夜で店頭のポップを作り直したり、通りかかったお客様を呼び込んだり、応援してくださる方々がSNSを見て拡散してくださったり、実際に足を運んでくださったりして、なんとか目標を達成することができました。

今回の出店で、反省点もありましたが、今回をきっかけにお店のことを知ってくださった方や、地方からわざわざ来てくださった方がいたり、「渋谷に地元のお菓子屋さんがあるなんて!」とよころんでくださるお客様がいたりと、私たちにとってもお客様にとってもうれしいことが、たくさんありました。

ふだんのネット販売だけだとわかりませんでしたが、お客様がこんな思いでこんなに応援してくれているんだ、ということを感じて、「すべてに感謝だなあ」とあらためて思いました。今回、実際にコミュニケーションを取ってみて、「この方たちを裏切らないようなお菓子を作らなきゃ」と、あらためて気が引き締まりましたね。

ーー出店をとおして、なにか変化などはありましたか?

これまでは、3店舗すべての売上が悪い状態からはじまり、それを立て直すことで精一杯で、ほかのことを考える余裕もなかったのですが、ポップアップの後、何件か取材のお話をいただいたり、海外への卸販売のお誘いがあったりと、これを機に人生が変わったように感じています。不安を乗り越え出店して、ほんとうによかったです。

 

クラウドファンディングへの挑戦、新商品の開発

ーー今後の目標や計画はありますか?

2021年の12月ごろからクラウドファンディングをはじめて、そこで新商品を開発、発売する予定です。

今は「溶けないアイス 葛きゃんでぃ」がメイン商品ですが、アイスの特性上、季節によって売上にムラがあるので、今後販売予定の新商品が広がっていったらうれしいです。

ゆくゆくは、現在の実店舗を減らして、代わりに都内に1店舗開きたいですね。ポップアップについても、時期を見てまた開催したいですね。

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