博物館や美術館、画廊を鑑賞、観覧したあとに思わず寄りたくなる、ミュージアムショップやグッズショップ。
じつは、現地だけではなく、ネットショップでも購入することができるんです。
BASE Uでは「ネットショップで触れる 文化の秋」と題し、BASEでネットショップを運営いただいている博物館や美術館、画廊へインタビューをおこないました。
今回、インタビューしたのは、ひらがな一文字の社名が特徴的な <株式会社 と>の丸山 晶崇さん。
<museum shop T>にて、おすすめの書籍を持つ丸山さん
<株式会社 と>では、千葉市美術館のミュージアムショップ<BATICA>の運営をおこなっています。
そして、東京都国立市で、「地域の文化と本のあるお店」をテーマしたショップ<museum shop T>を運営されています。
ともに、BASEにてネットショップを開設いただいています。
目次
お客さんとの「交流の場」としてのミュージアムショップ
ーー運営されている<BATICA> <museum shop T>について教えてください。
<BATICA>は、千葉市美術館のミュージアムショップです。
千葉市美術館ミュージアムショップ<BATICA>の内観
美術館のリニューアルに合わせて、2020年7月にオープンしました。
ショップでは、展覧会に合わせた、アート関連の書籍やグッズ、また、千葉ゆかりの作家やメーカーの商品もセレクト・販売をおこなっています。
千葉市美術館オリジナル商品のデザイン・開発にも携わっています。
もう1つの<museum shop T>は、2017年の11月に国立市でオープンしたショップです。
<museum shop T>の内観
こちらは、ギャラリーと書籍や作品、雑貨をあつかうショップを併設しています。
ギャラリーでは、月に1~2度、作家やアーティストの個展を開いています。
ーー<BATICA>がオープンした2020年7月は、はじめての緊急事態宣言が終わったくらいのタイミングですね。
そのこともあって、当初の構想から実現できていない部分もあります。
ショップは、美術館の1階と7階の2ヶ所に併設予定でした。7階のスペースでは、ワークショップなどお客さんに参加いただいて、交流を図る企画も考えていました。
しかしながら、コロナ禍で、換気の問題や人が集まりにくい状況は現在も続いているため、1階のショップのみで営業をおこなっています。
スペースや人数など、さまざま制限があるなかですが、できることをやっていっている感じですね。
最近だと、人数制限をしながらではありますが、千葉市美術館主催の陶器市に、取り扱う作家さんのご紹介など、協力しています。
千葉で活躍する作家さんだけでなく、弊社から紹介した淡路島・沖縄など、さまざまな地域の作家さんに参加していただきました。
じょじょにではありますが、美術館にいらしたお客さんとの交流も、深めていければと考えています。
「地元がいっしょ」からはじまる、出会いのきっかけの場
ーー制限のない状態でのイベントや催しが、いまから楽しみですね。
2つのショップに共通する特徴についても、お聞かせください。
<BATICA>では、美術館の所在地である「千葉」にゆかりのある作家をセレクトしています。
また、<museum shop T>でも、ショップのある「多摩地域」で生活する方に、同じ地域に暮らしている・出身の作家や作られる作品を知ってもらうこと、そこからはじまる「つながり」のきっかけを作っています。
運営されている2つのショップで、「地域性」をキーワードにされていますが、その理由について教えてください。
「同じ地域に住んでいる」「地域とゆかりがある」というと、それだけで興味をもったり、応援したくなったりしますよね?
2つのショップで、地元の作家を知るきっかけとなる場を目指しています。
<museum shop T>のギャラリースペース
<museum shop T>は、国立市、すなわち多摩地域にあります。
じつは、多摩地域って作家やアーティストが多く住んでいる地域なんです。
多摩地域には、武蔵野美術大学や東京造形大学など、美術系の大学も多く所在しています。そうした大学出身の方が、なじみのあるこの地域に住み続けることが多いようです。
また、作品制作には、やはり広いスペースが必要になります。都内より家賃が安いので、多摩地域でアトリエを構える方も、結構多くいらっしゃいます。
ただ、多摩地域には、作品を発表できる場所が少ない。
やっぱり、都内の美術館やギャラリーで発表することが多いようで。
都心で働いて、寝るためだけに帰るーーそんな「ベットタウン」のようなことが、作家にも起こっています。
それもいいんですが、せっかくなら、地元である多摩地域で、作品を展示・販売や仕事もしてほしくて。
同じ地域の方がその作家や作品を知るきっかけがあることで、そこから、作品の購入につながったり、地元企業との仕事につながったり……。
地域に密着することで、そうしたコラボレーションが起きやすい、と考えています。
地域を核にした、芸術や文化の「生態系」が、生まれることを目指しています。
9月中に開催されていた、作家・unpis氏の「不明なオブジェクト」で展示された作品群
素材で「あそび」を取り入れた、自由な発想から生まれるミュージアムグッズ
ーー地域にゆかりがあると、作家さんや作品への愛着も沸きそうですね!
次に、商品について教えてください。
<BATICA>では、千葉市美術館のオリジナルグッズも手がけていらっしゃいます。
作品をミュージアムグッズとして、商品に落とし込むさいに、気を付けていることはありますか?
作品の持つ雰囲気やよさを損なわないようにしつつ、「あそび」を入れることですね。
たとえば、歌川国利「しん板 ねこの世界」の、猫のピンバッチです。
千葉市美術館所蔵の「しん板 ねこの世界」に描かれた、猫をモチーフにしたピンバッジ
この作品はもともと、版画の作品です。それを、金属のピンバッジへと素材を変えて表現しています。
作品の猫の絶妙な表情は再現しつつ、ピンバッジにすることで、金属素材の凹凸を楽しめるようになっています。
作品を生かしつつ素材の特性を生かした、グッズならではの楽しみ方を、商品開発のさいには、考えるようにしています。
美術館そのものも、グッズに
ーーグッズにすることで、鑑賞とは違った楽しみ方が広がるんですね。
美術品以外にも、千葉市美術館の「さや堂ホール」のタイルをモチーフにした商品も手がけられています。
さや堂ホールのタイルをモチーフにしたメモパッド
こちらも、人気の商品です。
モチーフとなっている、千葉市美術館の1階にある「さや堂ホール」は、旧川崎銀行千葉支店を保存したものです。
そこで使われているタイルが、かわいくて。
展覧会やコレクション作品だと、見られないタイミングがありますよね?
でも、美術館そのものである「さや堂ホール」は、基本的にいつでも見ることができます。
なので、いつお越しいただいても、美術館に来たお土産や鑑賞した思い出としてお買い上げいただける。
そうした部分でも、人気のある商品となっています。
ーー美術館そのものを楽しめるグッズがあることで、来館した思い出にもなりそうです。
最後に、今後の展望について、教えてください。
今後とも<BATICA><museum shop T>が、地域の方にとって文化や芸術と出会うきっかけの場になるよう、努めていきたいです。
また、<museum shop T>のネットショップでは、本を買いたくなるような品揃えや、レコメンドを積極的におこなっていきたいです。
ぬいぐるみ作家・片岡メリヤスの「メリヤスクラブ カタログ」。<museum shop T>では、こうしたオリジナルの書籍も手がけている
とくにネットショップだと、立ち読みができないので、実際に手に取れない部分を、ブログや商品紹介で補いつつ、売り上げにつなげていきたいです。
インタビューを終えて
千葉市美術館のミュージアムショップ<BATICA>、そしてギャラリー兼ショップの<museum shop T>を運営する丸山さん。
その2つのショップでは、地域の方とその土地にゆかりのある作家、アーティストが交じり合う、文化的な「生態系」が生まれる場を目指した取り組みをされています。
作家の独創性や作品のよさだけでなく、地域という自分との共通点があることで、よりいっそう応援したくなるーーそうした素敵な相乗効果を、実店舗・ネットショップで生み出しています。
ショップ情報
ショップ:BATICA / museum shop T
会社ホームページ:株式会社 と
Twitter:@BATICA_CHIBA / @museumshop_T
Instagram:@batica_chiba / @t_museumshop
Facebook:BATICA / museum shop T