名前つきで小物やバッグに刺繍された犬や猫。まるで本物のようで、愛らしい表情が魅力のペット刺繍です。
渡辺志保さんは、オーダーメイドのペット刺繍入りグッズ専門店「Little ones * リトルワンズ *」を自宅で営んでいます。若くしてがんと闘病しながら、ペットと暮らす人を幸せにするブランドを立ち上げ、多くのファンから愛されてきました。
開業当初は、家庭科の授業で習ったとおりの手順で中古の家庭用ミシンを使い、朝から晩まで働いていたという渡辺さん。ペット刺繍ブランドが軌道に乗るまでの道のりについて、お話をうかがいました。

渡辺志保さん
ペット刺繍専門店「Little ones * リトルワンズ *」オーナー。営業事務職やパート勤務を経て、乳がんへの罹患をきっかけに自宅でハンドメイド開業。「うちの子のベスト角度」から、世界でひとつのペット刺繍グッズを制作・販売中。
ショップ名:Little ones * リトルワンズ *
取扱商品:ペット刺繍入りポーチやバッグなど
運営体制:1人
在宅なのにオーバーワーク。薄利多売から抜け出すまで

病気になったのをきっかけに、好きだった仕事を退職せざるを得ませんでした。乳がんだったんです。
――ご苦労されたんですね。どんなお仕事をされていたのか、経歴をお伺いできますか。
最初は保険の代理店で営業事務をやっていました。結婚を経て転職後、病院の受付や事務職もした後、子どもができたのでパートや派遣で子育て中心の働き方に。
その後乳がんで療養のために仕事を辞めましたが、30代だったので仕事をしないわけにもいかず。子育てしながら自宅でハンドメイド収入を得る働き方がテレビで紹介されていたのを見て、在宅で仕事をはじめました。
既製品の生地を買って仕立てるくらいは誰にでもできると思い、刺繍サービスを行うことにしました。私の商品を買ってもらうためには理由が必要だと考えたんです。

――売れ行きなど、初めてのハンドメイド販売の調子はどうでしたか?
学校で使うグッズを取り扱っており、そこそこ売れたんです。入園・入学を控えたシーズンって、卒園記念品でハンカチを何十枚も用意したりするじゃないですか。月の売上が30万円ほどに上ることもあったんですよ。
ただ、ハンカチ1枚の単価はとても安いので、30万円分つくるには、朝から晩まで働く必要がありました。
身体を休めることを理由に家での仕事を選んだのに、結局外で働くのと同じように身体を酷使する働き方になってしまいました。

――その後、過労の状態からどのように抜け出したのですか?
現状ではまずいと思い、コンサルティングサービスを利用しました。結果、思い入れのない低単価商品をたくさん作るのではなく、自分が心から思いを込められる商品を高単価で売る方向に舵を切ったんです。
低単価商品を量産していたときは、自分が可愛いと思うものをただ作って、押しつけみたいな感じで売っていました。何のためにこのブランドが存在して、誰を幸せにするためにこの活動をしているかなんて、考えてもいなかったんです。
そのころには「フォト刺繍」商品の製作も少し行っていて、友達から依頼を受けて製作していたんですね。ただ、薄利多売商品の売上を捨ててまで、売れるかわからないフォト刺繍に振り切る踏ん切りがなかなかつかない。だいぶグズグズしました。
しかし次第に、「ペットを家族のように愛している人を笑顔にしたい」という気持ちが大きくなってきたんです。私自身も猫や犬を飼っていたので、気持ちがよくわかります。身体に負担のかかる働き方を続けていくのは無理だと思い始めたのもあり、高単価の「フォト刺繍」商品づくりに完全に切り替える決意をしました。
「原価の3倍」相場は無視!“うちの子”だけの特別感で価格アップへ

――実際、高単価へと切り替えていくのは大変だったんじゃないですか。
値付けについて調べると、原価の3倍をベースに考えるとか、基準が示されていますよね。でも、相場どおりじゃダメなんだなというのを学んだというか。どうすれば単価を上げられるかを考えるようにしたんです。
受注生産で「うちの子」だけの特別感を作っていこう、というのが答えでした。
最初の2年半は比較的低単価で販売して、少しずつ認知度を高め、リピート購入していただきながら実績を作っていったんです。商品のクオリティが徐々に上がっている自信もあったので、「次回から値上げします」と告知をして値上げするというのを何度か行いました。
値上げする際には、最後に現在の価格でオーダーできる機会を必ず設け、お客様に誠実に対応することを意識しました。
――購入されるお客様の反応はいかがでしたか?
「Little ones * リトルワンズ *」のネットショップは2か月に一度オープンしていますが、毎回購入者の5~6割、多い時は7割の方がリピート購入してくださいます。
「糸の使い方や刺繍のニュアンスが好き」「『Little ones * リトルワンズ *』のペット刺繍はほかのどこよりもリアル」と言ってくださることも。
値段相応の価値を感じていただけているんじゃないでしょうか。ご支持いただけてありがたいです。
ネットショップだけど作り手が見える。SNS発信で信頼を構築

――オープンするネットショップの運用で、気を付けていることはありますか?
私は「作り手が見えるものづくり」をとても大切にしていて。Instagramで商品の制作過程を発信して、お客様に安心していただくようにしていますね。
ネットショップだとどうしても、商品の実物も作り手の顔も見えないじゃないですか。「誰が作っているかわからなくて不安」「そもそもちゃんと届くのかな」って不安に思う人は多いと思うんです。
Instagramで制作途中の様子をお見せしたり、リピーターのお客様とコミュニケーションをとったりして、「ここなら安心して買える」と思っていただけるよう努力しています。
――ちなみに、ネットショップ作成サービス『BASE』を知ったきっかけは?
ネットショップについて調べていた時期があり、BASEのことも知りました。BASE以外のサービスも登録して操作を試しましたが、一番かんたんにショップを整えられたのはBASEだったので、結果的にBASEに落ち着いています。
会計ソフトに売上データなどを連携できる機能など、事務面でも役立つ機能が充実しているので、今はもうBASE以外は考えられないですね。
――新規のお客様を増やすために行っていることはありますか。
Instagramの広告を活用しています。広告にお金をかけられるに越したことはないのですが、なかなかそうもいきませんよね。最初は1日数百円の少額から投資して、それを2週間ぐらい回して反応の変化を見ていました。だんだん、いくら投資するとどのくらい数字に影響するか、感覚がつかめてきたんです。
今では、「この商品を売りたい」というタイミングで広告への投資額を増やし、新しいお客様に知ってもらう機会を作っています。
生きているだけで素晴らしいから、今後も人を幸せに

――これからネットショップやブランドを始めたい人へ、アドバイスはありますか。
やりたいと思うことがあるなら、「やっちゃえ」って。やるって決めたら、まずは明確な目標を立てて、そこに向けた自分の行動を決めてみてください。大きな目標でも、小さく分割して目の前の行動を一つひとつ積み重ねれば辿り着けるはず。心身ともに負担にならないように、やめずに続けることが大切です。
――今後、ブランドを続けていくうえでの意気込みをお願いします。
Little ones * リトルワンズ *のビジョンは、ペットロスをなくすこと。そのために、一人でも多くのお客様にペットの刺繍を届けたいです。
30代で乳がんになり、「もしかしたら長く生きられないかも」と思った経験があるので、「いま元気に生きているだけでラッキー」って思ってるんです。
私に出会ったからには幸せになってほしい。今後も、自分の近くにいる人たちやお客様に幸せでいてもらえるように、私にできることをしたいなと思います。
編集後記
30代の子育て中に乳がんとの闘病を経験した渡辺さん。手探りで始めたハンドメイド事業は、過労で苦しんだ時代を経て、付加価値の高い高単価商材へと成長しました。
BASEは渡辺さんのように、ビジョンや想いをこめてものづくりをする人を応援しています。
BASEは、ショップオーナーが自分の想いやものづくりに向き合う時間を増やすため、会計システムとの連携などショップ運営に役立つ機能をたくさん備えています。初期費用無料で開設できるので、ぜひ一度使って試してみてください。
本記事は、BASE公式YouTubeチャンネル「ECのカクシゴト」の動画をもとに記事化しています。
動画でご覧になりたいかたは、ぜひ「【1日密着】ハンドメイド作家の悩み働きすぎ問題!「単価アップ×ファン増加」を両立させる方法とは?」をチェックしてみてください。