「ネットからリアルへ」では、「BASE」初の常設店舗「SHIBUYA BASE」の出店オーナーズにその魅力をおうかがいし、ネットショップがリアルの場へと挑戦する意義をお伝えしていきます。
第 1回は、アパレルショップ<CIEL’AIR(シエルエアー)>を運営する藤城 榮里子さん@cielair 。
着丈にこだわり、洗練されたオリジナルデザインのアイテムを多く発信し続けています。
そんな藤城さんに、ブランド立ち上げから「SHIBUYA BASE」に出店するにいたった経緯、実際に出店してみた所感をうかがいました。
お客さまに寄り添い、こだわりのデザインと向き合う
——ブランドのコンセプトを教えてください
身長が高い方向けのブランドとして、着丈にこだわり長身を活かしたスタイルを演出できるデザインを発信しています。スタイリッシュなハイウエストデザインが特徴です。
私たちはクリエイターという立場から「自分たちのファッションはこれだ!」と主張するタイプではありません。身長の高い人に寄り添い、お客様の視点でデザインを研究しています。
外国の方は、日本人と比べて比較的長身な方が多く、外国の方と日本人の体型は異なります。日本人の長身の方が美しく見えるデザインを私たちは日々探求しています。
スタイルが良く見えるか、脚は綺麗に見えるか、見た目だけでなく着心地がよく動きやすいか、素材感はどうかなど、さまざまな視点で商品開発にこだわりを持っています。
——ブランド立ち上げの経緯を教えてください
もともと、私はフリーでスタイリストとライターをしていました。そのころから、「インフルエンサー」という存在に着目し、モデルと企画とPRを委託すれば売上が伸びると考えていたのですが、実現まではいたりませんでした。
そんなとき、現在の会社の社長と出会いました。
社長は、販売戦略において私と同じ考え方を持っていたので、いっしょにブランドを立ち上げたんです。
——実店舗ではなくオンラインで展開した理由はなんですか?
このご時世ですから、実店舗をオープンさせることにより、さまざまな諸経費がかかることなどのリスクを考えると、まずはネットショップで様子を見ようというのが端的な理由です。
いつかは直営店を1, 2店舗ほど展開したいと思ってはいます。
——BASEを選んだ理由はなんですか?
モールのなかではなく、自社ECでブランド訴求を行うにあたり、かんたんに始められて、しかも初期費用が無料だから選びました。
集客面でいうとInstagramとの連携がかんたんで、全体的に専門的な知識がなくても扱いやすく、運用がしやすいところです。
実際に運用してみて、テンプレートを利用するのに扱い方が分からず困ってしまったことはありませんし、ストレスもなく助かっています。
おかげで外部サービスに頼ることなく、自分たちだけで回せています。
——ブランドを立ち上げてからまず何をしましたか?
2, 3年分の売り上げ目標はおおまかに設定しました。
しかし、こまかく事業計画書のようなものを作成したというわけではなかったので、状況を見ながら軌道修正して臨機応変に目標も微調整しています。
今のところ、おおまかな目標は達成できており、一歩ずつ前進しています。
「SHIBUYA BASE」への挑戦
——「SHIBUYA BASE」に出店しようと思ったキッカケは何ですか?
今まで数回ほど展示会はおこなっていたんですが、<CIEL’AIR>をご存知ない方が私たちのブランドをご覧になったとき、どのようなリアクションが見られるのかは未知数でしたので、出店してみようと思いました。
SHIBUYA BASEは什器や備品がそろっているので、挑戦しやすかったですね。
渋谷は流行の最先端をいく街であり、毎日大勢の人が行き交う場所でもあるので、申し分なかったです。
——出店するにあたり大変だったことはありますか?
はじめてのことなのでなかなか具体的なイメージがわかず、苦労しました。作りたい世界観のイメージを固めて、売り場のレイアウトを考えて、といった作業が思った以上に難しく、慣れない作業ではありましたが、BASEスタッフさんが親身になってサポートしてくれたので助かりました。
——出店するにあたって何を目標にしましたか?
売上目標金額はもちろん、他にもさまざまな目標を定めて臨みました。
いちばんの目標は、ブランドの認知度を上げることでした。そういう意味で、イベントのような感覚でブランドを盛り上げるという効果があり、よかったです。
——その目標は達成できましたか?
無事、目標売上を達成できました。
認知度はというと、Instagramでフォロワーが増えたかどうかカウントしたところ、出店したことによりフォロワー数も増えた上に、インスタグラマーさんが遊びに来てくれてInstagramに投稿してくれることにより拡散され、ブランド認知度の向上を実感できました。
このように認知度が上がると、当然ブランドコンセプトである「長身の方向け」という枠を超え、長身ではない方、小柄な方も興味を持ってくださるようになります。
そこで新たな課題が見えてくるという気付きもありました。女性が抱える悩み、コンプレックスは様々です。それぞれの女性がどのような悩みを持っているか、いかにそれらに寄り添えるか、このあたりにフォーカスして今後のブランドの方向性を考えていこうと思いました。
——お客様の反応はいかがでしたか?
お客様が「こんなお洋服がほしかったの!」とパッと表情を輝かせて喜ぶ姿を見て、うれしさを感じ、オンラインで販売していくさいにも参考にできるところがたくさんあると気付くことができました。
その場で数点お買い求めいただき、私たちのブランドコンセプトの方向性をあらためて確認できたことは今後のブランド展開の後押しとなりました。
お客様が感動してくださるポイントは、やはり長身を活かすことのできるデザインでした。こういった部分について、商品を直接見て、手に取り実感していただかなくても、オンラインショップでは写真で訴求できるように工夫する必要があると改めて痛感しました。
ただ、小柄な方でも興味をもってお立ち寄りくださった方がいらしたので、今後は長身の方のみならず、小柄な方でもハイウエストファッションを楽しんでいただけるよう、さらなる研究、開発を進めていこうと前向きな気持ちになれました。
——出店後に何か変化はありましたか?
実店舗での販売をより具体的にイメージできました。
また、反省点も多々あり、次にするべきことが明確になりました。
レイアウトに関していえば、限られたスペースで効果的におこなわなければならないため、省スペース化のためにもハンガーなどのアイテムを活用するべきだった、と反省しました。
また、商品ラインナップもよく考えて選別する必要があるとわかってきました。ただ出せばよいというわけではなく、お客様の購買欲を引き出す絶妙な商品ラインナップを考えたいと思います。
加えて在庫管理など、運営に関しても気付きがありました。リアル店舗では在庫がないとどうしようもないので、在庫管理が大変でした。このあたりも、いかに効率よく管理ができるかという点で研究の余地がありそうです。
たとえば、受注会形式での出店を取り入れる必要もあるな、と考えるきっかけにもなりました。
今後は新宿、それから大阪や福岡など、日本各地さまざまな場所でのリアル販売を視野に入れて展開していきたいと思います。
——今後のブランドの目標を教えてください
お客様と、その時代のニーズに寄り添ったブランドとして成長していきたいです。
たとえばいまはリユースが前提となった時代ですから、ブランド価値を高めることによって中古市場でもきちんと評価されるブランドにしてゆきたい。だからこそ、すこしくらい原価率が高くなったとしても、セールなしでお客様がご満足いただける品質と価格を提示できて、かつ100%消化できる生産管理ができるようになりたい、そう考えています。
また、いつかは実店舗を持ち、お客様と触れ合う空間を作り、そこでしか得られない情報をインプットしていきたいです。
そして、すべての学びをネットショップにも活かし、直接お顔の見えないお客様も大切にできるブランドを目指します。
——「SHIBUYA BASE」への出店を検討しているオーナーさんへ一言お願いします
ポップアップショップに挑戦することはけっして容易なことではありません。
いざ出店するとなると、店舗レイアウトや在庫管理、接客など考えなければならないことが多くありました。
しかし「SHIBUYA BASE」なら、そういった慣れないことも相談にのっていただけるうえに、面倒な手続きもないので、安心して出店することができました。
ひとりで出店するのは大変ですが、BASEの皆様が全力でサポートしてくださるので、チャレンジしたいけれど不安……という方は、まずはとにかく一歩踏み出してみてください。何にも代えられない経験が得られると思います。