おうち時間が増え、食品や雑貨など生活に関わるさまざまなものをネットで買う人が増えています。
店舗の売上が落ち込み、ECへの参入を考えている小売店も多いと思いますが、ネックになるのが「店舗とECを両方運営することへの不安」ではないでしょうか?
雑貨店<LAND>も、店舗を運営しながらECにも挑戦したものの、当初は伸び悩みました。
ところが、その後急激に売上を伸ばし、今ではECが店舗の売上の3倍にもなっています。その取り組みの内容について、代表の仲山彈さんにお聞きしました。
<LAND>とは
東京、国分寺にある個人雑貨店。国内外から仕入れたこだわりの生活雑貨や服、インテリア、オリジナル商品などを販売している。Instagramのフォロワーは4万2千人(2020年8月時点)。
・運営会社 : 株式会社LAND(https://land201.thebase.in/)
・創業 :2018年
・従業員数 :3人(うち EC担当:1人)
目次
初期費用ゼロ、「売れたらラッキー」と気軽にはじめた「BASE」
ー駅からすぐの、いい立地にお店があるんですね。いつごろオープンされたのですか?
オープンは2018年の4月です。
もともと、吉祥寺の雑貨店で5年ほど働いていたのですが、そこが閉店してしまったため、照明メーカーに転職して、そこでも5年ほど勤めたあと、<LAND>を開きました。
おもにインテリア雑貨を扱っていて、仕入れは国内と海外で6:4くらいの割合ですね。
ーまだ開店してから2年ちょっと。しかも個人で経営されているんですね!
はい、純粋な個人店ですよ。「BASE」をはじめたのは、開店から2〜3ヶ月くらい経ったころです。
隣の店舗から「BASE」を紹介されて、とりあえずはじめてみたのがきっかけです。
それまでネットショップは「お金もかかるし、めんどくさそう」と思っていたのですが、話を聞いてみると「BASE」は初期費用ゼロで、失敗しても痛くないことがわかり、登録してみました。
すると、設定も商品のアップもかんたんだったので「これならできそうだ」と思い、「売れたらラッキー」ぐらいの軽い気持ちではじめましたね。
ー初期費用・ランニングコストがゼロだと挑戦しやすいですよね。実際、出品したらすぐ商品は売れたのですか?
それが、全然(笑)。最初に売れたのは1〜2ヶ月後。
ピンバッチが1個売れました。
そのときは「本当に注文がくるんだ!」と、とても嬉しかったのを覚えています。
当時はInstagramのフォロワーもすくなかったので、どこからサイトにたどりついたのか不思議で……。
その後、じょじょに商品数を増やして、すこしずつ売れるようになりましたが、それでも当時はまだ店舗の売上の方が大きかったですね。
インスタ広告で激変! 売上激増、フォロワー急伸
ーECの売上が伸びはじめたきっかけは何だったのでしょうか?
Instagramに広告を出しはじめたことですね。サイトへの流入が全然なかったので、対策として2019年の5月にはじめて出稿しました。
広告のノウハウはなく、広告効果もイマイチ信じていなかったのですが、インスタ広告は考えていたよりもかんたんにできたので、試しに出してみたんです。
そしたら、すぐに10万円分ぐらいの注文が来ました。
ーいきなり10万円分の注文ですか? それはびっくりしますね。
ほんとうにびっくりしました。でも、ほかにも注文が来て、その月だけでかなりの売上を達成しました。インスタのフォロワーも、一気に100人くらい増えたんです。
それで「広告を増やせば、もっと売れるかもしれない」と思い、広告を増やしていきました。
ー広告に挑戦するということは、インターネットにはおくわしいんですか?
いえ、PCはめちゃくちゃ苦手です。
「BASE」をはじめた当初は、画像のピクセルという言葉もわからなかったぐらい(笑)。
広告に関しては、「Facebookマーケティングエキスパート」というサービスを使って、定期的に専門家からアドバイスをもらっています。
ーサポートを使ってカバーされているんですね。PCが苦手ということですが、「BASE」は難しくありませんか?
「BASE」を使っていて、苦労した記憶はほとんどないですね。
日々の作業も、サイトの更新は新商品が入ってきたときと在庫調整くらいしかしないですし、日々の売上や月ごとの推移もスマホで見られますから。
インスタも、投稿するのは入荷情報くらいですし。
販売商品をすみわけることが、店舗とECの相乗効果を生む
ーあまり手は掛けていらっしゃらないんですね、意外です。最小限の作業で利益を生む、その秘訣は何でしょう?
特別なことはやっていませんが……Instagramの活用と出品商品の選定には気を使っていますね。
ーたしかに、Instagramのフォロワー4万人以上は、個人雑貨店としてはかなりの規模ですよね。「BASE」への流入も、Instagramがメインですか?
ほとんどInstagramですね。フォロワーもずっと増え続けています。
Instagramを見て店舗に来てくれるお客さんもいて、ネットの効果を実感しています。Instagram をはじめてから、お店の売上は伸びていますが、ECの伸びはもっと伸びていますね。
2019年末にはECが店舗の売上を逆転し、今はもうECが店舗の3倍くらい売り上げています。
ーーECが店舗の3倍! それはすごく夢がありますね。雑貨とECの相性がいいんでしょうか?
店舗とECでは売れるものが違うので、すみわけをすることで効率よく在庫を消化し、売上を作ることができます。
雑貨は商品数が多くて、店舗にある商品をすべてECに上げるのは手間がかかるので、当店でも単価が高いものを中心に出しています。
僕もやりはじめてからそれがわかりました。
店舗ではなかなか売れない商品も、ECに出すと意外に売れたりするので、ECがはじめての場合は、そこからはじめてみるのもいいと思います。
ースモールスタートで試しにやってみればいい、ということですね。ECでめちゃくちゃ売れた、という商品はありますか?
当店ではタイから輸入している陶器の雑貨を扱っているんですが、その一つが入荷したさいに「BASE」の予約販売機能を使いました。そうしたら、販売開始5分で70個が完売しましたね。
ーー5分で70個完売ですか?! 店舗だけだったら、まずあり得ないことですね……。企業秘密でなければ、ECでの商品選びや、売り方のポイントを教えてもらえますか?
ほかのオンラインショッピングやモールで出回っている商品は、値崩れしていることもあるので避けますね。
ニッチな商品は、店舗では限られた人にしか見ていただけないけれど、ECでは全国にいる好きな人に届けることができる。
あと、サイズの大きな商品はECに向いているけれど、ハンカチとか小さなものはECには出しません。
ーなるほど。店舗で売れにくいものでもECなら売れることを考えると、商品選定は重要ですね。出品時の工夫はありますか?
雑貨はメーカーが提供している写真を掲載することもできますが、なるべく自分で写真を撮って載せています。
売り場の一角に差し込む、朝の自然光で撮影していますね。
EC好調で在庫管理や発送に苦心も、改善・変化で対応
ーー店舗があるからこそ、その雰囲気を商品撮影に生かしているのですね! 店舗とECを両方やっていて、大変な面はありますか?
やっぱり、在庫管理ですかね。
当店では店舗とECの在庫をわけていないのですが、店舗にそれほど売上がなくても、管理はそれなりに大変です。仕事量も増えました。
最初は自分一人ですべてやっていたのですが、ECが伸びはじめてから手が回らなくなり、朝にはじめた出荷作業が夕方まで終わらないこともありました。
忙しすぎて、商品の発注すらできなくなったので、アルバイトを雇うようになりましたね。秋には、社員も一人入れる予定です。
ー発送作業は、店舗でされているんですか?
はい、梱包と発送はすべて店舗でやっています。オープン前や接客の合間に、作業して出荷しています。
ー雑貨を送るとなると、発送用の資材も必要ですね。
そうですね。当店の商品は割れ物が多いので、エアキャップはかなり使います。
最初は知り合いのメーカーに訊いて、安いところから仕入れていましたが、今は注文してからすぐ届く<アスクル>や<Amazon>で頼んでいます。
段ボールも、当初はキレイな段ボールを取っておいたりしていましたが、今はそれでは追いつかないので、購入していますね。
ー注文が増えてうれしい反面、お客様対応やサービス面でいろんな課題・改善が出てきますね。
はい、以前検品ミスがあり、予約発送していた200人のお客様全員に連絡を取って交換したこともありました。これはもう地獄でしたね(笑)。
それ以来、どれだけ商品の数が多くても、検品を徹底しています。クレームも防げますし、交換になったときの手間を考えたら、よっぽどいいですからね。
コロナ影響下でも売上拡大、これからの店舗とECの役割とは
ー苦労をしたぶん、ECの売り上げも大きく変化したのではないでしょうか?
ある程度の売上を見込めるようなった2018年12月をベースにすると、2019年5月はその1.5倍、2019年12月はその10倍と、急激に伸び続けています。
ーー急成長ですね!新型コロナウイルスの影響もあったのでしょうか?
店舗は2ヶ月閉めました。
じつはそのとき、海外にも広告を出そうと思って準備していたのですが、「そのぶんの広告費を全部使って、日本で告知をしよう」とすぐに切り替えてインスタ広告を増やしました。
その結果、ECの売上はかなり伸びて、2020年の5月度は今まででいちばんよくて、2019年12月の2倍以上の売り上げでした。
新型コロナウィルスの影響で、今まで店舗に足を運ぶことができていた都内のお客様からも注文をいただきましたね。
ー近隣に住むお客様でも、ECを利用する状況になっていたのですね。ただ、雑貨は商品の入れ替えサイクルも早いし、トレンドもあります。これからは、どのような展開を考えていますか?
近くに2店舗目をオープンする予定です。
現在のお店で人気がある陶器の商品をメインに扱い、ショールームのようにして、ECでの売上を狙うつもりです。
また、海外メーカーからご提案もいただいているので、めずらしいものがあれば取り扱っていきたいと思っています。
なかには利益率がよくないものもありますが、売れ筋商品があれば、合わせ買いをしてもらえますからね。そういった、市場にあまり出回っていないものを増やしていきたいですね。
ーコロナの影響で店舗営業がきびしくなるかと思いきや、新規出店をされるのですね!ECが伸び続けるのであれば固定費がかかる店舗はやめる、という選択にもなりそうですが……。
いえいえ、ECがどれだけ伸びても、店舗は閉めませんよ。
雑貨店はフラッと立ち寄って、空間の雰囲気をふくめて商品を見て買うことも楽しみの一つですから。
店舗があるからこそ、<LAND>の世界観を表現することができ、ECにつなげることができるんです。
実際に、ECで購入してくださったお客様が店舗に足を運んでくださることがあったり、逆に店舗で購入したお客様がECを利用することもあり、相乗効果が生まれています。
まとめ
ITや広告の知識もない中で、挑戦を続けることで今なお成長している<LAND>は、ライバルが多い雑貨の分野で、一定のファンを確保されました。
店舗とECの両立は難しいというイメージを持たれがちですが、案ずるより産むが易し、なのかもしれませんね。
そのはじめの一歩として、ゼロ円ではじめられる「BASE」の活用をぜひ考えてみてください。
2022年4月より、新料金体系「グロースプラン」が登場。
決済手数料2.9%+月額費用16,580円/月※という料金体系で、ショップの売上規模が大きくなっても使いやすいプランとなっています。くわしくはこちらをご確認ください。
※2024年1月16日より料金を改定しました。表記は、年払いで支払った場合のひと月当たりの料金。年払いでの総額は、198,960円/年。