近ごろよく耳にする「サステナブル」。
しかしながら、実際になにをすればいいのかわからない・ピンとこない方も多いのではないでしょうか。
BASE Uでは、環境に配慮した商品や、サステナブルな取り組みをされているショップオーナー様にインタビューをおこないました。
この記事を通して、サステナブルな取り組みを実践されているオーナーさんの想いを感じながら、自分の生活やネットショップ運営のなかでなにができるか、考えるきっかけになれば幸いです。
今回お話をうかがったのは、<Whole・Jiyū and lalala ホール・ジユウアンドラララ>の小川奈津子さん。
「おもたせパック」を手にする小川さん
ショップでは、保冷剤を再利用・有効活用できる、保冷袋「おもたせパック」をはじめ、生活を便利にする、エコなアイディア商品を販売しています。
商品開発のヒントは、ご友人や購入者から寄せられる「困りごと」と話す小川さん。アイディアが生まれたきっかけについて、うかがいました。
“買って帰りたい気持ちを大事にしたい” ーー想いからうまれた「おもたせパック」
ーー「おもたせパック」について、くわしく教えてください。
「おもたせパック」は、保冷剤を長持ちさせる“新しい保冷袋”として開発した商品です。
お店で冷凍・冷蔵の商品を購入すると、保冷剤がついてきますよね。でも、一般的な大きさの保冷剤をそのまま使うと、2時間ほどしか保冷効果がありません。
そんな保冷剤を「おもたせパック」に入れると、保冷剤が溶けにくくなり、保冷時間を5〜6時間、長く保つことができるんです。
「おもたせパック」や専用カバー
ーー商品を開発するきっかけはなんだったのでしょう?
きっかけは、「保冷剤の効果を、長持ちさせられないか?」というお客様からのお声でした。
5年前、銀座の食品販売店でパートをしていたんですが、そこで冷凍・冷蔵の食料品も販売していると、「保冷剤を入れられるだけください」というお客様がいらっしゃいました。
お話をうかがってみると、その方は遠方からいらっしゃっていて、お土産で冷蔵食品を買って帰りたい、とのことでした。
そのときは、お店の決まりで保冷剤は1個しかおつけすることができなかったので、そのようにお伝えすると、「じゃあ、買って帰れないわね……」と、そのお客様は商品を買うことをあきらめてしまわれたんです。
「これ、とても残念だな」と。
せっかく、商品をほしい人がいて、売りたい人もいるのに、「持って帰れない」という理由で機会が失われることが、とても残念で。
買って帰りたいと思ったその気持ちを大切にしてもらいたい、と感じました。
「なんとかならないのかな」と思ったのが最初でした。
そこから、日々の買い物のなかでも気軽に持ち運べる保冷袋を作ってみよう、と製作をはじめました。
試行錯誤を重ねて、二重層のアルミ袋の間に、断熱材として紙をはさんだ、現在の「おもたせパック」が完成しました。
「おもたせパック」の製袋作業をおこなう小川さん
ーー実際に、「おもたせパック」を使用した購入者様のお声はいかがでしょう?
とてもよろこばれています。
購入者の方で、ヨーロッパ旅行に「おもたせパック」を持っていかれた方がいて。
「おもたせパック」を使って、はじめて現地のバターを日本へ持ち帰ることができた、とお話をうかがいました。
商品開発の出発点だった、「買って帰りたい気持ち」をあきらめずに実現できたお話だったので、とてもうれしかったですね。
購入者の発想で広がった商品展開
ーー現在、「おもたせパック」は、さまざまなサイズで商品展開されていますね。
これも、お客様からの声がきっかけなんです。
商品を販売した当初は、食品の保冷の用途で考えていたんです。
ところが、いざ販売してみると、ご購入者様から「枕に敷いて、氷枕代わりに使っています」「炎天下に服のポケットに入れて、熱中症対策として使っています」と、想定とは違うアイディアで使ってくださる声をいただきました。
つまり、“家にある保冷剤を、再利用する”目的で買われる方が多かったんです。
自分にとってはまったくの予想外だったのですが、それであれば、それぞれの用途に合った大きさや素材で作ろう、と。といったわけで、「保冷剤を再利用できるエコな商品」として、いまの商品展開になりました。
これらの作業道具から、おもたせパックが生まれます
ーー保冷剤は、お店でもらっても捨ててしまうか、冷凍庫の肥しになることが多い気がします。
そうなんです。もったいないですよね。
将来的には、エコバッグみたいに、保冷剤も各自で持参するような、無駄のない形になればいいなあ、と思っています。
ーー「おもたせパック」は、カバーのセット販売もされています。
商品を買ったり、使ってもらうには、見た目も大事だと思っていて。
どうしてもアルミを使っているので、そのままだと「ギンギラ銀」なんですよね(笑)。
派手で使いづらい、というお声もいただいて。
であれば、ハンドメイドは得意なので、可愛い柄や手触りのいい布でカバーを作れば解決できる、とセット販売をしたのがはじまりです。
見た目をはじめとして、耐久性だったり、袋の口を閉じられるようにしたり、お客様の要望を取り入れて、どんどん改良しています。
「大人かわいい」デザインが人気だそう
「かゆいところに手が届く」商品を目指して
ーー「おもたせパック」のほかに、3Wayのエコバッグも展開されています。こちらはどのように生まれたのでしょうか?
こちらは、友人の悩みをヒントに生まれました。
2020年の7月にプラスチック製買い物袋が有料化されて、みなさんエコバッグを持つようになりましたよね。
話を聞いた友人も、エコバッグを使っていたんですが、大きさと持ち手の部分で、不便を感じていたそうです。
通常のエコバッグって、買い物袋のMサイズくらいで、たくさん買うときはいいんですが、コンビニなどで少量の買い物をするとき、どうしてもかさばってしまいますよね。
それに、お弁当のように、水平に袋へ入れたいとき、ビニール袋型のエコバッグだと、バランスが取りづらくて、かたむいてしまう。
また、エコバッグは手で持つ取っ手しかなくて、肩から斜め掛けできないものが多いです。
その友人は、自転車によく乗るので、「両手を空けたいのに、どうしてもエコバッグが邪魔になってしまう」と。
「それ、なんとかならないかなあ」と思って、製作したのが3Wayエコバッグです。
斜め掛けできる、3Wayのエコバッグ(意匠登録されています)
それぞれの用途に使えるように、取っ手を「通常のもの」「短め」「肩掛けできるような長め」の3つつけています。
ケーキやお弁当など、水平に保ちたいときや、荷物が少ないときは短めの取っ手を。肩掛けして両手を空けたいときは、長めの取っ手を使っていただけるようになっています。
ーー大きさを変えられるエコバッグはあまり売られていないように思います。
そこも、商品を作ったきっかけです。
売っているものを買って使う、となると、どうしても「ここ、もうちょっとこうなればいいのになあ」って思うことがあって。
友人や購入された方の声を生かして、「かゆいところに手が届く」商品を、これからも作っていきたいと思っています。
エコ商品のほかに、ハンドメイドアクセサリーも販売予定とのこと
インタビューを終えて
ご友人やご購入者の声や悩みごとに対して、「なんとかならないかなあ」の精神で商品開発をされている小川さん。
「だれかの役に立ちたい」「すこしでも生活を豊かにしたい」ーーそうした姿勢が、物作りや商品、またご本人のメッセージからひしひしと伝わってきました。
新しい商品や商品改良に思い悩んだら、小川さんのように、ご自身や周りの方の「困りごと」に目を向けてみるといいかもしれません。そこには、思わぬヒントが隠れているはずです。
ショップ情報
ショップ:WHOLE・JIYŪ AND LALALA ホール・ジユウアンドラララ
Instagram:@natsu_and_lalala