新しいことにチャレンジするとき、不安な気持ちから「絶対に成功する方法」を探してしまうものです。
たとえば、ECを始めようとする時には「確実に売れる商品か知りたい」というのが正直な気持ちなのではないでしょうか。
しかし、誰がやっても必ず成功する方法は存在しないのが現実です。
「最初から成功する」ことに期待するのではなく、「試行錯誤を繰り返して成功にたどり着く」という意識を持っておくことが大切なのかもしれません。
失敗から学び、改善を繰り返していくことで徐々に成功に近づいていく。
そんな成功体験を教えてくれたのが、ECもアパレル事業も未経験の中橋元基氏が中心となって立ち上げたアパレルブランド、<Surfrise(サーフライズ)>です。
多くのファンに支持されるブランドに成長した<Surfrise>は、なぜアパレル事業をはじめ、どのような経緯を経て成長してきたのでしょうか?
<Surfrise>の成長の秘訣を中橋氏にお訊きしました。
『Surf Style of Life』をテーマに、家族や友達とオシャレにサーフスタイルを楽しむファッション&ライフスタイルブランド。サーフ・リゾート系のファッションアイテムや、クリエイティブとクラフトマンシップを融合させたハンドメイドアイテムを取りそろえている。
ショップ名:<Surfrise>(https://www.surfrise.com/)
運営会社 :<株式会社ライズィー>
創業 :2016年
運営スタッフ数:4人
目次
モノを売る、お客様とつながる。そのおもしろさに惹かれて
―<Surfrise>をスタートしたのは、いつごろですか?
2016年の4月です。
10年ほど同じ会社で働いていた仲間と2人で、Web制作会社<ライズィー>※を立ち上げました。
そこで、「起業したからには、なにか新しいことをやりたいね」という話になり、EC販売を中心としたアパレル事業である<Surfrise>を始めました。当時、ECやアパレルは未経験でした。
―事業の一つとして、なぜ「アパレルEC」を選んだのかが気になります。
「リスクを抑えつつも、早期に売上を立てられるビジネス」という観点で、物販ジャンルにチャレンジしました。
当初はアパレル以外にも、雑貨やバッグ、アクセサリーなど、自分たちがいいと思うものから販売していましたが、そのなかでもアパレルやバッグの売れ行きがよかったため、メイン商品となっていきました。
それまで仕事の経験としてはWeb制作のみでしたが、フリマサイトなどで私物を販売した経験があったので、アパレル事業、そしてEC販売は始めやすかったですね。
それにフリマサイトを利用したとき、購入者と価格交渉したり、購入者から商品の感想をもらうなど、ダイレクトなコミュニケーションにおもしろさを感じたことも理由の一つです。
―個人のお客様と直接つながれるのはECの魅力ですよね。サーフ・リゾートをテーマに選んだのはなぜですか?
僕自身がサーフィンをするし、ビーチカルチャーやリゾートが大好きなので、「それにまつわることを事業に取り入れることができないかな」と考えていたからです。
興味がある分野だからこそマーケットのニーズを分析して商品を作ることができますし、自分が「いいな」と思うものを作って販売できるので、楽しんで取り組むことができるんです。
また、ターゲットユーザーを「サーファー&リゾートが好きな人」として広めにしていることもポイントです。
「サーファー」だけにするとユーザーが狭まってしまうため、多くの人が憧れを持っている「リゾート」を組み合わせて、幅広い層を狙いました。
低リスクで商材確保。3万円の仕入れからはじめ、オリジナル商品展開へ
―どのくらいの規模で運営をスタートしましたか?
本業であるWeb制作事業の利益を原資に、仕入れからはじめました。当時は月に3万円分を仕入れて、5万円の売上になるような規模からのスタートでした。
―会社の事業とはいえ、とてもコンパクトに運営していたんですね。仕入先はどうやって見つけたんですか?
ネット検索で仕入れサイトを見つけました。
でもスタートこそ「仕入れ商品」を中心にしながら「オリジナル商品」も販売するスタイルでしたが、オープン1ヶ月を過ぎたあたりからすべてをオリジナル商品に移行しています。
というのも、仕入れた商品は、ほかのECサイトやショッピングモールなどで同じものを売っていることが多いので、価格勝負になるし特徴が出しにくいんです。
また、自分のショップよりも安く販売しているところもあるので、むずかしいなと感じちゃって。
だから仕入れはやめて、オリジナル商品に移行していきました。
―ほかの人も仕入れサイトで同じ商品を仕入れている可能性は高いですし、差別化しにくいんですね。どうやってオリジナル商品を制作したんですか?
妻や友人、近所の人にお願いして、ハンドメンドでアイテムを作るところからはじめました。フリマで古着のジーンズなどを安く買ってきて、バッグやクラッチにリメイクしてみたり。
その後は、友人に教わって、オリジナルのアパレルウエアを制作するようになったんです。
現在はオリジナルデザインのウェアが中心になっています。
―オリジナル商品を販売するとなれば、在庫を持つ必要がありますよね?
そうなんです。
だから、リスクを減らすために製造支援先を工夫して、「小ロットでの生産」と「後払い」ができる取引先を選びました。
そのうえで、完売したり、予約販売で売れたりした分だけを発注するなどしてリスクヘッジしていったんです。
融資は受けず、Web制作事業の利益を運営資金にしていたこともあり、「リスクを負わないないこと」は大前提でした。その分、成長スピードは遅かったなと思います。
―アパレルECは未経験ということでしたが、運営の部分で不安はなかったですか?
なにもない状況からはじめましたが、フリマサイトを使った経験があったので、「商品が売れたら袋に入れて発送する」といった、基本的な流れは理解していました。
ただ、失敗したこともあります。
商品発送にもなるべくお金がかからないように、とにかく安い送料で送ろうとしたら、到着までに時間がかかる方法を選んでしまっていて、お客様からお叱りを受けたことも。
それ以降は最適な配送方法に変えていますし、やりながら運用を改善しています。
Webディレクターだからこそ「BASE」を選んだ理由
―「BASE」はかんたんなことが特徴的なサービス。一方、中橋さんはWeb制作の知識をもってらっしゃいますが、「BASE」を選んだ理由を教えてください。
Web制作の現場でさまざまなサービスを使ったことがあり、ECをはじめるにあたっても、複数のサービスを比較検討しました。
たしかに、「BASE」よりも機能が多いサービスはありますが、月額費用が無料で、売れた分だけしか手数料がかからない仕組みが魅力的だったため「BASE」を選びました。
はじめてのECで、売れるかどうかわからないのに、ランニングコストはかけられませんから。
スタートして間もないころは、アイテム数も10〜20前後だったので、手軽にはじめられることもよかったですね。
―実際に使ってみて、操作性や機能面での印象はどうでしたか?
ほかのサービスと比べても使いやすいなと感じました。
スマホで写真を撮って、そのまま商品を追加できるところなどとても便利です。また、最初に使える機能が絞られている部分にも魅力を感じました。
必要最低限の機能に「顧客管理App」や「Instagram販売App」など、自分たちが必要なAppsを追加しながらショップをアップデートできるのがいいなと。
古くさくならず、時代に合わせて新しい状態が保たれていくので、ずっと使うことができます。
―今はブランドの規模も大きくなりましたが、機能面などで不満を感じることはないですか?
現状の規模感でも「BASE」が使いやすいですね。
他社のECサービスでより機能が充実しているところもありますが、逆に多機能すぎて「そんなにいらない」って感じてしまう。今必要な機能がそろっている「BASE」で十分です。
二度のターニングポイントで「売れる手段」に気づいた
―ブランドや商品のPRはどんなことをされましたか?
<Instagram>です。
はじめたばかりのときは、なにをすればいいのかわからなかったので、「ターゲットに刺さりそうな内容」をタグに盛り込み、より多くのユーザーさんの目に留まるようにしました。
地道に続けていくことで、すこしずつフォロワーが増えていきましたね。
とはいえ、オープン以降、たまに買ってくださるお客様はいたものの、なかなか売上は伸びにくい状況でした。
―売上が伸びないなか、なにか転機はあったのでしょうか?
数十万人規模の集客のある大きなイベントに出店したことがきっかけです。
それまでECで売上の手応えを感じていませんでしたが、その日のために特別に商品を用意して参加したところ、多くの方が来店して買って頂けました。
そこで「集客さえがんばれば自分たちのブランドは買ってもらえる」という実感を得ました。
―リアルな場で「売れる実感」を得たんですね。
そうですね。その後、もう一つターニングポイントがあって。
2年目のときでしたね。あるインフルエンサーがうちの商品をたまたま紹介してくれたことがあり、その時に一気に買ってくれる方が増えました。
「インスタのフォロワーを増やすと、いいことがあるんだ」と気付き、どうやってフォロワーを増やすかを第一に考え、PRをお願いしたこともあります。
ー理解はしていても実際にその効果を実感できたことが大きな経験になったのですね。その他に、<Instagram>のフォロワーを増やすために工夫されたことはありますか?
フォロー&プレゼントキャンペーンを実施しました。
それによって、もともと2,000〜3,000人だったフォロワーが徐々に増え、すぐに1万人を超えるまでになったんです。
フォロワー数が1万人を超えたあたりからは「インスタの影響力」も感じはじめましたね。
とはいえ、もちろん途中で売り上げが伸び悩み、何度もやめたいと思ったことはありました。だけど、毎年すこしずつフォロワーを増やす取り組みをやっていくことで、前年の数字を超えるなどの成果につながりました。
―あきらめずに地道に積み重ねていくことが 大切なんですね。日々の投稿ではどんなところにこだわっていますか?
商品はできるだけ着用して撮るようにしていています。
着用イメージがわきやすくなりますし、背景紙や布・天板などに商品を置いて撮影する「置き画」を使う他ブランドと差別化にもつながります。
また、インスタのギャラリー(いちばん上に表示される9枚の写真の並び)に統一感を出すことで、よりおしゃれに見えるように工夫しています。
―写真のなかで商品を着ているのは、モデルさんですか?
いえブランドのスタート当初から、家族や友人にも登場してもらって、自分たちをモデルに商品撮影しているんです。
それに加えて、購入した商品と一緒におしゃれな写真を撮ってくださったお客様の投稿写真をリポストして、PRに活用させていただいています。
商品を発送するとき、納品書とあわせて「リポストしてもよろしければ、タグ付けしてください」というメッセージも同梱しているんです。
すると、「<Surfrise>のフォロワーに自分の投稿を見てもらえる」と喜んでタグ付けしてくれるお客様が結構いますね。
―お客様に喜んでもらえたうえで、PRにつなげられるのがいいですね。ほかには、どのように<Instagram>を活用していますか?
ストーリーの質問機能を使って、フォロワーさんに「クリスマスプレゼントはなにがほしい?」などの質問をしています。
それがお客様とのコミュニケーションになるし、その回答がキャンペーンや商品企画のヒントになるはずだと思って。
フォロワーさんに楽しんでもらおうと、2020年の夏には「Tシャツのデザインを募集するキャンペーン」を開催したところとても盛り上がりました。
さらに、キャンペーンの応募作品を僕たちが感想を言い合うインスタライブを実施したらとても盛り上がり、いい取り組みになりました。
やってみないとわからない、継続して実践することで成功へのヒントをつかむ
―これまでさまざまな苦労や工夫を重ねてこられていらっしゃいますが、<Surfrise>がここまで成長できた要因はどこにあると思いますか?
あきらめずに、試行錯誤してきたことだと、思います。
そもそもECをやってまったく売れないことはありません。1人や2人、必ず買ってくれる人はいる。
ただそれが危険なんです。
売れているからとなにも考えずにいると、その売り方が良い方法なのか間違った方法なのかに気づけず、改善できないまま走り続けることになってしまう。
その結果「なぜかあまり売れない……」と自信を失って、やめてしまう人が多いんじゃないでしょうか。
<Surfrise>では「ちょっとした変化」に気づいて改善策を考え、それを実際の行動につなげてきました。
おかげで売上を伸ばすことができ、ブランドに対する自信が生まれた。だからこそここまで続けられたのだと思うんです。
―行動することで「人気を得るヒント」をつかんで、それを実践していったんですね。
そうですね、だから「やったことがないからあきらめる」のは、もったいないと思っていて。
やることでできるようになるし、最初から成功する方法なんてないからです。
これからアパレル事業やECをはじめたい人から「成功する方法」をよく聞かれますが、それは自分で実際にやってみないとわからないこと。
僕たちだって、失敗や改善を繰り返したことで今がありますし、それは<Surfrise>にしか当てはまらないことだと思います。
ほとんどの人は、仕入れや製造などの「商品をそろえること」ばかり考えていますが、ECの肝はそこじゃなく、「どうやって、いくらで売るか」です。
ただそれは商品をそろえることよりもずっとむずかしいこと。それでも実際にやってみることで成功する方法が見えてくるんです。
―成功の近道なんてないということですね。最後に、これからアパレル事業やECを始める人にアドバイスをお願いします!
やりたいことがあるんだったらまずはやってみることです。そのかわり「失敗してもリカバリーできるような資金の使い方」をする必要があると思います。
そうしないと、大きく投資して失敗したときに後戻りできなくなるので、リスクヘッジしたうえで、やりたいことにチャレンジしましょう。
あとがき
未経験であることは、ときに大きな武器になります。既存の考えややり方にとらわれずに行動することで、思いもよらない成果に結びつくこともあるからです。
失敗や学びを経て改善していくなかで、自然と自分なりの“やり方”ができあがっていくのでしょう。
そう、特別な才能や技術がなくとも、チャレンジしていくからこそ、明るい未来が見えてくるのではないでしょうか。