お菓子を作るのが得意な人の中には、趣味として楽しむだけではなく、自分で作ったものを商品として販売してみたいと考える人もいるでしょう。実際に販売することは可能ではありますが、「菓子製造業」の営業許可を取得している施設を使用する必要があります。
この記事では、菓子製造許可についての概要や、菓子製造の許可を申請するために必要な要件、菓子製造許可申請の流れ、お菓子の販売方法や販売時の注意点などについて解説していきます。
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目次
菓子製造許可とは?
事業として食品を製造・販売するには、衛生面や安全面の観点からハードルが設けられています。そうしたハードルをクリアするために必要なのが、公的な許可です。まずは、お菓子を製造するために必要な許可について、解説していきます。
食品衛生法により営業許可の取得が必要な業種
食品衛生法では、食品に関する事業を始める際には営業許可を取得する必要があります。以下の32業種に該当する場合、営業許可を申請し、許可を得て初めて営業を行えます。
- 飲食店営業
- 調理の機能を有する自動販売機により食品を調理・販売する営業
- 食肉販売業
- 魚介類販売業
- 魚介類競り売り営業
- 集乳業
- 乳処理業
- 特別牛乳搾取処理業
- 食肉処理業
- 食品の放射線照射業
- 菓子製造業
- アイスクリーム類製造業
- 乳製品製造業
- 清涼飲料水製造業
- 食肉製品製造業
- 水産製品製造業
- 氷雪製造業
- 液卵製造業
- 食用油脂製造業
- みそまたはしょうゆ製造業
- 酒類製造業
- 豆腐製造業
- 納豆製造業
- 麺類製造業
- そうざい製造業
- 複合型そうざい製造業
- 冷凍食品製造業
- 複合型冷凍食品製造業
- 漬物製造業
- 密封包装食品製造業
- 食品の小分け業
- 添加物製造業
引用:厚生労働省「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」
事業としてお菓子を製造・販売するには許可が必要
上記の通り、「菓子製造業」は食品衛生法に基づく営業許可が必要です。そのため、手作りのお菓子を販売する場合は、保健所に申請して営業許可を得なければなりません。
なお、菓子製造業では、「生菓子、焼菓子、揚げ菓子、蒸し菓子、飴菓子、干菓子、チョコレート等、通例概念による菓子の完成品またはチューインガムを製造する営業」が許可の範囲とされています。たとえば、クッキーやおせんべい、ケーキ、プリンなどの一般的なお菓子は、菓子製造業許可の範囲内で販売することが可能です。
菓子製造許可の取得に必要な要件
菓子製造許可を取得するには、公的機関によって定められた基準などをクリアしなければなりません。そこでこちらでは、菓子製造許可の取得時に必要な要件について紹介します。
食品衛生責任者の設置
菓子製造業の許可を取得するには、実店舗などの施設ごとに1名以上の「食品衛生責任者」を配置することが義務付けられています。食品衛生責任者の資格は「食品衛生責任者養成講習」を受講し、テストに合格して取得することが可能です。
ただし、栄養士、調理師、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、船舶調理士、医師、歯科医師、獣医師、薬剤師などの有資格者は、講習会を受講することなく食品衛生責任者になれます。
基準を満たす施設と設備の整備
手作りの食品を販売する場合、基準を満たす設備を整備し、そこで加工や製造などの作業をしなければなりません。施設の基準は、改正食品衛生法施行規則により定められており、全施設で共通の基準(共通基準)、営業ごとに定められた基準(特定基準)、生食用食肉やふぐを取り扱う基準(特定基準)があります。
菓子製造許可申請の流れ
次に、菓子製造許許可を申請する手順について解説していきます。ただ、管轄の保健所によって詳細は異なるので、申請を行う場合は事前に保健所に相談してから進めましょう。
食品衛生責任者を取得
菓子製造許可の申請には、施設に1人以上の食品衛生責任者を配置することが義務付けられています。すでに許可の資格を持っている、もしくは講習の免除に該当する資格を有する人以外は、管轄の食品衛生協会で「食品衛生責任者養成講習会」の受講が必要です。
施設の整備について保健所に相談
許可を得るためには、食品の加工や製造を行う施設の条件を満たさなければなりません。ただ、基準を満たしているかどうかを判断するのは保健所です。自分で工事が必要かを判断するのではなく、管轄の保健所に施設の図面などを持参して施設の状態について相談・確認してください。
施設の改善
保健所から施設が不十分であるという判断をされたら、調理場などの改築や器具の補充などを行います。
保健所に申請に必要な書類を提出
申請に必要な書類を準備し、記入して保健所へ提出します。必要な書類は都道府県によって異なる場合があるので、あらかじめ確認しておきます。なお、東京都で申請を行う場合の申請書類は以下の通りです。
- 営業許可申請書
- 施設の構造及び設備を示す図面
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)
- 水質検査成績書(貯水槽使用水、井戸水使用の場合)
- 許可申請手数料
- 登記事項証明書(法人の場合のみ)
※引用:東京都福祉保健局・保健所「食品関係営業許可申請の手引き」
保健所による施設の検査
保健所により、施設が条件を満たしているか、申請した内容通りに整備されているかなどの検査が行われます。施設がすべての条件を満たしていない場合、許可は下りません。何かしら不備があれば、改善を行った上で後日再検査を受けることになります。
営業許可証の交付
検査を受け、施設が条件を満たしていると認定されたら、保健所から営業許可証が交付されます。その際、保健所には「営業許可書交付予定日のお知らせ」と認印を持参してください。実店舗で営業を行う場合、営業許可証と食品衛生責任者の名札を店内に掲示する必要があるので、しっかり見える場所に掲示します。
定期的な更新が必要
菓子製造業許可などの「食品営業許可」は、取得したらずっと有効というわけではありません。許可には有効期限があり、継続する場合には定期的に更新することが義務付けられています。有効期限は自治体によって差がありますが、多くの自治体で5~8年とされています。
お菓子の販売方法
営業許可を取得すれば、お菓子を工場などで製造し、販売できるようになります。自分で作ったお菓子を販売する方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
実店舗で販売する
実店舗を構えて、対面で販売する方法です。手作りしたお菓子の持ち帰り販売だけであれば、菓子製造業許可と食品衛生責任者の設置で対応が可能です。さらに店内で飲食できるイートインスペースを設ける場合には、菓子製造業許可と食品衛生責任者の設置に加えて「飲食店営業許可」も取得する必要があります。
ネットショップで販売する
製造したお菓子は、ネットショップなどでオンライン販売することもできます。ネット物販の場合、菓子製造業許可に加えて、食品衛生責任者を設置することで事業を始められます。ネットショップのタイプもさまざまで、モールに出品したり、ネットショップを作成して販売したりと手段は豊富です。
ネットショップ作成サービスの「BASE」には、「テイクアウトApp」という機能があります。「テイクアウトApp」は、実店舗を持っているショップオーナー向けに、テイクアウトの予約受付や決済を事前に受け付けるサービスです。テイクアウト商品の販売、注文管理を簡単に行えて、当日は商品を渡すだけなので顧客を待たせることもありません。
お菓子を販売する際の注意点
自作のお菓子を販売する際には、守らなければならないルールや規則がいくつかあります。違反すると罰金などが科せられる場合もあるため、自分でお菓子を作って販売することを検討している方は、以下の注意点をチェックしておきましょう。
自宅のキッチンはそのまま利用できない
お菓子を製造・販売するためには、基準を満たした製造設備が揃う施設を整備する必要があります。たとえば自宅で焼菓子を製造する場合、キッチンをそのまま使うことはできません。自宅のキッチンとお菓子を調理する空間が完全に区別されていたり、別途手洗い器やシンクを設けて食品の汚染を防いだりと、設備を整える必要があります。自宅を拠点にして営業許可を得るのであれば、リフォームでお菓子作り専用のキッチンを設けなどの対応が求められます。
商品にラベルを貼り付ける
食品を販売する場合、「食品表示法」によって商品に原材料や販売元などの内容を表示することが義務付けられています。お菓子も食品表示をする必要があり、容器包装に入れて商品を販売する場合、内容を記載した食品表示ラベルを用意して見やすい部分に貼り付けることになります。食品表示に記載する項目と内容は、以下の通りです。
項目 |
内容 |
名称 |
お菓子を分類した際の一般的な名称 |
原材料名 |
原材料、原料原産地情報、アレルギー情報 |
添加物 |
添加物(原材料の項目に記載する場合もある) |
内容量 |
入っている量を明記(重量や個数等) |
消費期限または賞味期限 |
消費期限もしくは賞味期限の年月日 |
保存方法 |
消費期限・賞味期限までの保存方法 |
製造者 |
表示に責任を持つ業者の氏名 |
製造所 |
最終的に食品の衛生状態を変化させた場所 |
栄養成分情報 |
どの栄養成分がどれくらい含まれているか |
なお、義務表示の特例として、「容器包装に入れずに消費者に販売する場合」と「設備を設けて飲食をさせる施設で、食品を提供する場合」には、食品表示を省略できます。
無許可での製造・販売は法律違反
菓子製造業許可を取得せずに製造や販売を行うと「無許可営業」となりますが、これは食品衛生法違反です。この場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられる恐れがあります。また、許可の有効期間内に更新をしなかった場合にも、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の可能性があります。営業停止や行政処分の対象とならないよう、お菓子の製造や販売を行う際には必ず許可を取ることを忘れてはなりません。
まとめ
お菓子の製造を始める場合には、商品によっては保健所からの許可と食品衛生責任者の設置という条件をクリアする必要があります。食品ということで細心の注意を図る必要はありますが、施設をしっかりと整備すれば自宅でもお菓子を製造することは可能です。自分の得意なお菓子作りで多くの人を楽しませたいというのであれば、ルールを守った上でチャレンジしてみてもいいかもしれません。
お菓子を販売する経路としては、ネットショップという選択肢もあります。ネットショップ作成サービスとして日本でも屈指の実績を持つBASEではさまざまなジャンルのショップが商品を販売していて、お菓子類のショップも多数あります。
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