木材の種類ごとに異なる輝きを放つ「木軸ペン」。艶やかに磨き上げられたボディは、思わず息をのむ美しさです。
木軸ペン専門店「木軸ペン工房 金杢犀」オーナーの齋藤翼さんは、千葉県にある自宅の工房で日々、木軸ペン製作に勤しんでいます。ペン一本一本を精巧に仕上げていくその姿は職人そのものですが、齋藤さんは数年前まで、得意なことも夢もなく、生きるためだけに働く会社員でした。
齋藤さんが木材加工の技術を身につけ、全国のファンに愛される木軸ペンブランドを作り上げるまでの、「覚悟」の物語をうかがいました。

齋藤翼さん
木軸ペン専門店「木軸ペン工房 金杢犀」オーナー。携帯ショップや古着屋、倉庫作業員など職を転々とした後、独学で木工を学び開業。木軸ペンの加工からブランド運営まで手掛ける。
ショップ名:木軸ペン工房 金杢犀
取扱商品:文房具
運営体制:3人
カネなし、夢なし、特技なし。生きるため心が辛い仕事をした日々

まずは生きるために、お金をしっかり稼ぎたいという気持ちがすごく強かったですね。あまり裕福ではなかったので学生時代はとにかく貧しくて、お金のために職を転々としていました。
――過去にどんなお仕事遍歴をたどってきたのか教えてください。
最初は携帯ショップの営業の仕事をしました。選んだ理由は、求人情報誌の中で一番給料が高かったからです。とにかく食べていくためですよね。学んでいた栄養学に興味がなくなってしまい、学校を離れた後のことです。
その後も、古着屋やリユースショップ、深夜の倉庫作業員、コンビニやスーパーなどいろいろな仕事をしました。競馬場の売店でビールを注いでいた時期なんかもあります。
20代の前半は、自分が何が得意で何が苦手なのかなんて、まったくわからなかったんですよ。だから自分なりに試行錯誤して、会社で営業職をしているときの成績はそれなりに良かったです。でも、自分の心の中では面白いと思えなくて、仕事は辛いものでした。

――ここまでの経歴は木軸ペンにつながらないですね。ものづくりは何をきっかけに始めたんですか。
古着屋勤務をしているときに、古着をそのまま販売するより、手を加えてリメイクすると価値が上がることに気づいたんです。それをきっかけに、レザークラフトなどのものづくりをするようになりましたね。
実家のたんすの木材を記念に残したくて、木軸ペンづくりの独学を決意

ある日、母親から「たんすを壊すから手伝ってくれ」と頼まれたんです。そのたんすは木でできている大きなたんすで、子どもの頃からずっと家にあったんですが、手狭になるからと処分することにしたそうで。
そのたんすを、自分で金づちを使ってばんばん叩いて壊すんですよ。その時にすごく寂しさを感じたんです。「ただ壊して捨てちゃうのは勿体ない、何か形に残せないだろうか」と思いました。
それで、木のペンを作ってみたら面白いんじゃないかな? とひらめいて、作ってみることにしました。
――ペンを作るスキルはどこで勉強したんですか。
YouTubeです。今の時代ならではですよね。自分には技術を教えてくれる師匠のような人はいなかったので、全ての知識やノウハウはインターネット上の情報で身につけました。完全な独学です。
僕は「どうやったら上手くいくかな」と考えたり「成功するまでやってやろう」と意気込んだりしている瞬間が、おそらくとても好きなんです。トライアンドエラーを繰り返しながら手あたり次第やったら、上手くできるようになっていくんですよ。
失敗も面白いなと思ったので、失敗作などもXで公開していました。「こうやったら、こうなりました」とか「これは上手くいきませんでした」とか、失敗の記録も繰り返し発信していたんです。
ある日自分が満足するものが仕上がったタイミングで、「いいものができたので販売します。よかったらぜひ手に取ってください」と販売の告知をしました。あの時は、いいスタートをきれたなと思います。
必要なのは覚悟のみ。自宅に中古設備を揃えて人生に勝負をかけた

――木材の加工に必要な機材や設備がたくさんありますよね。資金はどう集めたんですか。
会社員時代に少しずつ貯めていたお金を使って、ディスカウントストアで中古の工具を少しずつ揃えていったんです。中には定価で100万円を超える機械もあって、貯金だけでは足りず、時計を売って足しにしました。会社の成績が良かったときに記念に買ったものだったんですが。
――覚悟が決まっていたんですね。その時はもうだいぶスキルが身についていたのでしょうか。
それが、全然技術はないんです(笑)やってみようと思ったから、買ってから考えようって感じでした。勢いというか……。
心の中で、自分の人生に勝負をかけたいと思ったんです。人生で1回ぐらい、やりたいことに全部注いでみたいと。
その後1年くらいかけて、会社員の時と同じくらいのお金が稼げるようになりました。

――できあがった木軸ペンをBASEで販売しようと思った理由はありますか。
カスタマイズできるところが決め手でした。BASEなら、背景やショップのアイコンはもちろん、あらゆるものをカスタムできますよね。隅々まで自分の意志で決定できるのでBASEにしました。
当店のショップを見ていただくとわかりますが、専門店としてこだわりのショップ作りをしています。ただモノを購入するだけでなく、製品に使っている木や当店のこだわりを体験いただけるんです。これは他ではできない、自分にとって唯一無二のBASEの価値だと思ってます。
小さな行動が、心豊かな人生の扉をひらくかも

――会社員の経験から学んだことはありますか。
会社員時代につらい仕事を経験したことで、今の暮らしのありがたみがわかります。心の豊かさを実感できるので、会社員をやっておいてよかったと思いますね。
今は妻と仕事をする家族経営なので、自分が抜けたら何も成り立たなくなるという緊張感があり、仕事への覚悟や責任は当時とは全然違うと思います。
――仕事が面白くないと感じている人に伝えたいことがあれば、お願いします。
もし今悩んでいて、ショップ運営など新しいことに挑戦してみたい、ものづくりしてみたいと考えているなら、小さなことからはじめてみてはどうでしょうか。
僕は今、昔の小さな行動が結果につながったなと実感しています。今の仕事や学業の傍らでもいいので、少しだけ行動してみてください。実際に動いて何か作ってみると、すごく面白いことやいい出会いがありますよ。
今後、僕自身も、ちょっとだけ行動してみるのを続けていきたいと思っていますね。
編集後記
特別なスキルも経験もない状態で、「人生でやりたいことをやってみる」という挑戦に踏み出した齋藤さん。お金のために気の向かない仕事をしたり、夢が見つからず仕事を転々としたり、つらい経験をしながらも、豊かさを感じられる充実した日々を掴み取りました。
BASEは、資金や時間が豊富でなくても事業に挑戦する人を応援しています。
BASEなら、初期費用・月額費用0円でも、自分の意志を込めた専門店をつくることができます。齋藤さんのように「少しだけ行動」してみませんか。
本記事は、BASE公式YouTubeチャンネル「ECのカクシゴト」の動画をもとに記事化しています。
動画でご覧になりたいかたは、ぜひ「【1日密着】美しすぎる文房具!独学ではじめたものづくりの勢いがすごすぎる…「YouTubeを見て中古の機械を買って…」」をチェックしてみてください。