ネットショップに開業届は必要?書き方や提出の手続きについて解説

2021.01.03(更新:2024.04.09)

新しくネットショップをオープンするときに、開業届は必要なのでしょうか。

この記事では、開業届を出すメリットとデメリットにも触れつつ、ネットショップ開設に開業届が必要なのかを解説します。

実際の書き方例も記載していますので、参考にしてください。

ネットショップに開業届は必要?

そもそも、ネットショップに開業届は必要なのでしょうか。

開業届は、事業の開始を税務署に知らせる届け出でであり、原則として、ネットショップに限らず、事業を開業したら提出しなければなりません。

ちなみに<国税庁>によれば、所得税法第229条を根拠に「新たに事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき事業の開始等をした方」が手続き対象となっています。

ネットショップに該当するのは「事業所得」になりますが、事業所得というのは一般的に、一時的な収入ではなく、継続してなんらかの対価として収益を得る場合を指します。

まさにネットショップのように、商品を販売して利益を得る事業も、事業所得を生ずべき事業です。

そのため、ネットショップを新しくオープンする場合も、開業届の提出が必要と考えるのが妥当です。

とはいえ、開業届を出さなくても罰則はないため、「開業したのに出してない!」などと過度にあせる必要はありません。最寄りの税務署に相談してみましょう。

開業届の提出期限

ちなみに提出期限は、所得税法第229条において、「その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない」と定められています。

開業届ってそもそも何?

先ほどもお伝えしたとおり、開業届は、事業の開始を税務署に知らせる届けです。

開業届を提出しないと、管轄税務署が事業の実態を把握できません。そういった状態だと、納税や申告に対するお知らせが滞ってしまいます。

そのほか、開業届は、個人事業主としての証明の役割も果たします。

開業届を税務署に提出すると、銀行口座開設や資金融資のさいに、個人で事業をおこなっている、と証明できます。

開業届は、正式には「個人事業の開業・廃業等届書」という名称です。開業時だけでなく、事業の廃止や事務所移転といった変更があったさいにも、この書類を提出します。

 

開業届を出すメリット

開業届を提出する前に、開業届のメリットは把握しておきましょう。下記に記載の内容がすべてではありませんが、おもな内容をまとめました。

メリット1. 青色申告ができる

開業届を出す一番のメリットは、青色申告ができること。

事業を開始し、一定の所得を生じた人などは、確定申告をする必要がありますが、確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。

この二つのとくに大きな違いは、青色申告では、特別控除を最大65万円まで受けられるということ(つまり、課税対象額がすくなくなり、税金も減る)。

ここでは詳細な説明は省きますが、その他にもさまざまな項目で、青色申告の方が白色申告に比べて課税対象額をおさえられる可能性が高まります。

小額の利益しか出ていない場合は、メリットが薄れますが、数百万円規模で利益が出ている場合は、税務署や税理士さんに相談してみましょう。

もし青色申告をおこなうのであれば、早めの行動を

もし青色申告を考えているのであれば、なるべく早く行動しましょう。というのも、青色申告の適用を受けるためには、提出期限があるからです。

  1. すでに事業を開始していて、白色から青色に変更する場合 → 適用する年の3月15日までに青色申告承認申請手続きが必要
  2. 1月15日までに開業して、その年から青色申告を適用したい場合 → 3月15日までに青色申告承認申請手続きが必要
  3. 1月16日以降に新たに開業する場合 → 事業開始日から2ヶ月以内に青色申告承認申請手続きが必要(例:3月1日に開業なら、4月末までに申請手続き)

もし期限までに申請していない場合は、その年は、白色申告で確定申告をおこなう必要があります

青色申告では、複式簿記が必要

青色申告でも白色申告でも、帳簿への記帳が必要ですが、青色申告の場合は、複式簿記というすこし複雑な記帳が必要です。

複式簿記とは、すべての取引を「借方」と「貸方」に仕訳して整理する記帳方法。会計ソフトなどを活用すれば、自分でも記帳できますが、慣れるまですこし戸惑うかもしれません。

とくにネットショップ運営する場合は、売り上げだけでなく、仕入れについてもそれぞれ仕訳する必要があります。

物販は、記帳する項目が多いため、開業届を提出することで、経理に使う時間が増えることはデメリットだといえるでしょう。

まずは、青色申告に必要な複式簿記が、どのようなものなのか確認しておきましょう。

 

メリット2. 屋号で口座を作成できる

屋号とは、個人事業主が利用する事業所の名前です。

法人の会社名と同じようなものだと考えると、わかりやすいでしょう。ネットショップを運営する場合は、ショップ名を屋号としたほうが便利です。

開業届に屋号を記入して提出すると、屋号で銀行口座を開設できます。

開業にあたって、屋号を名義にしたビジネス専用口座やクレジットカードを作っておくと、お金の流れも把握しやすいでしょう。

また、ネットショップを運営する場合、事業者の氏名や所在地といった概要を記載するよう、特定商取引法で定められています。

個人事業主であってもお客様からすると、屋号がある方が安心感は高まるかもしれません。

このように、ネットショップ運営においては、屋号で口座を作成することには、大きなメリットがあります。

 

メリット3. 小規模企業共済に加入ができる

小規模企業共済に加入できるのも、開業届を出すメリットの一つです。

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度。1,000円~7万円の範囲で設定した掛け金を毎月支払い、退職や廃業時に、共済金を受け取ります。

小規模企業共済に加入するメリットは、将来に対する備え、というだけではありません。掛け金は全額控除されるため、節税効果も見込めます。

ただし、共済金を受け取るさいには、課税されます。そのほか、1年未満で解約した場合は掛け捨てとなる点や、20年未満で任意解約した場合は、元本割れする点にも注意が必要です。

出典:小規模企業共済

 

開業届を出す場合の注意点

続いて、開業届を出す場合の注意点もお伝えします。開業届は原則提出することになっていますので、注意点を把握したうえで、届出をしましょう。

注意点1. 失業保険が受け取れない可能性

開業届を出すデメリットの一つは、失業保険を受け取れないことです。

失業保険は、次の就職先を探している失業中の人に支払われます。開業届を提出した個人事業主は、失業中ではなくなるため、失業保険を受給できません。

なお、開業したことを隠して失業保険を受給する行為は、不正受給にあたる可能性もあるようです。

失業保険を受給中に開業を決意した場合は、ハローワークに相談しましょう。個人事業主として開業した場合も、再就職手当の対象となるケースがあるそうです。

 

注意点2. 国民健康保険料の減免ができなくなる可能性

個人事業主は、基本的に国民健康保険に加入します。そして、国民健康保険は、前年より収入が下がって支払いが難しい場合などに、保険料減免の申請が可能です。

しかし、保険料の軽減や減免を受けるには、確定申告や住民税の申告をしている必要があります。所得がわからない場合、軽減や減免の対象とならないケースがあるので、注意が必要です。

また、開業届を提出すると、収入があると見なされ、支払いが難しいという申請が通らず、減免は受けられない可能性があります。

 

開業届の提出手順と届出の書き方

続いて、開業届の書き方と提出方法について、くわしくお伝えします。

なお、開業届の提出期限は、所得税法第229条において、「その事実があつた日から一月以内に、税務署長に提出しなければならない」と定められています。

遅れてもとくに罰則はないので、期限が過ぎたからと言ってそのままにせず、適切なタイミングで届出を出すようにしましょう。

さて、開業届の提出方法は、電子申請と郵送、そして税務署に直接持参する3パターンがあります。そのなかでもスタンダードな、税務署で提出する方法について説明します。

 

手順1. 「個人事業の開業・廃業等届出書」の準備

開業届は税務署でもらえます。開業届でも意味は通じますが、正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」ですので、覚えておきましょう。

<国税庁>のホームページからも、ダウンロードできます。

参照:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

開業届は、納税する場所の税務署に提出します。自宅を事務所としてネットショップを運営する場合は、自宅最寄りの税務署が管轄です。

管轄の税務署がわからない場合は、<国税庁>のページで確認してください。

参照:税務署の所在地などを知りたい方|国税庁

 

手順2. 開業届の申告に必要な持ち物を準備

開業届は、税務署で用紙をもらって、その場で直接記入もできます。税務署に出向くときの持ち物は、以下のとおりです。

  • マイナンバーカード(マイナンバー通知カード)
  • 本人確認書類
  • 印鑑

マイナンバー通知カードを紛失して、マイナンバーがわからない場合、役所で住民票の写しを発行してもらいましょう。住民票の写しに、マイナンバーが記載されています。

税務署の受付印が押された開業届の控えは、銀行口座の開設などのさいに、開業した証明に使用する可能性もありますので、大切に保管してください。

 

手順3. 必要項目を埋めて税務署へ提出する

それでは、開業届の書き方を見ていきましょう。

  1. 1. 提出する管轄税務署と提出日を記入

2. 納税地とそれ以外の住所を記入

納税地は、一般的には「住所地」にあたる自宅の住所です。事務所やリアル店舗がある場合は、「事業所等」として納税地にできます。

自宅と事務所、リアル店舗が別の場合は、もう一つの住所を「上記以外の住所地・事業所等」欄に記入してください。

自宅と事務所が同じ場合は、「上記以外の住所地・事業所等」に記入する必要はありません。

3. 名前と誕生日、マイナンバーを記入

4. 職業と屋号を記入

職業は、ネットショップであれば「インターネット販売」や「ネットショップ運営」などがよいでしょう。

屋号に記入するショップ名が決まっていない場合は、空欄でも問題ありません。屋号は、あとから変更可能です。

 

5. 「開業」にチェックを入れる

6. 所得の種類は「事業(農業)所得」にチェックを入れる

開業・廃業等日欄には、開業日を記入しましょう。

7. 開業届といっしょに提出する書類の有無をチェック

青色申告をする場合は、開業届といっしょに「所得税の青色申告承認申請書」も提出しましょう。青色申告承認申請書は、開業から2ヶ月以内に提出する必要があります。

参照:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

8. 事業の概要を記入

職業欄よりも具体的に記入してください。ネットショップ運営の場合、メイン商材の仕入れや販売、ショップ運営をおこなうことを具体的に記載すればよいでしょう。

9. 家族や従業員を雇用して給与を支払う場合は、詳細を記入

家族は「専従者」、従業員は「使用人」欄に人数を記載します。ひとりで事業をおこなう場合は、「計」の欄に0(ゼロ)と記入しましょう。

生計をともにする家族に支払う給与を経費にする場合、「青色事業専従者給与に関する届出」を提出する必要があります。給与を支払うことが決まっている場合は、開業届と一緒に提出しましょう。

参照:[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁

給与の定め方には、「時給」「日給」「月給」などを記入します。税額の有無は、源泉徴収をするかどうかです。

源泉徴収は、原則として徴収した翌月10日に納付しなければなりませんが、従業員が10人以下なら、特例で年2回に減らすことができます。

特例を受ける場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」を有りにして、開業届と一緒に書類を提出しましょう。

参照:[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

 

まとめ

以上、開業届について解説しました。

お伝えしたとおり、開業届は、事業を開始したら原則提出することになっています。面倒に思いがちな開業届ですが、出した場合のメリットはたくさんあります。

これから本格的に事業をおこなっていこうと考えている場合は、きちんと提出するようにしましょう。

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