2021年11月9日(火)、「広告運用のKPIの考え方とPDCAのポイントに関して」というテーマで、オンラインセミナーを開催しました。
本セミナーは、前回に引き続き、ゲスト講師に<グーグル合同会社>アジア・太平洋地域広告営業プログラムマネージャーのYugi氏をお招きし、「広告運用のKPI」や「Google ショッピング広告のPDCAのポイント」についてお話ししました。
この記事では、当日ご来場できなかった方にも、その内容をレポート形式でお伝えします。
あなたのショップの現状把握をするために、整理すべきこと
まず第一にやるべきは、顧客を知ることです。そのためにできる、具体的なアクションをお伝えします。
簡易的にできることとして、多くのショップのみなさんは、Instagramアカウントをお持ちだと思います。この Instagramのプロフェッショナルダッシュボードから、年齢層や性別を把握できます。
これは、Instagramのプロアカウント(=ビジネスアカウント)であれば、どなたでも使える機能であり、無料で切り替えられるので、まだの方はぜひGoogleで「Instagram プロアカウント」などで検索して試してみてください。非常にかんたんです。
そして、さらに発展編としては、Google Analyticsを設定しましょう。アカウントを作り、トラッキングIDが発行されるので、それをBASEのAppである、「Google Analytics設定 App」に設定すれば、完了です。
Google Analyticsは、一見難しく見えますが、BASEの管理画面をふだんからお使いの皆様であれば、すぐに慣れるはずです。ぜひ、Googleアカウントを作成し、設定してみてください。
また、BASEの管理画面にある顧客管理画面から、リピーターを特定し、メルマガを送ってみたり、直接メールでインタビューさせていただくことも、一つの手段かと思います。定量だけでなく、定性データからも顧客を知り、あなたのショップの把握に励みましょう。
続いて、把握すべき現状は、「売上」です。売り上げが伸びないのには、どこかに原因があります。売上を構成する要素を明らかにし、一つひとつ潰していく。そうしていくことで、もっとも注力すべきポイントが可視化されていきます。
売上の分解をしていくなかで、いちばんお伝えしたいことは「LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)」という考え方です。
LTVとは、顧客が生涯を通じて企業にもたらす、売上や利益のことです。つまり「顧客が自社の商品やサービスを使い続ける上で、支払う金額の総額」です。一般的には、商品やサービスに対するロイヤリティ(愛着や忠誠心)が高いほど、LTVが高まりやすくなります。
これを加味した上で、このあと説明する、予算設定を考えていただきたいと思います。
予算の決め方で、おもにお伝えしたいのは、3パターンあります。
1つ目は、「売上目標金額から予算を逆算すること」です。
たとえば、広告費にあてる割合を10%と決めた場合、売上目標を月200万円に設定すると、広告費用は20万円(月額)になります。
ちなみに、ネットショップ業界の広告費用の平均は、15〜20%と言われているそうです。ただ、もちろんそれぞれのショップによって、利益率は大きく異なってくることから、あくまで参考数値としてとらえていただければ、と思います。
この予算設定方法は、利益率が安定的に高いショップにおすすめできるやり方です。
2つ目は、「損益分岐点から、予算を逆算する」やり方です。
たとえば、売価が2万円の商品で、1個につき8,000円の販売コスト(人件費や材料の仕入れ費用、物流費(荷造り費、発送費、倉庫保管料など))がかかるとすると、1個あたりの損益分岐点は、1万2,000円になります。
つまり、1個につき1万2,000円を超える広告費を使うと赤字になるので、広告費の上限を1万2,000円とするのです。
この場合、目標販売個数を100個と想定すると、最大120万円まで予算組みが可能です。ただし、これでは利益が出ないため、あくまで最大値として考えます。
こちらは、損益分岐点から利益を加味した上で、上限を決める予算設定方法、となります。多くのショップにおすすめすることができるやり方です。
そして、もっともおすすめしたいやり方が、3つ目の「LTVの考え方から予算を逆算する」方法。
ここでは、リピート利用される回数(平均)を、1回あたりの広告費にかけて予算を出します。
たとえば、1個につき1,000円の利益が出る商品が、年間で平均5回リピートされていたとします。
これが月に50個売れるとすると、1ヶ月あたりの広告費用の上限は、1,000円×50個=5万円です。
1人の新規顧客が、年間5回リピートする分の利益も広告費に振り分けられる、と考えると、広告費は最大で5万円×5回=25万円(月額)まで使えることになり、新規顧客獲得のチャンスを増やすことができます。
もちろん、これでは利益が出ないため、利益と費用について考慮した上で求めることが重要です。それが、以下の数式に表れています。
(購買単価✕粗利率×購買頻度✕継続購買期間)-(顧客獲得費用+顧客維持費用)
リピート販売を踏まえ、利益を創出するビジネスモデルのショップにおすすめすることができる、予算設定方法です。
次に、ケーススタディで、LTVで考える有効性をお伝えしていきます。
こちらのショップでは、平均的に1回の購入金額は4,000円です(原価率は25%とします)。
リピート率も高いので、1年間に1人あたり平均4回ご購入いただいています。購入サイクルだと、3ヶ月に1回購入されるサイクルになっています。
この場合、限界のCPAは、以下の通りになります。
1.LTVを考慮しない場合だと、3,000円(4,000円×75%)
2.LTVを考慮する場合だと、12,000円(4,000円×75%×4回)
それでは、広告の予算を設定していきましょう。
1の場合、3,000円が限界CPAになりますので、利益も考えると、許容CPAは2,000円が妥当なラインと言えるでしょう。
しかし、これでは非常に効率的に広告設定・運用をおこなう必要があるため、件数はそこまで多く出ません。
そこで、予算を仮で3,000円とします。
一方、2の場合ですと、12,000円が限界CPAになりますが、1. 同様、利益を考慮すると、許容CPAは8,000円が妥当なラインになってくるでしょう。この場合の予算を、仮で10万円とします。
さて、これに基づいて1年後の営業利益を出してみますと、LTVを考慮して広告出稿すれば、3.3倍もの営業利益が作れたことになる、という結果になりました。
予算の大きさにももちろん依存しますが、許容できるCPAを小さく見積り過ぎると、結局広告のベストパフォーマンスを発揮する機会を失い、のちに大きな損失を被る可能性があることをご理解いただければ、と思います。
許容CPAが高くても、LTVがわかっていれば、利益を生み出す構造を作れるのです。そして、機会を最大化できるのです。だからこそ、一人でも多くの方にLTVの考え方を理解していただきたいのです。
プロモーションのKPIの考え方
KPIは「過程」を見る指標であり、KGIは「結果」を見る指標となりますので、1つのKGIに対して複数のKPIが設定されることもあり、KPIをクリアしていくと、KGIの達成につながります。
では、どのようにKPIを決めていくべきでしょうか?
まずは、「ゴールの確認」です。
KPIは、目標達成のためにおこなった行動を評価するための指標です。そのため、目指すゴールがあいまいなままでは、適切に設定できません。
このゴールとは、KGIのことですが、目標を達成したかどうかを定量的に測れるものになっているか、確認しましょう。
続いて、「ゴールに至る要素の分解」です。
KGIを明確にしたら、それを達成するための要素に分解します。
KGIが売上ならば、「売上=客数×客単価」で表現できるので、お客様の数を増やすか、1人当たりのご利用額を増やせば、売上も向上します。さらに、客数は「新規顧客+既存顧客-離反顧客」という式で表せるので、新規顧客、既存顧客を増やすか、離反顧客を減らせば、客数を増やせます。
要素に分解すると、やるべきことが明確になり、施策の効果を測定・検証でき、改善点を見出せるようになります。
最後に、「各要素の成果を測る指標の設定」をしましょう
ステップ2で確認した要素のうち、取り組み可能な項目、注力すべき項目をピックアップします。そして、各要素について、いつまでにどんな状態にするのか、を設定します。これが、KPIとなります。
目標を分解しようと思えば、かなり細かく多くの要素に分けられます。
最初は、優先順位の高いKPIや自社の課題解決につながるKPIに絞り、1~3つ程度を設定するのがおすすめです。そうすることで、人や予算を効率的に配分することができ、施策のPDCAサイクルを回すさいにも、つねに意識できるので、実務に反映できる、「生きた」KPIとなります。
ここまで、売上を構成する要素を明らかにし、一つひとつ潰していくやり方をお伝えしてきましたが、その要素を可視化する上で便利なやり方が、KPIツリーです。
このように、ツリー状にKGIをKPIに、そしてKPIに紐づく指標に分解し、落とし込んでいきます。これは、指標を書き出して終わりでなく、その指標部分の数字を日々モニタリングし、異変に気付いたり、浮き沈みに応じて改善施策を考え、実行することが大切です。
たとえば、「回遊率」が低いのであれば、
・商品数を増やす
・商品紹介文を充実させる
といったことが、解決策の1つになります。
「注文完了率」が低いのであれば、
・決済手段を増やす
・送料を低くする
・商品到着予定日を短くする
などが、解決策になってきます。
それぞれのボトルネックに応じて、解決策が変わってくるので、そのボトルネック自体を明らかにすることが重要です。
ボトルネックが解消することで、KPIが改善し、最終的なKGIの達成につながることが大切になります。
集客部分においては、あらためての共有となりますが、BASEのAppで「Google Analytics 設定 App」をインストールすると、Google Analyticsを用いてショップ訪問者のアクセス情報をくわしく分析できるようになります。
まずは、アカウントを取得し、トラッキングIDをApp内に入力し、保存することで設定完了です。それぞれの流入経路別の購入率を把握し、ショップにおいて最適なチャネルに投資し、KPI達成→KGI達成、を目指しましょう。
広告運用する上で、意識すべきこと
ネットショップのオーナーの皆様に持ち帰っていただきたいメッセージを、一言でまとめますと、「広告運用テクニックよりも、表現力を高めていただきたい」ということです。
広告運用は、一見複雑に見えるので、なにかその複雑な要素を組み合わせることでうまくやれるのではないか、と思ってしまいがちです。しかし、実際には、ECのプロモーションを成功させる上で、商品写真を中心とした表現力に勝る要素はありません。
インターネット上で広告を打つとは、どういうことなのか。Google 広告を例に取って、その仕組みをかんたんにおさらいしたいと思います。
まず、ターゲットに設定した消費者に対して、インターネット上で広告を掲載します。
消費者が、表示されている広告をクリックして、その消費者が商品ページに誘導されると、広告費が発生します。この広告費は、クリック単価と呼ばれています。クリックされることによって発生する広告費ですが、実際には、商品ページに誘導された消費者ごとに費用が発生する、と考えていただければと思います。
そして、商品ページに誘導された消費者が、実際に買い物をすることで、売り上げが発生します。消費者が買い物をしてくれることを、コンバージョンと呼びます。コンバージョン数とは、この買い物をしてくれた数です。そして、コンバージョン率とは、ネットショップを訪れた人のうち、何パーセントが買い物をしてくれたのか、その確率を指します。そして、コンバージョン単価とは、一人の買い物をしてくれる消費者を獲得するのにかかった、平均広告費です。その期間中にかかった広告費用を、その期間中に獲得したコンバージョン数で割ることで求められます。
このことを前提において、広告運用に「うまいやり方」というものがあるのかどうかについて、考えていきましょう。
広告がうまくやれている、ということがどういうことなのか、これを考えるために、分解して考えてみたいと思います。
第一に考えられるのが、うまいやり方によって、ふつうより安く掲載できるのか、ということです。言い換えれば、うまいやり方をおこなことで、クリック単価を下げることができるのかどうか、ということです。
第二に考えられるのが、うまいやり方によって、コンバージョンをより多く発生させられるのか、ということです。同じネットショップへの流入数でも、そこからよりたくさんコンバージョンが発生すれば、広告は成功に近づいた、と言えます。言い換えれば、コンバージョン率を高めるうまいやり方があるのかどうか、ということです。
第三んに考えられるのが、儲けの観点です。同じネットショップへの流入数、同じコンバージョン数でも、うまいやり方によって、より儲かるようにできるのかどうか、ということです。
この3つの点について、うまいやり方があり得るのか、もしあるとしたら、それはどのようなやり方なのか、を見ていきましょう。
まず、最初のポイントは、うまいやり方で、ふつうよりも安く掲載できるのか。すなわち、うまいやり方で、クリック単価を低くおさえることができるのか、という点です。この点においては、正直なところ、むずかしいと思っています。
所定のクリック単価で広告が掲載されるかどうかは、ほかの広告主との間で自動におこなわれる、オークションとの兼ね合いで決まります。
広告主が1クリックに支払える最大クリック単価をおささえる、とすると、広告掲載のたびに、ほかの広告主との間で自動でおこなわれているオークションの仕組みによって、広告が表示される機会が減ります。
あわせて考えられるのは、ほかの広告主があまり積極的にオークションに参加しない掲載面があるのか、ということです。オークションに参加する広告主が少なければ、ふつうより安いクリック単価で広告掲載ができることが期待できそう、だからです。
しかし、これも現実的にはむずかしいと思います。前回のセミナーで、広告掲載が自動化されていることをお話ししました。日時、掲載面、デバイスなど、さまざまな条件下において、機械学習によって、もっともコンバージョンが出やすい局面に、広告が積極的に掲載される仕組みになっています。人間が掲載場所を選んでいるのであれば、誰も注目しない、穴場的な掲載面が出てくるかもしれません。しかし、多くの広告主が機械学習によって自動的に掲載面を選んでいる環境では、そのような穴場があることは考えにくいです。
第2のポイント、うまいやり方によって、同じ流入数でもより多くのコンバージョンを発生させられるのか、という点について、考えてみたいと思います。この点においては、「表現力」がカギになります。
広告によって、消費者を商品詳細ページに導きます。広告によって流入してきた消費者の多くが、はじめて皆様のネットショップを訪れています。つまり、一見客です。やってきた一見客に買ってもらえるような商品詳細ページになっているか、それによって、流入数に対してより多くのコンバージョンを発生させられるのかどうか、が決まります。
とくに、商品写真の表現力がとても重要です。商品写真をどれだけよく見せられるかで、コンバージョン率は大きく変わってきます。
また、迷いなく買ってもらえるだけの情報を提供しているかどうか、もポイントです。ECは、直接商品を手にとって見てみることができません。商品に惹かれたとしても、気になることがあっては、結局購入に踏み切れないことは、よくあります。多くの人が気になるポイントは、商品カテゴリーによって異なります。
このように、同じ流入数でも、より多くのコンバージョンの生むための方法というものがあり、それは、「表現力」がカギ、だということです。
第3のポイントは、儲けの観点。同じサイトへの流入数、同じコンバージョン数でも、うまいやり方によって、より儲けが出る方法があるのかどうか、ということです。このポイントについては、1コンバージョンあたりの利益が、鍵になります。
まずは、こちらの式を見ていただきたいと思います。この式は、クリック単価をコンバージョン率で割ると、コンバージョン単価になる、ということです。
クリック単価÷コンバージョン率=コンバージョン単価<購買当たりの利益
クリック単価は、一人の消費者があなたのネットショップに流入するたびに発生する広告の費用です。コンバージョン率は、ネットショップに流入してきた人のうち、何パーセントの人が実際にコンバージョンに至るのか、という割合です。コンバージョン単価とは、1件のコンバージョンを発生させるのに、いくらの広告費を使ったのか、ということです。コンバージョン単価は、安ければ安いほど、広告が成功している、ということになります。
この式を見ていただければわかるのですが、コンバージョン単価を下げるには、クリック単価を下げるか、コンバージョン率を上げるか、のどちらかになります。クリック単価は前述の通り、オークションの兼ね合いがあるため、劇的には下がりません。一方でコンバージョン率は、表現力を高めることによって、向上することがあります。なので、コンバージョン単価を下げるには、表現力を高めてコンバージョン率を上げるのが近道、ということがわかります。
そのコンバージョン単価の先に、不等式がついています。コンバージョン単価は、1コンバージョンあたりの利益よりも安くなければならない、ということです。コンバージョン単価が、1コンバージョンあたりの利益よりも高くついてしまうと、そのプロモーションは赤字、ということになります。利益を出すためには、コンバージョン単価を、購買あたりの利益よりも低くおさえる必要があります。
コンバージョン単価を低くおさえることは重要なのですが、それと同時に、購買あたりの利益が大きいものを扱うことも、重要です。購買あたりの利益が大きければ、販促施策を取ったときの利益も出やすくなります。
ですので、販促をするのであれば、購買あたりの利益が大きい商品から手をつけるのがよいでしょう。
ざっくりまとめますと、販促施策の成功には、利益が出やすい商品を扱いつつ、表現力の向上を目指すことが必要、ということです。
Google ショッピング広告の効果改善のポイントに関して
ここからは、Google ショッピング広告の効果改善のポイントについて、より具体的に見てきたいと思います。実践していただきたいポイントは、4点です。
まずは、商品写真にとことんこだわること。一見客に「ほしい」と思わせるような商品写真は、ショップにとって大きな財産になります。つねによい商品写真を目指して撮り続けることで、商品写真という財産の価値を、より大きくしていくことができます。
第2に、買いにくくなる原因を減らす、ということです。通信販売として商品を取り扱う以上、消費者が迷いなく買える情報を、適切に表現する必要があります。
第3に、Google Merchant Centerに慣れていただくこと、です。Google Merchant Center上で商品が不承認になった場合の対応と、Google Merchant Center上の情報を最適化いただくことが必要で、そのためには、Google Merchant Centerに慣れていただくことが大切です。
最後となる第4のポイントとして、広告を止めるときは慎重に、です。機械学習が働いて広告の効果が上がるまで、多少の時間が必要であること、また、コンバージョン率が問題なのであれば、コンバージョン率を高めるための施策を十分におこなうこと、これらが不十分なままで広告を止めてしまうと、十分な効果を得ることができません。
これらの4つのポイントについて、もう少し具体的に見ていきましょう。
最初は、「商品写真にとことんこだわる」ということです。
多くのネットショップが、限られたシチュエーションで、限られたバリエーションで撮影された商品写真を使用されているように思えます。同じシチュエーションで撮られた写真が数カットあるだけでは、一見客にその商品がある生活をイメージさせることはむずかしいです。より多くのシチュエーションで、より多くのバリエーションの写真を撮っておきたいところです。
より多くのバリエーションを撮っていくポイントは、さまざまな光の当たり方、構図です。同じ商品、シチュエーションでも、光の当たり方、商品の置き方によって、その写真から想起させられるイメージは変わります。商品の置き方の角度を変えたり、カメラを向ける方向を変えたりしながら、たくさんのカットを撮ってください。フィルムの時代と違い、現代はデジカメの時代なので、カット数を増やすことでそれほどのコストはかからないもの、と思います。
また、商品写真を一度撮影して、それで終わりにしてしまっているケースも多々あります。よりよい商品写真を撮るために、商品写真を撮り続けてほしいのです。商品写真は、ショップにとって重要な財産です。つねに、今の商品写真よりもよい商品写真を目指して、バリエーションを増やしていくことで、この財産が時と共に成長していくことになります。
また、商品カテゴリーごとに、「こんな写真がほしい」と思われるポイントをまとめてみました。
食品であれば、商品の接写、大きさや盛りの表現、商品を掬(すく)ったりつまんでいるところ、盛り付けやアレンジのバリエーション、食べているモデルがにっこり笑っているところ、製法へのこだわりを示す写真、などがよく使われます。
アパレルであれば、世界観が伝わるモデル着用写真、ボディに着せた写真、背空きの服ならばどこまで開くのかがわかるような写真、裾、襟、袖などの処理がわかる接写写真、などがよく使われます。
一般的にはこのような写真が使われるケースが多いですが、これにとどまることなく、商品の魅力が伝わるような写真を追い求めて、撮り続けていきたいものです。
続いて、「買いにくい原因を減らす」ための情報を提供することについて、お伝えしていきます。
インターネットでの販売は、直接商品を手にとって見ることができません。ほしいと思った商品でも、なにか引っかかるところがあれば、結局買わずに済ましてしまうことが日常的にに発生します。商品のサイズ、素材、または使いにくそうなところについて、わからないままにせず、積極的に伝えていくことが重要です。
なかでも、とくに大事にしたいのが、商品に対する問い合わせです。商品に対して問い合わせがあったら、その問い合わせが再び発生しないようにするためには、どのような情報をあらかじめ開示しておくべきなのか、そういった振り返りを定期的におこなうことで、「迷ったあげく、結局買わなかった」というケースを減らすことができます。
実際に、商品に対する問い合わせまでしてくれるほど関心度の高い消費者は、ごく少数です。もし、問い合わせが1件あったら、その背後には、問い合わせすることもなく買うことを辞めてしまった消費者が多数いるもの、と考えていただくのが妥当かと思います。
また、商品カテゴリーごとに、「ほしい情報」についてお伝えしていきます。
アパレルであれば、モデルが着用しているサイズのほかに、モデルの身長、そのブランドにおけるサイズの規定、商品の伸縮性、厚み、裏地の有無、透け感、洗濯方法、などです。
食品であれば、産地や加工地、内容量、保存方法、賞味期限、原材料、アレルギー表示、などが基本的なものです。
これに加えて、商品に対する問い合わせ内容を、定期的に棚卸していただき、「ほしかったけれど、結局買わなかった」というケースを減らしていっていただきたいと思います。
3つ目は、「Google Merchant Centerに慣れよう」です。
Google Merchant Centerでは、不承認になってしまった商品フィードがないかどうかを確認し、もし、ある場合は情報を訂正して、個別に審査を依頼します。また、より多くの消費者に選ばれるよう、フィードの情報を最適化していきます。
まず、最初にGoogle Merchant Centerへのログインからはじめましょう。商品連携アプリでGoogle Merchant Centerにログインするための Google アカウントを、覚えていらっしゃいますでしょうか? 「Google Merchant Center」と検索して、右上のログインボタンから 、Google Merchant Centerにログインしてください。
Google Merchant Centerの画面に、「診断」というタブがありますので、そのタブから商品アイテムに関する問題をクリックしてすると、不承認になっている商品アイテムのリストをダウンロードすることができます。
不承認になっている商品アイテムは、個別審査を申請できます。商品ページの一覧セクションに表示されている、商品アイテムの商品名をクリックし、そのアイテムのページを開きます。商品アイテムステータスで、「審査をリクエスト」をクリックします。不承認の理由として挙げられているポリシーを見直し、内容を確認したことを通知するチェックボックスをオンにして、「個別審査を申請」を選択します。
次に、フィードの最適化について。
フィードのなかでも、とくに重要なのが、商品名(タイトル)です。ショッピング広告の面で、フィードが並ぶさい、この商品名(タイトル)と商品写真が並ぶからです。
商品説明は、500字から5000字の長いフィールドです。このフィールドを書くにあたっては、消費者が気にする重要なキーワードが入ってること、がポイントです。理想は、 Google Analytics でネットショップに流入しているキーワードを入力して、消費者がどのような関心を持ってネットショップに流入しているのかを調査して、これらの重要なキーワードを拾っていくことが望ましいです。
イメージ画像は、800×800ピクセルを推奨しています。この画像は、消費者に選んでもらう上で、とても重要なものです。商品詳細ページに掲載する商品写真と、このイメージ画像で、ショッピング広告のパフォーマンスは大きく変わります。さまざまなシーンで商品を撮影し、そのなかからもっとも魅力のある写真を選んで、登録してください。
サイズや素材は、縦横のサイズと、素材の種類を記載します。商品を実際に手にとって見ることのできないECにとって、失敗しない商品選びをするために、消費者はサイズや素材を気にしています。消費者の不安感を払拭するために、正確な情報を記載しましょう。
商品カテゴリ、Google 商品カテゴリは、どのような検索クエリに反応して商品が表示されるか、に関わってきます。この情報が不正確だと、検索クエリに反応して商品フィードが表示されたときに、クリックされる確率が下がるため、低品質であると判断されてしまいます。正確なカテゴリを入力しましょう。
商品名(タイトル)がとても重要、とお伝えしましたが、商品名(タイトル)には、「ブランド+商品カテゴリ+属性」といった要領で記載いただくのが、商品の内容を素早く伝える上で、有利です。ぜひ、お試しください。
最後に、「広告を止めるのは慎重に」について。
まず、第一に心に留めていただきたいのは、購買あたりの利益が小さい商品は分が悪い、ということです。購買あたりの利益が小さければ、それに合わせてコンバージョン単価も、かなり低くおさえる必要があります。逆に、購買あたりの利益が大きければ、それだけ余裕をもった販促施策ができる、ということです。
それを前提に、コンバージョン率を徹底的に改善することになります。さきほどお伝えした商品写真や、迷わずに買える情報の提供など、手を尽くす必要があります。
そして、機械学習を使用した最適化には、多くのデータの収集が必要なため、時間がかかります。少なくとも、2週間はみていただきたいと思います。
おわりに
「広告運用テクニックより、表現力を」というお話をさせていただきましたが、販促によって商品の売上を伸ばすためには、購買ごとの利益が高いものが有利であり、それを前提として表現力を磨いてコンバージョン率を伸ばしていくこと。とくに、商品写真に関しては、よりよいものをつねに追求していく、それがネットショップにとって大きな財産になる、ということをお伝えさせていただきました。
ネットショップの運営は、やることがたくさんで、商品写真はありものを使ったり、最初に設定したものを使い続ける、という状態になってしまっている方がほとんどだと思います。しかし、状況をきちんと把握し、改善し続けていく努力を惜しまないショップは、間違いなく伸びています。少しでもお役に立てましたら幸いです。