ネットショップをはじめ、ビジネスをされている方は、越境ECに関心を持たれるケースもあるかと思います。
とはいえ、「そもそも越境ECとはなんなのか?」「いまどのような状態にあるのか?」など、くわしくはご存知ない方も多いはず。
そこで、この記事では、越境ECに関する基礎知識から、はじめ方、メリット・デメリットなどについて解説していきます。
目次
越境ECとは?
越境ECとは、ECサイトを通じて国境を越えておこなわれる取引のことです。
じつは、この越境ECは、インバウンド需要を超える巨大マーケットとして、EC業界で注目を集めています。
すでに海外進出をしているECサイトも多く、その市場規模は、年々大きくなり続けているのです。
平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)|経済産業省のデータによれば、越境EC大国の中国、米国と日本の関係は、以下のようになっています。
すこしわかりにくいですが、日本の場合、買うよりも買われる額の方が圧倒的に大きく、またその額は、前年比二桁以上という数値で推移しています。
つまり、非常に大きなお金が動く市場が、それも驚異的なスピードで拡大しているのです。
これからもどんどん伸びる越境EC
なお、経産省の同調査によれば、現在越境ECをリードしているのは、中国と米国です。
ただ、実際の人口比やスマートフォンの普及率などを考えると、今後は、中国の消費がますます巨大化していくことが考えられます。
また、同様の調査で、今後の全世界の越境ECは以下のように想定されており、引き続き驚くべきスピードで市場が拡大されていく予想が報告されています。
このように、越境ECは世界経済の発展にともない、これからもますます市場が拡大していく、言わば成長産業にあたります。
だからこそ、注目され、多くの企業が取り組んでいるのです。
越境ECのメリット
ここまでご覧いただいたように、越境ECは、市場規模が拡大していることもあり、EC業界で注目を集めています。
参入すれば、売上アップなどが期待できるかもしれませんが、同時に、メリットだけでなく、デメリットについても考える必要があります。
まず、越境ECのメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 商圏の拡大
- 低コストで海外ビジネスが可能
- 経済成長国を相手にできる
それぞれのメリットについて、解説します。
1. 商圏の拡大
越境ECのメリットは、販路が国内だけでなく、海外まで広がるという点です。
日本製品は、品質が高いということで、海外にも非常に人気があります。商圏が拡大することで、流入数アップ・売上アップにつながるでしょう。
とくに、中国EC市場で近年急成長している日系商品としては、幼児用食品や腕時計があります。
参照元:デジタル世代が牽引する中国EC市場の実態と日系企業にとっての機会|NRI
取り扱う製品によっては、商圏の拡大により、さらに大きな売上アップも見込めるでしょう。
2. 低コストで海外ビジネスが可能
海外ビジネスをはじめる場合、コストがかかるイメージがあるかもしれませんが、越境ECであれば、実店舗を出店するより低コストではじめることが可能です。
たとえば、ニューヨークで物件を借りようと思ったら、家賃だけで月200万円前後かかることもめずらしくありません。
その点、越境ECであれば、海外に実店舗を構えるよりも圧倒的にコストをおさえて、海外ビジネスをはじめられるでしょう。
また、最近では、越境ECに対応したサービス(『BASE』などのネットショップ作成サービス)やサポート会社なども増加傾向にあります。
そのため、コスト面以外でも、越境ECをはじめるハードルは低くなっている、といえます。
3. 経済成長国を相手にできる
越境ECを開始することで、経済的に衰退している日本よりも、経済成長国や先進国を相手にしたビジネスを展開できます。
とくに、EC取引がさかんにおこなわれている中国を相手にビジネスができるため、売上拡大の期待値は非常に大きいといえます。
また、先述した通り、越境ECの市場規模は、年々拡大し続けています。経済産業省の調査報告では、2018年には74.8兆円、2019年には90.8兆円、2020年には109兆円、という市場規模になると予測されています。
地域別にみると、アジア太平洋地域は、2017年で2,180億米ドルと推計されていますが、2020年には2倍以上の4,760億米ドル規模に成長する、と見込まれています。
越境ECのデメリット
越境ECのデメリットとしては、以下の5つが挙げられます。
1. 言語や国民性の違いへの対応が必要になる
2. 輸出入・販売の規制
3. 関税・郵送コストが高い
4. サポート対応の難しさ
5. 為替変動のリスク
それぞれのデメリットについて、解説します。
1. 言語や国民性の違いへの対応が必要になる
越境ECのデメリットとしては、文字通り国境を越えての取引となるため、言語や国民性の違いへの対応が必要不可欠となります。
サイト上の表記はもちろん、サポート窓口を用意するなら、外国語対応スタッフの雇用も必要となるでしょう。
たとえば、中国の多くのECサイトでは、問い合わせ対応のためにチャットツールを導入しているため、チャットサービスにも対応する必要があります。
有人チャットツールの「阿里旺旺(アリワンワン)」やAIチャットボットツール「阿里小蜜(ALIME)」が有名です。
2. 輸出入・販売の規制
越境ECをはじめるうえで重要となるのが、輸出入・販売に関する規制です。
関税法に基づいて、国ごと、また商品ごとに輸出入の可否を確認しなければなりません。場合によっては、進出先国の許可や申請なども必要になるため、事前確認は必須、といえます。
越境ECにあたって、売りたい商品があったとしても、国内で販売するのと同じ感覚で販売できるわけではないため、この点は越境ECのデメリットになるでしょう。
3. 関税・郵送コストが高い
越境ECのデメリットとして、国内と比較すると関税・郵送コストが高い、という点もあげられます。
海外へ商品を送る点について、関税や国際輸送の知識も身につけておかなくてはなりません。さらに、通関手続きや海外配送も、それなりに手間がかかるという点も、デメリットといえます。
ただ、海外輸送に関しては、「BASE」とも連携している<NEOlogi>などのサービスもあります。
これらのサービスを利用することによって、スムーズに通関手続きや海外配送をおこなえるようになります。
<NEOlogi>の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
4. サポート対応の難しさ
越境EC参入にあたって、問題となりうるのが、サポート対応の難しさです。
中国や欧米をはじめとした、海外の顧客を対象にビジネスをおこなうことになるため、言語が異なる顧客に対するサポート体制が必要です。
ECサイトにみられる「よくある質問」や「お問い合わせ」ページについても、外国語対応をしなければなりませんし、実際に問い合わせがあった場合も、問い合わせ先の国の言語に合わせたサポートをおこなわなくてはなりません。
越境ECをはじめるにあたって、外国語対応スタッフの採用なども進める必要があるでしょう。
5. 為替変動のリスク
越境ECは、購入者の数が国内に比べて圧倒的に多いため、日本では需要のすくない商品でも売れる場合があり、売上アップにつながる可能性があります。
ただし、為替変動により、収益が増減することもある点を考えると、ノーリスクとはいえません。
ECサイト上に、商品代金を日本円で表示し、日本円で決済するなら、為替リスクはありません。ただし、販売先の国の通貨で代金を表示し、決済する場合は、販売者側が為替リスクを負うことになります。
越境ECのはじめ方
ここまで、越境ECの基本についてお伝えしてきました。では、実際に越境ECをはじめるとしたら、どのような方法があるのでしょうか?
検討するさいは以下の手順で検討してみましょう。
1. ターゲット国を決める
2. 商品を決める
3. 出店方法を決める
4. 言語や決済サービスの設定
5. 配送方法の決定
それでは一つずつ解説していきます。
1. ターゲット国を決める
越境ECを検討するさいに重要なのが、何よりも「どこで販売するか」という点です。
というのもこれまでご説明してきたように、国が違えば国民性も違うのはもちろんのこと、日本製品に求める価値や商品ジャンルも異なってくるからです。
また国によって購買力も異なります。
下記の画像は経済産業省の「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」という資料からの引用ですが、主要国のEC市場規模は以下の通り大きく開いています。
今後伸びてきそうなASEAN諸国は中国や米国などに比べると極めて小さいことが分かります。
このような違いも含めて、まずはどこの国に売っていくのか、そもそも自社の商品はどこの国と相性がいいのか考えていく必要があります。
その他考えておきたい項目
ターゲット国を決めるさいには「市場」以外にも下記のような項目は調べておく必要があります。
・法制度(対応すべき法律や規制、税制)
・商習慣(日本とは異なる商習慣)
・商品ラベル表示義務(原材料、原産国表示など)
・顧客被害時の対策(購入者に害があった場合に、どこまで責任を問われるのかなど)
2. 商品を決める
ターゲット国と密接に関係してくるのが「商品」です。
たとえば大きな購買力を持つ中国の消費者は、日本からは電化製品やコスメなどを多く購入する傾向にあります。(引用元:経済産業省の「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」)
もしターゲット国を中国にするのであれば、そういった商品を選んでいく必要があります。参考までに直近一年に購入した日本製品は以下の通り。
また、偽物が多く流通する中国では、越境ECを行う場合に製品の信頼性をもっとも重要視するという結果も示す通り、ターゲット国によって重視する項目までも変わってくることを意識しておく必要があちます。
(引用元:経済産業省の「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」)
ただし商品に関しては以下のような商品は注意してください。
・日本からの輸出に規制がかかる商品(ワシントン条約の対象など)
・国際間輸送で送れない商品(花火など)
商標登録にも注意
たとえば中国では、日本の有名な商標というのは前もって商標登録されていることが多いそうです。自社の商品が、当該国で商標登録されていないか?も前もって調べておきましょう。
3. ECの出店方法を決める
ターゲット国と商品が決まったら、どのように越境ECサイトを構築するか検討していく必要があります。
越境ECサイトを構築する方法は大きく以下の3つ。それぞれかんたんに解説していきます。
・海外対応のECサイトを構築する
・海外対応のECモールに出店する
・現地のECモールに出店する
海外対応のECサイトを構築する
自社で海外対応のECサイトを構築する場合は、「海外住所を入力できる」「海外向け決済手段がある」「海外向け送料が設定できる」「適切な言語や海外表示を切り替えられる」といった機能に対応しなければなりません。
「BASE」であれば、言語や郵送、決済といった問題をクリアしたうえで、越境ECへの参入が可能です。
たとえば、「送料詳細設定 App」をインストールすれば、海外の届け先住所を入力できるようになります。
決済手段に関しても、「BASE」では「BASEかんたん決済」でPayPalを利用できますので、海外からでも安心してかんたんに決済をおこなうことが可能です。
ほかにも、「BASE」では越境ECに必要な機能がそろっています。くわしくは下記の記事をご確認ください。
海外対応のECモールに出店する
海外対応のECモールとしては、<eBay>という有名なサイトがあります。このサイトは、日本ではあまり有名ではありませんが、世界190か国以上で販売できるECサイトです。
その他にも<TMall Global><JD Worldwide>といったモール型サイトも存在します。
現地のECモールに出店する
<タオバオ>や<アリババ>など、現地のECモールに出店する方法もあります。
ただ、こういった現地モールへの出店には、現地法人や口座が必要など、たくさんの制約があるため、知見のある会社などに問い合わせることをおすすめします。
下記の記事も合わせてご確認ください。
4. 言語や決済サービスの設定
ショップの出店方法が決まれば、ショップやサービスのローカライズをしていく必要があります。サイト内の言語はもちろん、通貨の設定なども含まれます。
決済に関しても、海外決済への対応が必要です。「BASE」では<paypal>での決済に対応しています。
5. 配送方法の決定
最後に配送方法に関しても検討する必要があります。配送方法については大きく以下の3つがあり、それぞれメリットデメリットが異なりますので、概要を把握した上で詳細について検討していくのがおすすめです。
配送方法 | 概要 | メリット デメリット |
直送 | 日本から<EMS>などを活用して国際郵便で配送する | 余計な費用はかからないが、自分でインボイスなどを作成する必要がある。 |
代行サービス | 海外配送を外部の会社へ委託する方法 | 面倒な通関手続きなどもすべて任せられるため、非常に効率的。物量などによっては直送するよりも安価に送れる可能性も。 |
現地倉庫 | 現地の物流倉庫などを契約し、そこから直接発送 | 現地倉庫からの発送になるため、到着までの時間が短く、ユーザーも利用しやすい。一方で倉庫の契約料等も必要になる。 |
人気商品は現地倉庫を確保し、ロングテール商品は直送するなど商品の状況によって発送方法を変更する事業者もあるようです。
下記の記事も確認してみてください。
まとめ
以上、越境ECについてお伝えしました。越境ECは、これからますます注目されていくはずですが、実際に利益を出すには、入念な計画と戦略が必要です。
平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)|経済産業省には、非常にこまかく越境ECについての記述がありますので、参考にしてみてください。