お取り寄せやテイクアウトの需要が増すなか、加工食品の販売を検討している方が増えています。
事業に参入する前に、許可や届出の必要の有無について、しっかり確認しておきましょう。
この記事では、加工食品のネット販売を検討している方に向けて、どのような許可が必要になるのか、具体的な条件や手順にはどんなものがあるのか、を解説していきます。
目次
食品を加工して販売するには、許可が必要

食品を加工して販売するには、保健所や自治体から許可をもらう必要があります。
たとえば、以下のような場合です。
- – 八百屋で惣菜を作って販売したい
- – 農家であまった野菜、果物をジャムにして販売したい
- – 自宅で作ったお菓子を販売したい
厳密には、食品の種類や調理・製造・処理・販売の工程と地域によって、届出だけでいい場合と、許可まで必要になる場合とにわかれます。
大半の加工食品は、保健所、自治体の許可が必要になるため、食品を加工して販売したい場合、まずは施設の所在地を所轄する保健所に問い合わせましょう。
もし、許可を得ないまま販売してしまった場合、法律違反や条例違反となり、罰せられる可能性もあるため、注意が必要です。
そもそも、加工食品の定義とは?

大半の加工食品の販売は保健所、自治体の許可が必要となりますが、そもそも、加工食品の定義とは、どのようなものなのでしょうか?
かんたんにいうと、加工食品とは、「食品になんらかの加工をした食品」のことです。
たとえば、自分の畑で作った野菜は、直売所などで自由に販売できますが、野菜は加工食品ではないので、許可が必要ありません。
ところが、カットした複数の野菜を混ぜ合わせた「サラダミックス」や「炒め物ミックス」などの野菜の場合なら、いかがでしょうか。
じつは、これらは、それ自身がひとつの調理された食品である、という見解で、加工食品とされています。
そのほか、単品の刺身は生鮮食品ですが、複数の種類の刺身を盛り合わせたものは加工食品となるなど、判断に迷うケースが多いのも事実です。
はっきり判断できない場合には、消費者庁の以下のQ&Aが役立ちます。
加工食品を販売する上で、必要な条件一覧

加工食品を販売するには、保健所からの営業許可をもらう必要があります。そして、許可を得るためには、設備と人に関する2つの条件をクリアする必要があります。
<加工食品の販売に必要な条件>
▶︎保健所からの営業許可の取得
↓
<営業許可の取得に必要な条件>
▶︎設備要件が整っているかどうか
▶︎食品衛生責任者が最低1人必要
それぞれどんな条件なのか、解説します。
保健所からの営業許可の取得

くわしい流れは後述しますが、許可を取得するには、まず施設所在地の保健所に問い合わせることになります。
どのような製品を、どのくらいの量、何人くらいの従業員で、どんな施設でつくるのか。
事前に計画を立てたうえで、専門の職員に相談するとよいでしょう。
相談から、実際に許可が下りて営業を開始できるようになるまでには、半月~3週間程度の日数が必要になります。
スケジュールを確認して、計画的に取得しましょう。
営業許可の取得に必要な条件①設備要件が揃っているか

設備要件とは、加工食品を作る作業場となる施設が満たすべき要件のことです。営業許可を受けるためには、2種類の施設基準を満たさなくてはなりません。
共通基準 |
自動販売機以外のすべての業種に必要な施設の基準 |
特定基準 |
業種ごとに定められている基準 |
共通基準では、床の材料や明るさといった「営業設備の構造」、冷蔵庫などの「食品取扱設備」、「給水及び汚物処理」、という3つの要素について、こまかく満たすべき基準が定められています。
たとえば、「床と壁が交わる隅は、丸みをつける」「明るさは50ルクス以上」といった決まりがあります。
特定基準は、「飲食店営業」「喫茶店営業」「菓子製造業」といった、業種ごとに満たすべき基準が定められています。
▶︎施設基準(一般営業) | 食品営業はじめてナビ(東京都福祉保健局)
営業許可の取得に必要な条件②食品衛生責任者が最低1人必要

加工食品を販売するために営業許可を取得するには、人的要件として、食品衛生責任者1名を置くことも必要です。
食品衛生責任者とは、食品衛生上の管理運営をおこなう上で必要な資格を持つ人のことです。
食中毒や食品衛生法違反を起こさないように、営業者が自主的に施設の衛生管理をおこなうために設けられた制度です。
食品衛生責任者になるためには、各都道府県の養成講習会を受講する必要があります。ただし栄養士や調理師、製菓衛生師など、一定の資格を持っている場合、受講が免除されます。
食品衛生責任者は、営業許可施設ごとに、1名必要です。複数の営業許可施設を兼任することは、認められていません。
営業許可を取るまでの流れ

営業許可を得るための、具体的な流れについて説明します。
- – 保健所に事前相談に行く
- – 営業許可を申請する
- – 施設検査をおこなう
- – 営業許可書の発行
- – 営業開始
まずは、保健所に事前相談に行きます。
販売施設や製造設備の工事を検討している場合には、かならず工事をはじめる前に相談しましょう。図面などを持参すると、話がスムーズです。
事前相談の時点で、施設や設備の確認、食品衛生責任者の選定、表示作成の準備、申請手続き方法の確認をおこないます。
表示作成の準備とは、販売のさいに商品に貼り付ける食品表示ラベルの準備のことです。
事前相談後、食品営業許可申請書を保健所に提出します。すくなくとも、営業をはじめたい1週間前までには提出しましょう。
申請後、書類審査がおこなわれ、施設検査日程の調整がおこなわれます。
保健所の食品衛生監視員による施設検査がおこなわれ、施設が基準に適合していれば、後日、食品営業許可書が交付されます。
万が一、施設検査で不適事項があった場合は、改善後に後日再検査を受けることになります。
取得にかかる所要時間の一例としては、事前相談に2日程度、営業許可申請から施設検査の実施まで7日程度、検査から許可書の交付まで7日程度です。
加工食品のネット販売についての疑問Q&A
食品の加工販売に関する、よくある疑問です。
オンラインショップで販売するさいに必要な条件は?

基本的には設備要件を満たすこと、保健所からの営業許可をもらうこと、食品衛生責任者を置くこと、の3点です。
ただし、食品を作る場所と、作った食品の保管場所が異なる場合、それぞれの拠点に、販売する食品の種類に応じた営業許可が必要になるケースがあります。
かならず、施設の所在地を管轄している保健所に相談しましょう。
また、カフェや飲食店など、すでに店内での飲食の提供に対する営業許可をもらっている場合でも、オンラインショップで新たに食品を販売するケースでは、追加の営業許可が必要になることがあります。
この場合も、保健所に相談して判断を仰ぎましょう。
仕入れた加工食品を販売したい場合はどうする?

仕入れた加工食品を販売するのみであっても、許可や届出が必要な場合があります。
たとえば、乳類、食肉、魚介類など、保存方法に徹底した管理が必要となる食品の場合、販売するのみのケースでも、保健所の許可が必要です。
また、チーズの場合は、温度管理が必要なナチュラルチーズでは許可が必要になりますが、常温可能な粉チーズは、許可の必要がない、とされています。
基本的に、次の条件に当てはまれば、許可が不要となるケースが多いです。
- – 販売時における、温度管理が不要
- – 容器包装に入れられた食品である
- – 仕入れた状態のままである
このように、食品の販売に関して、許可がいるかいらないか、は複雑です。
仕入れた加工食品であっても、販売したい場合は、必要な条件の有無について、管轄の保健所に相談することをおすすめします。
加工食品の営業・ネット販売にあたっての注意点
加工食品店の営業・販売にあたっては、いくつかの注意点があります。
専用の厨房が必要

ネットショップの普及で、個人で手作りした商品を販売したい、という人が多いですが、食品の場合、販売のハードルが高くなります。
たとえば、自宅で手作りしたケーキをネットショップで販売したい場合、自宅の台所ではない、専用の厨房を用意しなければなりません。
手作りの食品のその他の具体例については、以下の記事をご覧ください。
▶︎中古品や食品の販売に必要な許可証とは?特定の商品でネットショップを開業するために必要な資格まとめ
食品表示の義務もあり

また、営業許可の取得の流れでも触れましたが、加工食品の販売にあたっては、食品表示の義務があります。
営業するうえで、かならず知っておくべき食品表示について、くわしくは以下の記事をご覧ください。
ネットショップで食品を販売するために必要な営業許可を取得するには?
まとめ
今回は、加工食品の販売をおこないたい方に向けて、必要な許可の取り方や、必要条件についてお伝えしました。
お客様の口に入る食品の販売にあたっては、衛生管理に最大限気を配ることが必要です。
営業許可に関わる詳細な要件は、食品の種類や、施設のある都道府県によって異なるため、かならず所轄保健所に問い合わせるようにしましょう。
加工食品は、今やネットで購入する、というユーザーも増えています。
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また、「BASE」の登録方法や特徴などは、下記の2つの記事にまとめていますので、こちらも参考にしてみてください。