
ハンドメイドは基本的に販売許可が不要ですが、作品のジャンルによっては許可や資格が必要なケースがあります。また、許可は必要なくても、商品に関する注意書きが義務化されているジャンルも。
本記事では、ハンドメイド販売に必要な許可や届出について詳しく解説します。ハンドメイドを販売する前に、自分が手掛ける作品に必要な義務や対応を把握しておきましょう。
【この記事でわかること】
- ハンドメイド販売には基本的に営業許可が不要だが、手作りの食品、アンティークを取り入れた商品、化粧品などの販売には許可が必要。
- 雑貨やタオル、食器を販売する場合、家庭用品品質表示法に基づく表記が必要。
ハンドメイド販売で許可・資格が必要なジャンル一覧

基本的にハンドメイド販売に営業許可は不要ですが、以下のジャンルでは特別な許可や資格が必要です。
- アンティーク・ヴィンテージ素材を使った作品:古物商許可
- 化粧品・せっけん:化粧品製造業許可・化粧品製造販売業許可
- 食品:保健所の営業許可
アンティーク・ヴィンテージ素材を使った作品:古物商許可
アンティークやヴィンテージ品を使ったハンドメイドを販売する場合、古物商許可が必要になる可能性があります。
たとえば、古着をリメイクしたアパレル商品が代表的ですが、フリマアプリで個人から購入した古着を材料として用いる場合は、古物商許可が求められます。一方で、仕入先が古物商許可を得ている古着店である場合は、基本的に古物商許可は必要ありません。ヴィンテージビーズやボタンも同様に、仕入先が古物商許可を得ているかどうかによって、許可が必要かが変わってきます。
古物商許可は警察署で申請可能です。個人でハンドメイド販売のために古物商許可を得る場合、以下のものを管轄の警察署の防犯係に提出すると、40営業日を目安に交付されます。
<古物商許可に必要なもの>手数料(19,000円)添付書類許可申請書(古物営業法施行規則別記様式第1号)略歴書本籍が記載された住民票の写し誓約書身分証明書URLの使用期限があることを疎明する資料 |
参考:古物商許可申請 警視庁
化粧品・せっけん:化粧品製造業許可/化粧品製造販売業許可
化粧品やせっけんなどの肌に直接触れるものを手作りして販売する場合、化粧品製造業許可と化粧品製造販売業許可の2つが必要です。
許可の申請には、以下の要件が設定されています。
<許可の申請に必要な要件>申請者の要件(適正に製造や販売行うにあたって、過去に許可を取り消されたり、法律違反をしたりした経験がないこと)人的要件(薬剤師や薬学・化学課程修了などの資格要件) 業務システム要件(化粧品GQP、化粧品GVP)構造設備要件 |
参考:化粧品の製造、輸入または製造販売等について – 神奈川県ホームページ
個人事業主でも要件を満たせますが、設備投資や資格などが必要なため、許可を得るまでに費用も時間もかかります。一方で、メーカーに製造を委託し、ラベルにも委託先の業者名を載せる「OEM」であれば、許可がなくても販売可能です。個人販売の場合は、ハンドメイドではなく、OEMも検討してみてください。
ただし、せっけんをインテリア目的で販売する場合は、化粧品ではなく雑貨として販売できます。雑貨として販売する場合は、化粧品製造業許可と化粧品製造販売業許可は必要ありません。
ただし、雑貨は家庭用品品質表示法に基づく表記が必要なため、ショップへの商品登録時や梱包時に注意が必要です。家庭用品品質表示法に基づく表記については、次の見出しで詳しく紹介します。
食品:保健所の営業許可
お菓子やジャムをはじめ、手作りの食品を販売する場合は、製造場所(キッチン)の営業許可が必要です。日常的に使っている自宅のキッチンでは、営業許可は取れません。
食品の営業許可では、食品の種類ごとに衛生基準が定められていて、保健所の審査を受ける必要があります。お金も時間もかかるため、手作り食品を販売したい場合には、営業許可を取得済みのレンタルキッチンを利用するのがおすすめです。
ハンドメイド販売で、名前や住所などの開示が求められるジャンル一覧

許可や申請は不要でも、「家庭用品品質表示法」にもとづいて、名前や住所を含む項目の表記が必要な場合があります。
代表的なジャンルは、次の3つです。
- インテリア・雑貨(せっけんを含む)
- 衣類やタオルなど
- 樹脂製の食器
ジャンルごとに必要な表記項目と、個人が氏名や連絡先の表記が必要な商品を販売するときに、個人情報を守る方法について紹介します。
- インテリア・雑貨(せっけんを含む)
手作りのインテリア・雑貨品を販売する際は、家庭用品品質表示法にもとづいて以下の表示が必要です。
表示すべき主な項目 | 記載例 |
品名 | ハンドメイドせっけん、アロマキャンドル、ウッドオブジェなど。 |
材料の組成 | パーム油、ココナッツ油、精製水、水酸化Naなど(せっけんの場合)、大豆ワックス、アロマオイルなど(キャンドルの場合) |
取扱い上の注意 | 肌に異常が生じた場合はご使用をおやめください、火の取り扱いに注意してください、小さなお子様の手の届かない場所に保管してくださいなど。 |
表示者名及び連絡先 | 製造者または販売者の氏名または名称と、住所または電話番号。 |
- 衣類やタオルなど
Tシャツやタオルなどの肌に直接触れる繊維製品を手作りする場合は、家庭用品品質表示法に基づく表記が必要です。
表示すべき主な項目 | 記載例 |
繊維の組成 | 綿100%、ポリエステル60%・綿40%など、使用されている繊維の種類と割合。 |
取扱い上の注意 | 使用上の注意、手入れの方法など |
家庭洗濯等取扱い方法 | 洗濯、漂白、乾燥、アイロン、クリーニングの方法を示す絵表示(JIS L 0217に準拠)。 |
表示者名及び連絡先 | 製造者または販売者の氏名または名称と、住所または電話番号。 |
既製品のTシャツボディにオリジナルのプリントをする場合は、すでに表記が記載されたタグがつけられています。購入者の手に渡る前に、勝手にタグを切らないよう注意してください。
- 樹脂製の食器
レジンなどで手作りしたプラスチック製の食器を販売する場合も、家庭用品品質表示法に基づく表記が必要です。
表示すべき主な項目 | 記載例 |
材料の種類 | 飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂など |
耐熱温度、耐冷温度 | 耐熱温度100℃、耐冷温度−20℃など、製品の耐熱・耐冷温度を記載。 |
取扱い上の注意 | 電子レンジ・食器洗い乾燥機使用不可、火のそばに置かないでください、たわしや磨き粉で磨かないでくださいなど。 |
表示者名及び連絡先 | 製造者または販売者の氏名または名称と、住所または電話番号。 |
個人で販売する場合、名前や住所はどうしたらいい?
家庭用品品質表示法に基づく表記や、ネットショップで求められる「特定商取引法に基づく表記」には、氏名や住所の開示が義務付けられています。プライバシーを守るためにも、屋号を登録する「商号登記」や、自宅以外の住所を借りる「バーチャルオフィス」の利用を検討してみましょう。
個人のハンドメイド販売で、押さえておきたい届け出

ハンドメイド販売を事業として行う場合、以下の届け出も確認しておきましょう。
開業届
「開業届」は、事業を開始したことを税務署に知らせるための書類です。
提出しなくても罰則はありませんが、開業届を出すことで、所得税の計算方法のひとつである青色申告を選択できるようになります。青色申告とは、最大65万円の控除が受けられるなど、節税につながる確定申告の方法です。
提出先は税務署で、開業後1ヶ月以内に提出することが推奨されます。販売開始にあわせて提出しておきましょう。
商号登記(屋号を登録したい場合)
「商号登記」は、屋号(ショップの名前やブランド名)を法務局に登録する手続きです。
個人事業主の場合は必須ではないものの、屋号を正式に登録することで法的な信頼性が高まります。たとえば、家庭用品品質表示法に基づく表記で、表示者名として屋号を記載可能です。さらに、ビジネス用の銀行口座を開設する際にも、屋号で口座を作れるようになります。
確定申告(年間20万円以上の収入がある場合)
ハンドメイド販売で一定の収入を得た場合、「確定申告」が必要です。
副業として取り組んでいる場合は、ハンドメイド作品による年間所得が20万円を超えると、確定申告が義務づけられます。専業主婦のようにメインの収入がない場合も、年間所得が48万円以上を超えると確定申告が必要です。
確定申告を怠ると、延滞税などのペナルティが課されることもあります。売上を計画的に管理して、確定申告に備えましょう。
【FAQ】ハンドメイドの販売許可に関するよくある質問

ハンドメイドの許可・届け出などについての疑問・不安にお答えします。
ハンドメイド販売に許可や資格は必要?
基本的に不要ですが、食品や化粧品、アンティークを使った作品など、ジャンルによっては許可が必要です。
- アンティーク・ヴィンテージ素材を使った作品:古物商許可
- 化粧品・せっけん:化粧品製造業許可・化粧品製造販売業許可
- 食品:保健所の営業許可
ハンドメイドを販売するときに知っておきたい法律は?
著作権法、PL法(製造物責任法)、食品衛生法、薬機法、古物営業法などが関連します。ネット販売では特定商取引法も重要です。
自宅でハンドメイド作品を販売するのに許可は必要?
基本的に許可は不要です。開業届や確定申告、作品ジャンルに応じたルールを守れば、自宅の一角で販売できます。
ただし、ご自宅の形態によっては、事前に確認しておくべき点があります。
- 近隣トラブルを避けるための挨拶まわり:自宅での販売は、音や人の出入りなどで近隣の方に迷惑をかけてしまう可能性があります。事前に挨拶をしておくと、トラブル防止につながります。
- 「住宅ローン」の条件確認:自宅が住宅ローンの担保(抵当権設定)になっている場合は、借り入れ時の契約条項を確認しましょう。店舗として利用することで担保価値を下げてしまうような工事を伴う場合、契約違反となる可能性があります。大きな工事をしない場合でも、念のため、金融機関の担当者に報告しておくと安心です。
- 賃貸物件の条件確認:賃貸物件である場合は、賃貸借契約書の内容を確認しましょう。事業利用が禁止されている場合や、事前に大家の許可が必要な場合があります。
まとめ
ハンドメイドの販売にあたり、営業許可は基本的に不要ですが、食品や化粧品、アンティークを使った作品など、一部許可や申請が必要なケースもあります。また、1から手作りしたアパレルや、レジン製の食器、インテリア用のせっけんなどを販売する場合、成分や取り扱い方法などとともに名前や住所などの表示が義務化されています。個人で販売する場合は、プライバシーを守るために、法務局への商号登記をおすすめします。
また、ネットショップで販売する場合にも、特定商取引法に基づく表記として名前や住所などの表示が求められます。個人でネットショップを運営するオーナーも多数いるネットショップ作成サービス「BASE」では、自宅の住所や本名を隠せる匿名表示機能が備わっています。プライバシーを守りながらハンドメイドを販売できるので、ネットでのハンドメイド販売を検討中の方は、ぜひBASEでネットショップを開設してみてください。
テンプレートから選べる
BASEなら操作もかんたん

専門知識がなくても、驚くほどスムーズに、自分の世界観を表現することができます。デザインの難しさに悩むことなく、理想のネットショップを今すぐ形に。月額費用0円ではじめよう。