おうち時間が増え、おうちでできる新しい趣味を見つけたり、習いごとをはじめる人が増えています。
トレーニングをしたり、お菓子作りをしたり、語学や資格勉強に励んだり。
サーフィン・アウトドア用ピアスのハンドメイドブランド<Free Hope(フリーホープ)>を運営する奥野由希さんも、おうち時間をきっかけにハンドメイドピアス作りをはじめられました。
最初は自分とサーフィン仲間用に作っていたハンドメイドピアスを、副業としてネットショップで販売することになり、今では本業に。イベント出店やポップアップ開催など、このコロナ禍においても引き続き挑戦し続けていらっしゃいます。
そんな<Free Hope>を成功させるために、実際にご自身が経験されたこと、そこで見つけたことを、奥野さんにお訊きしました。
「サーフィン中も、その日の気分に合うピアスをしたい 」「金属アレルギーを気にせず、お気に入りのピアスをしたい」そんな思いから制作をはじめた、サーフィン・アウトドア用ピアスのハンドメイドブランド。
「お客様が自由な直感で好きなものを選べますように、そんな人生を歩めますように」という願いを込めて、制作されています。
従業員:1人
目次
最初は、自分とサーフィン仲間用に作っていた
ーー<Free Hope>をはじめたきっかけを教えてください。
もともとは、販売することはまったく考えていませんでした。2020年5月ごろ、コロナによる自粛期間で時間もたくさんあったことと、趣味のサーフィン中に着けられるピアスがほしい、と思っていたので、自分とサーフィン仲間用にピアスを作りました。
そのサーフィン仲間の一人が、お世話になっているサーフショップのオーナーで、「サーフショップに置いてみない?」と言われたのが、販売をはじめる大きなきっかけになりました。
そして、2020年6月にネット販売を、7月にサーフショップでの販売をスタートしました。当時働いていた会社から副業することを認めてもらえたことも、踏み切れたきっかけの一つです。今思うと、いい環境でスタートできたな、と感じます。
ーー副業としてはじめられたのですね!
最初はピアス販売をガツガツやるつもりはなく、商品製作やブランディング、運営など勉強になればいいな、というくらいの気持ちだったので、副業からでした。
でも、インスタ運営を続けていくなかで、フォロワーさんがピアスを紹介してくださり、その方のフォロワーさんにも少しずつ広まってポツポツ売れたのは、すこし自信になりました。
思い切ったお金の使い方が、意識を変えた
ーーそれから、すぐにたくさん売れるようになっていったのでしょうか?
まだまだ、その段階では全然でした。週に1〜2件ほど、ときどき注文が入って発送するくらいの売れ行きでした。でも、いざ販売をはじめると、「お客様からお金をもらって販売するのだから、商品も包装も満足度が上がるものを作って売りたい」と思うようになりました。
そこで、ちょうどそのころ個人に給付された特別定額給付金の10万円を、思い切ってロゴデザインや什器制作に使ってみたんです。
だからといって、すぐ売上につながるわけではないですが、「やっとお客様にちゃんとした“商品”を届けられる」と自信になりました。また、このような「投資」としてのお金の使い方はしたことがなかったので、お金の使い方への意識も変わったのを覚えています。
ーーロゴや什器は、どのように作られたのですか?
プライベートで仲良くしてもらっていて信頼できる、地元のデザイナーさんに依頼しました。デザイナーに頼むと、ある程度お金がかかることはわかっていましたが、「せっかくだし、大人の遊びと思ってやっちゃおう!」と気軽な気持ちで決めました。
ロゴやブランド名にどんな意味を込めるのか、お客様にどんなふうに見えたらよりよいのかなど、いろいろなことを話しながら決めていくのは、ほんとうに楽しかったです。
什器のピアスラックも、地元の知り合いの工務店さんに依頼して、完全オーダーメイドで制作してもらいました。できあがったロゴや什器は、ほんとうに気に入っています。
PC作業に苦手意識があったが、「BASE」はかんたんで、自分でもできそうと感じた
ーーネットショップ作成サービスには、いろいろなサービスがありますが、なぜ「BASE」を選ばれたのですか?
そこまでいろんなネットショップ作成サービスを比較したわけではなく、たまたま「BASE」しか知らなかったんです。なので、最初にやったのは、まず「BASE」でなにができるのかを調べることでした。
ーー実際に「BASE」を使ってみて、いかがですか?
ホームページ作りやネットショップ運営ははじめてで、PC作業にもすこし苦手意識がありましたが、「BASE」はほんとうにかんたんで、「これなら私にもできる」と思いました!
いちばん不安に思っていたお客様の支払い方法についても、こちらの操作は不要で安心でした。
また、いろいろなAppsを使って機能を追加していくことができ、十分満足のいくネットショップを作ることができています。
自分がやりやすい、続けられる方法で商品作りに向き合う
ーーECでいちばん大事な、「商品」。奥野さんは、商品作りでこだわっていることはありますか?
商品づくりに関しては、値段もデザインも機能性も「自分がほしいもの」にこだわっています。そして、お客様が「流行っているから」ではなく、「好きだから」選べること。
自分自身、たくさんのピアスのなかから、わくわくしながら選ぶシチュエーションが好きなので、それをオンライン上で表現したいと思いました。
こうした自分の想いに共感してくれるお客様に出会えていることは、ほんとうに恵まれていますね。
ーーたくさんの商品を用意することは、たいへんではないですか?
商品制作においては、「私が制作を継続できる」ということも重要なポイントです。
制作に高度な技術が必要だったり、時間がかかりすぎたりすると、私にとっては制作を継続することはむずかしくなりますし、販売したい価格帯や商品のバリエーションの豊富さも実現できないと思います。
そういったことのバランスを取りながら商品制作をしているので、無理することなく定期的に新作を出したりできています。
いちばん大切にしてきたことは、お客さんとのやり取り
ーー先日<Free Hope>さんのInstagramアカウントをフォローしたら、「フォローありがとうございます」というDMが届いて。びっくりするとともに、うれしい気持ちになりました。こういったアクションは、意識的にやられているのですか?
私はInstagramは感謝を伝えられる、よろこびを届けられるツールだと思っています。ネット販売ですので、対面で伝えられないぶん、DMは重要なコミュニケーションツールになっています。販売を開始したころから今まで、ずっと続けてきています。
ーーアカウントをフォローしてくださった方全員に対応されているのですか? すごく大変かと思いますが……。
今となっては「いつものこと」で、習慣になっていますし、ていねいにお返事くださるフォロワーさんもいて、うれしいです。これも商品制作と同じで、「継続できる範囲でやる」ということが大切だと思っています。また、最初に自分からDMを送ることで、お客様が質問しやすくなるのかな、とも感じています。
実際に、購入を検討されているお客様から質問やリクエストをいただくことは多いですね。そこから新しい商品が生まれることもあります。
最近、ポップアップやワークショップを各地でやらせていただいているのですが、Instagramでやりとりをした方が、そこに来てくださったりするんです。するとはじめて会ったような気がしなくて、距離の縮まり方が早いな、と感じました。
ほかにも、商品に手書きのメッセージカードをつけたり、「BASE」のレビュー機能でお返事したり、お客様の投稿や着画(着用画像)をInstagramでシェアしたり。
とにかく、「ありがとう」の感謝の気持ちを伝えるためのコミュニケーションの量を増やすことを意識しています。対面での販売でない分、私にとってはそういったことがより大切です。「ネット販売をがんばりたい」という気持ちがあるなら、まず最初にできる手段の一つだと思いますね。
広告は集客の一つの手段であり、自分のショップを大きくするチャンスを生んでくれた
ーーInstagramでのお客様とのコミュニケーションも、その一つだと思いますが、集客はどのようにしておこなっているのでしょうか?
最初は、ほんとうに地道です。Instagramのハッシュタグなどでたまたま見つけてもらえたり、お客様がInstagramに載せてくれると、その方のフォロワーさんにも少しずつ広がっていったり、という感じでした。
ブランドのInstagramを開設した2020年6月から2021年1月までに、Instagramのフォロワーの数が500人ほどになりました。大きく変わったのは、2021年1月に初めてInstagram広告を利用してみたことです。
ーー広告運用をはじめられたのですね。どうして、やってみようと思ったのですか?
もともとは、お金をかけて宣伝する考えはありませんでした。でもあるとき、ふと「費用をかけてInstagram広告を使ってみたら、どんな効果が出るのかな」と思ったんです。
とはいえ、いきなり大きなお金は使えないので、1日1,000円からスタートしました。これも勉強になれば、という気持ちでやってみました。
はじめて出したのは、クーポンの広告です。Instagramのフォロワーが500人を突破したタイミングでクーポンを出したのですが、それを広告を使って多くの人に見てもらい、興味を持ってもらえたらいいな、と思いました。たしか、3日間くらい広告配信をしました。
すると、自分が思っていた以上にフォロワーさんが増え、クーポンの利用とあわせて、たくさんの新しいお客様に商品を購入していただくことにつながっていきました。
ーー広告が、ショップの売上を伸ばすことに大きく寄与したのですね。
ショップの売上を伸ばすための手段はいろいろあると思いますが、広告も集客に必要な手段の一つです。
どれくらいの意識でショップ運営に向き合うかによりますが、ちょっとでも「売り上げを伸ばしたい」と思っている方は、やってみたらいいのではないかと思います。そこからチャンスが生まれるかもしれません。少なくとも私は、広告はショップをより広めるチャンスを生んでくれた、と考えています。
そのおかげもあって、2021年4月から独立することができました。現在は、ピアス販売やポップアップ、趣味のサーフィンなど、時間をバランスよく使えるライフスタイルを実現できています。
成功に特効薬はない。だからこそ、自分が続けられる仕組みを作ること
ーーすごいサクセスストーリー! 成功したコツは何だと思いますか?
私の場合は、マーケティングや販売のノウハウを勉強したわけではなく、思ったことを実行してみるとうまくいったということが多く、特効薬は正直わかりません。ただ、「自分が続けられることを、できる範囲でやる」ことを心掛けてきました。地道ですが、続けることは、なによりも大切です。
そして「必要なところに、きちんとお金をかける」ことも大切だと学びました。最初のロゴデザイン、什器制作にはじまり、広告にしてもそうですが、思い切ってお金をかけてやってみてよかったな、と思っています。
ーー今後はどのような展開を考えていますか?
まだまだ成長中の<Free Hope>を、お客様といっしょに育てていきたい、という気持ちです。
先日、茅ヶ崎でポップアップ出店したとき、他地域のお客様から「こっちにも来てほしい!」という声をいただき、イベントを開催できる拠点や自分の商品をおいてもらえる店舗を増やしていきたい、と思いました。
また、海外販売にも興味があります。やってみようと思ったことを実行していけば、今までだと考えもしなかったチャンスも掴めるかも、と感じます。まだ、具体的な大きな目標がないので、これからはそれを見つけられるよう、積極的に行動していきたいですね。
あとがき
「続ける」ーーかんたんなことのようで、むずかしいですよね。ネットショップをはじめたばかりのころは熱量が高くても、それを保ち続けることは、ほんとうに大変です。
だからこそ、大事なことは、「続けられるように、できる範囲でやること」と奥野さんがおっしゃってくださいましたが、無理のない範囲で、そのなかで試行錯誤しながら、必要だと感じたことには、投資を惜しまない。
それが、ショップのためだけでなく、回り回ってお客様のためとなり、ショップのファンが増えることにつながるのだな、と思いました。